気怠い目覚め
「……ぅ、ん。此処は――」
見知らぬ天井。
頭の回転が鈍い。
気持ち悪い。
のそのそと身体を起こす。
上半身に掛けられていた布団の一部がスルリと落ちる。
艷やかな光沢。シルクのネグリジェを纏っていた。
「いつの間に……」
着替えさせられたのだろう。
そしていったい誰が着替えさせたのか……。
――気になるけど……。
先ずはベッドから出ようとした所で控えめに部屋の扉が叩かれた。
「失礼致します」
静かに入室してきたのは侍女。メイドでも良いけれど。
わたしと目が合うと驚いたようだけれど、それも一瞬のこと。
「おはようございます。ソージュ様。お加減は如何でしょうか?」
「……貴女がわたしを?」
「はい。申し遅れました。私、この度、ソージュ様の身の回りの御世話をさせて頂くことになりましたイオナと申します。昨日、になってしまいますが、御挨拶に伺わせて頂いた折り、御返事が無く、入室致しましたところ、ソージュ様がソファーで気を失われていて、御無礼かと思いましたが、私が着替えさせて頂きました。その後、ベッドにお運びし、医官に診ていただきました」
「……そう。ありがとう」
お召し替えを、とイオナに促され、わたしは城の者がご用意致しました、というドレスを見せてもらい、選ぶことになった。
なったのだけれど――
やはりというか、なんというか豪奢なドレスばかりだった。
――動き難そう。
有力貴族のお嬢様と変わらないであろうドレスの数々は城側の配慮ではあるのだろう。
「お気に召しませんでしたでしょうか?」
「そうね。贅を尽くした、というのは解るのし、此方の流行りに配慮してくれたのは解るわ。ただ――」
「こんなこともあろうかと、まことに勝手ながら、此方をご用意させて頂きました」
身体を後ろに捻り、取り出されたのはハイウエストのコルセットフレアロングスカートに、クラシカルリボンタイにレースの姫袖ブラウス。
異空間に存在するストレージとかアイテムボックスというものかしらね。
軽めのシンプルなゴスロリ衣装だ。
流行の絢爛豪華なドレスからは外れているけれど、華やかさを損なわず、わたしの世界背景を理解して用意されたというのが良く解る。
「昨日の今日で、わたしの体型に合わせて良く作れたわね」
「主に不足無く、一瞬でも不測の事態が起きることなど無い様に、安心し、快適にお過ごし頂けるようにすることはメイドの嗜みで御座います」
わたしの身の回りの世話、ということは着替えも含めて、だ。
彼女の仕事を奪うわけにはいかない。