第五話 アラン王子の疑問
国境都市西アルブレッサから馬車で4日
私達とアラン王子はウィリアム王国の王都城塞都市ウィリアムへ到着した。
「アラン殿下おかえりなさいませ!」
「やぁ!警備ご苦労様です」
「殿下ありがとうございます・・・殿下の隣に座っている者達は一体?」
そう聞かれるのも仕方がない
私達は聖女とはいえこの国では平民と同等なのである
「この者達は西アルブレッサの民や私を救ってくれた命の恩人だ!この者は丁重に扱って欲しい」
命の恩人なんて大袈裟な・・・・
私は自分ができることをやっただけで感謝されることはない・・・・
そう思っていたのだがこの時のイオリはまだ知らなかった・・・この後の出来事を
「アラン殿下のお帰りです!」
王城騎士がそう言うととても大きな城門は開いた
その後わたしたちは馬車から降り城の内部へと入り応接間のような場所へ通された
「さてまずは改めて西アルブレッサの民と私を救ってくれてありがとう
私は前にも自己紹介をしたがウィリアム王国第一王子アラン・ウィリアムだ」
「私は治癒士をしているイオリ・スズキと言います」
全員の自己紹介を終えいよいよ本題を切り出された
「さて自己紹介を終えた事だし本題に入りたいんだけど・・・
君はバルタリ王国の聖女・・・だよね?」
やはりアラン王子は聖女のことについて聞かれた
「いえ・・・バルタリ王国から国境を超えたただの旅をしている治癒士です」
私は聖女ではないと言ったのはちゃんとした理由がある
まず第一に「私は聖女です」といえば国同士の問題になりかねないこと
そしてバルタリ王国が私にやってきた酷い仕打ちをもう二度と経験したくないからである
「はぁ・・・イオリはまだ嘘をつくきなのかい?セシリア!例の調査結果を」
「かしこまりましたアラン殿下」
そう言うと1枚の書類を私達に見せた
「悪いが君達の素性を全部調べさせて貰った・・・
ニコラウスはバルタリ王国の副騎士団長でバニエルはバルタリ王国の騎士・・・
だがイオリ・・・君のことはいくら調べても君の素性だけは出てこなかった
まるで国家機密のように徹底的に秘匿されていると言っても過言ではないくらい」
「!!」
私はびっくりしたのと同時に絶望を感じた
もうこの国を離れないといけませんね・・・そうアイコンタクトを送ると
「勘違いしないでほしい
私は君達に本当のことを言って欲しいんだ・・!」
どうやらもう誤魔化せないようですね
「嘘をついてしまい申し訳ございませんアラン殿下
私はバルタリ王国の元聖女です!」
「やはりそうだったか・・・しかし何故聖女だと言うことを隠してたんだい?」
私は5日前に起きた全てを話した
ジョエル王から身に覚えのないことで国外追放されたことや今まで受けたひどい仕打ちを
「一体バルタリ王国は何を考えているんだい?話が通じない王だとは思っていたがまさかここまでとは・・・」
私の予想と反して本気で起こるアラン王子
「イオリにその従者達に提案なんだが・・・」
「なんでしょうか?」
「もし君たちさえ良ければこの王城で働いてもらえないだろうか?
イオリは聖女として従者は近衛騎士団として・・・勿論待遇は保証する」
私はとても悩んでいた
口だけで本当は待遇は同じなのではないかと・・・
バルタリ王国で受けたひどい仕打ちは今でも夢に出てくる
「私の目を見てくれ!」
そう言われ目を見るとアラン王子は本気の目をしていた
今ここで提案を断ってもいい
しかし居住地が決まっていない現状ここで過ごしたほうが得策なのだが・・・
「私は聖女様の意志に従いますのでどうか気楽にお考えください」
そのニコラウスの言葉で私は決心した
「わかりました。謹んでアラン殿下の提案をお受け致します」
「ありがとう!とても恩に着るよ」
ウィリアム王国での生活でイオリとアラン殿下の恋が始まるのも時間の問題だろう
次回は聖女イオリの日本での生活やバルタリ王国で受けた酷い仕打ちをメインに書こうと思います。