厚顔無恥
苦手な科目も必死に勉強して、夢を叶えた。
どんな仕事でも外と内、憧れと現実は違う。
良いこと、嬉しいこともあるし、嫌なこと、ムカツクこともある。それでも、こんな形で全てをブチ壊されるとは思ってもいなかった。
しかも、多くの人の命を奪って。
あの女の子は家族を奪われた。
わたしたちの培って来たもの全てを奪った彼らは、肩を抱き合い喜び、笑い、召喚者は心身ともに疲労困憊の体で一仕事やり遂げ、自分たちの成果に満足そうに仄かに笑みを浮かべていた。
只管に謝る女召喚師。彼女の名前はユーレンシア。
ちなみに召喚師は一人前の召喚者。召喚士は召喚師の弟子、生徒、部下、見習い。
召喚師になるには実績と信用、そして国家資格証が必要で、その試験は厳しいものがある、とか。
ユーレンシアに睨まれて目を逸らすのは彼女の妹、ソフィー。
男性は外交官グーイ・シリーヌ。
クロヴィス第一皇子の暴走。暴走を諫めるどころか賛成したのは宰相の息子アヴェン。宮廷召喚師の息子オルドー。宮廷魔法師の息子キンブリー。
彼ら中心人物に招集された魔法士と召喚士。彼ら彼女らは成績も実力もある優秀な者たちの中でも抜きん出た者たちだった。
きっかけは彼らが禁書の中から一冊の書。それが異世界から勇者、聖女を召喚する為の術を記した本だった。
若さ故の好奇心、自信過剰、功名心、救世の一助となって歴史に名を刻むという野心で意気込み、やる気を滾らせた。
若さなんて何の言い訳にもならないが……。
優秀だからと巻き込まれたのが目の前のソフィー。
王子に逆らえば、まぁ、召喚士を首にされ、召喚師への道も、殿上人の匙加減一つでどうとでも出来るわけで。
本に記された文字は古すぎて読めず、召喚陣は図解で記してあった為に真似が出来た。
女皇、皇配、宰相、各部署の重鎮たち、目の前のユーレンシアも解明されていない、不確定要素を理由に反対していた。
だが――だが、第一皇子には召喚を成さなければならなかった。
クロヴィス皇子は優秀だった。ただし平均的な立場から見て、という前置きが付く。
クロヴィス皇子よりも二つ下の皇子の方が遥かに優れている、という評価。
クロヴィスはプライドが高く、浅慮、視野が狭い。思い込みも激しい。ただ、そんな人物が慕われるわけがない。
クロヴィスには情に熱くて、仲間を大切に思う心がある。召喚も危機をどうにかしたいという一心であり、自身も苦楽をともにし、立ち向かうという気概、勇敢さもある。
そんな都合知らないし、わたしには、もう一人の女の子には関係ない話だ。そんなものに巻き込まれていい迷惑だし、そんな召喚の生贄にされた彼女の家族、近隣住民やわたしの住むマンションの人々が死んでもいい理由にはならない。
此処までがクロヴィスと愉快な仲間たちの浅はかな行いの理由だ。