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東雲 美雪の場合

 夜中まで受験勉強をしていたら、突然、足下が輝いた。

 その異常事態に私は慌て立ち上がり、飛び退こうとした。

 光の円環から光の手が伸びて来て私を捕えて離さない。


 私はお父さんとお母さんに大声で助けを叫んだ。

 真っ先に駆け付けてくれたのは隣室のお兄ちゃん。

 お兄ちゃんは驚くも、私を助け出そうと駆け寄って、光の手を剥がそうとしてくれたけれど、お兄ちゃんの手が弾かれてしまう。

 お兄ちゃんの後に駆け付けてくれたお父さんとお母さんも、お兄ちゃんに加勢して、私を助け出そうとしてくれたけれど、三人ともに弾き飛ばされてしまった。


 お父さんとお母さん、お兄ちゃんが私を呼び、手を伸ばす。

 私も手を伸ばそうとしたけれど、光の拘束する力が強くて動かせなかった。

 それが私が見た家族の最後の姿。


 次の瞬間に私が居たの石室。

 光が収まり、靄が晴れていく。


 大勢の人の歓声。


 私の隣には、パンツスーツの女性。深夜まで仕事をしていたのだろう。


 石室の扉が開いた。

 

 入室してきたのはキラキラしいイケメンたち。

 

 クロヴィス第一皇子。宰相の息子アヴェン。宮廷召喚師の息子オルドー。宮廷魔法師の息子キンブリーと名乗られた。


 男性に恐怖心を持つ私は見知らぬ男性数名に笑顔で近付かれ、囲まれて鳥肌が立った。


 さらにクロヴィス皇子が跪いて私を聖女と言い、手を取られて、手の甲に口付けされた瞬間、卒倒しそうだった。

 

 彼らに抱き留められるのも、抱きかかえられるのも嫌だったから根性で耐えた。


 ――100%除菌消臭したい!! 除菌消臭したい除菌消臭したい除菌消臭したいぃっ!!


 私の気持ち、感情と、もう一人の召喚の犠牲者の女性を無視して、クロヴィス皇子に肩を抱かれ、私は石室から連れ出された。


 ――肩に置かれた手を叩いて払い除けたい。気持ち悪い。吐きそう……。


 連れてこられたのはクロヴィス皇子の執務室。


 国を覆い尽くさんとする瘴気を払い浄め、瘴気から生まれる魔物や、呑まれて魔物となった動植物や人の屍を退治して欲しいと、随分と自分勝手な頼み事をされた。


 危機に瀕しているというわりに、彼らの顔には焦燥感も危機感も見受けられない。身形も整っている。

 

 彼らの都合の良い話だけを聞かされていると、扉が叩かれた。

 

 伝令の人は重大な話があると私を呼びに来たらしい。

 クロヴィス皇子たちは拒んでいたけれど、私が応じた。

 重大な話というものを聞きたかったから。

 

 クロヴィス皇子たちも着いて来ようとしていたけれど、私は拒否――拒絶した。

 重大な話に横から口を出されたくなかったから。


 案内された部屋には召喚師ユーレンシアと名乗る女性と外交官グーイ・シリーヌと名乗る男性。そして宰相ギャラハードと名乗る男性が居て、彼らの話を聞いて、私は膝から崩れ落ちた。


 召喚された時の弾ける閃光で私の家族、家、近隣住民が死んだ。


「う、嘘……そ、そんな……嘘……」


「……もう一人の聖女様の持つ小さな遠見道具で確認致しました。もう一人の聖女様のお住まいも炎上し、生存者は居ないと……」


 小さな遠見の道具? リアルタイムならスマホ? ネットニュース?

 繋がってるの? 探って見たけれど、私の端末は机の上だった。


 ――お父さんとお母さん、お兄ちゃんが……彼らに殺された?

 

 他にも沢山の人たちを巻き込んで……。


 家族も住む場所も未来も奪われた。

 

 怒りが込み上げて来た。


 何か頭を撫でる様な感覚があったと思った瞬間、私の意識がプツリと切れた。

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