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何処にでも転がっているような話だ

 遠い遠い昔。

 天と地。それぞれの神を信ずる国があった。

 天空神て大地母神。男神と女神。


 天空神を全知全能の神と崇める国。

 大地母神をこの星に住まう生きとし生けるもの全ての母神と崇める国。

 

 天空神を唯一無二の神とする国が女神を崇める国を下し、支配、隷属しようと戦争を仕掛けた。


 だが、そこに神々の意思など関係なかった。

 両国の支配者が、人々が互いに気に喰わなかっただけ。

 戦争は激化していき、天空神を崇める国は神兵と称する生体兵器を大地母神を崇める国も対抗するように召喚獣を。


 しかし、両国がそれらを用いての最終決戦の前に、人々を厄災が襲った。

 瘴気が噴き上がり、産み落とされた、後に厄災の獣と呼ばれる禍々しい獣に両国が襲われたからだ。

 前衛ばかりの国と後衛ばかりの国は戦争どころでは無くなった。


瘴気は厄災の獣を産み出した後は小型の獣を産み出した。否、元々存在した獣が瘴気に呑まれ、小型の厄災の獣と化したのだ。それが現在の魔獣や魔物と呼ばれるモノ。


 瘴気は何時まで立っても幾年月を経ても収まらなかった。


 だが、ある日突然、救済処置か何かのように瘴気を払い、厄災の獣を滅する者が現れた。

 少女だったことから聖女と呼ばれる。

 大いなる脅威は取り除かれた。魔獣、魔物は在れど騎士や傭兵たち出来た対象出来た。

 冒険者ギルドなども出来た。傭兵は冒険者となった。その方が安定したからだ。


 そう、数百年は……。


 人々が忘れた頃にまたソレは現れた。天と地を支配するかのように。


 そして、対抗する力を持つ者が現れる。


 その繰り返し。


 だが、復活の周期が短くなり、瘴気が濃さ、魔獣、魔物の強さも桁違いに上がっていく。


 それだけでは無く、魔族なる新たな人種も脅威となっていた。


 だが、一向に聖女、勇者が現れない。生まれる気配も無い。


 冒険者でも対処が追い付かず、むしろ疲弊と負傷で身動き出来ない者が増えている。

 騎士も召喚師も魔法師め人手が足りず、多くの名もなき村が蹂躙された。


 街には不安が広がっている。


 聖女を求める声が日増しに強くなっていく。

 見付けられない女皇――国に対する不満が高まっていく。


 対応の遅れが生じ始めた騎士、魔法師、召喚師の信用と信頼は揺らぐ。


 雑魚くらい自分たちで対処しろと言いたくても言えない。


 どちらもストレスを溜め込んでいき、市井では住民と兵士、騎士、衛兵との衝突も起こっている。


 そんな世状にありながら聖女も勇者も誕生せず、見つからない。

 

 女皇、皇配、重鎮たちは連日連夜、喧々諤々議論を交わした。

 彼女たちの中の誰しもに伝説に在る召喚という考えが無かったわけではなかった。

 だが、不確定要素に賭けるのは最終手段だと考えていたが、女が帝の座に在ることを許さぬ者も居た。

 女の風下に立つなど許せぬ、と。


 そこで彼らは一計を案じる。

 第一皇子を神輿に乗せて担ぎ、自らの娘を嫁入りさせる。

 そうして皇子を焚き付けたのだ。


 皇子の正義感セキニンカンを煽った。

 皇子は自ら考え、行動した――するように巧みに誘導した。


 皇子と仲間たちは禁書庫に連日籠もり、召喚術が記された書を見付けた。


 彼らは当然、女皇たちに進言した。だが、何度訴えても却下された。


 そして、女皇たちは各国の首脳が集う議会に出席する為に中立地帯の議場へと旅立ち、その隙に皇子たちは独断専行で召喚術を執り行った。


 それを聞いたわたしの感想は――


「要するに永い間、聖女を育成、それに準ずる者を育成してこなかった怠慢の結果、わたしたちが、わたしたちが住んでいた場所の周囲を死に追いやった、と。はぁ……聖女の力に頼らず、自分たちの、人間の力で解決しろってことなんじゃないの? それをしなかったから、天に見放されたわけだ」


「そ、それは……っ!!」


「実際、あなた達は何もしなかった。ただ待っていただけ。人の中だけで聖女や勇者が現れるのを。もしかしたらアールヴやドワーフ、人獣、獣人の中に誕生していたかも知れないのに」


 この世界にはファンタジーものでお馴染みの種族が存在している。

 そして、迫害も有り。侵略、売買もしている。


「人種差別……ね。そんな人を救いたいと思うのかしらね? 自分たちは迫害しておいて、魔物に瘴気に困っているから聖女様、助けてって都合よくない? あと、もう一人の女の子にも、嘘偽りではなく、真実を話すように。最低限の礼儀は守って下さいね」


 彼女たちは頷いた。


 

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