第十七話 里奈のスキルと混乱
世界旅行から帰還し数日が経過する頃正式に従者として迎え入れられた里奈の能力を整理していた。
「ざっとこんな感じですかね・・・」
そう里奈が言うとおびただしい量のスキルが目の前の紙に書き留められていた。
一言で表すならチートだ・・・
いやなにこの量!?
騎士団の人たちでもこんなにスキル持ってないからね?
そう心のなかで突っ込みながらメモに書いてあるスキルに目を通した
・世界旅行
任意の世界・時間に転移することができる
・能力共有
対象に対し自身が保有する能力を電子魔導書を通じて共有することができる
・能力創作
自身がイメージするスキルを作成し電子魔導書に記録する
・電子魔導書
自身が保有するや自身が見たスキルを記録し自身のスキルとして複製する
・複製
対象に対しバックアップを作成する
対象が生命の場合は自律行動し記憶を共有することができる
・記録改竄
あらゆる記録を上書きすることができる
使い方によっては攻撃魔法とも化す
・攻撃無効
いかなるダメージを無効化する
ただし無効化時間はMPに依存する
・魔道具作成
自身が想像する魔道具を作成する
・死の鎮魂歌
対象の範囲に存在する生命に対し即死ダメージを与える
・時間地獄
対象を想像を絶するほどの苦痛を与える空間に拘束する
・死の光線
対象個体に対し即死する光を照射する
一部だけでもお腹いっぱいの量である
まだまだあるけどももう目を通すのを放棄することにした
「ねぇ里奈・・・・これって電子魔導書で確認したほうが早いと思うんだけど・・・」
「それはそうだけども一度見たスキルも記録されちゃうからそっちだともっと多いよ?」
聞き捨てならない言葉を聞いて顔がひきつりそうになっているのをよそに里奈の能力の説明と電子魔導書に登録されているスキルの数を説明しまくる里奈は一種のコレクターのように思えてきた伊織は話を左から右へ受け流すことにした。
当然このおびただしい量のスキルを王子や騎士団の人達に教えた結果MP切れで倒れた人たちが大量に現れポーションや治癒士が足りなくなったのは別の話である
結局王子と渡しの判断で状況によって電子魔導書といった汎用性が高いスキルを共有し残りは見なかったことにすることを決定
そもそもスキルを作れる時点で自国の軍事を大幅にアップできるのでその都度スキルを個人個人で作ればいいという結論に至った
里奈は不服そうではあるけども2500種類の魔法を把握するのは人間には100%無理な話であって戦闘中に電子魔導書に書かれている説明を見ながら戦ってたら死ぬ可能性だってある
里奈にはどうにか諦めてもらうしかないのであった
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一方バルタリ王国では港湾都市クハヴと東アルブレッサに大規模な瘴気が現れたことにより大混乱が発生
水産・農業ともに大打撃を受け食品の値段が10倍に跳ね上がった
バルタリ王国の法律ではこういった食品の不作が発生した場合王都に優先的に流通しなくてはいけないという法律があるのだが10倍に跳ね上がるというかつてない自体にこの法律を無視する人たちが発生
当然王都も食品の値段が地方以上に高騰しもはや日常生活が困難になっていた
騎士団や治安部隊がこの状況を打開しようと違反者を拘束しようとしても逆に囲まれ取締もできない状態で混沌としていた
他国に避難を始める人達も現れる中魔族はそれすらも阻むように国境の街に次々と瘴気を放つ
これによりバルタリ王国の住民は陸海空と外界と遮断され最早他国の支援すら受けられない状態になってしまった。
頼みの聖女もレジスタンスであるため瘴気を浄化する作用もないことから聖女に対するデモも各地で勃発
王宮は聖女でも浄化できないほど濃い瘴気で現在対策を考えていると発表し対策会議が開かれていた
「フフフ・・・無能な人間を見るのは実に楽しいですね
これが自分の部下なら殺していますが」
野望に満ち溢れた声でマリアーノは自分の手下からマッサージを受けながら次の計画の指示をする
魔族は残虐非道で楽に死なせたりすることは決してない
いかに絶望や苦しみを最大限まで引き出すことによって快楽を得るような一族だ
「簡単に乗っ取られないでねバルタリ王国さん
今のまま陥落したらつまらないもの・・・」
魔族取ってこれはまだまだ前菜にすらたどりつけていない
まるで食前酒を楽しんでいる段階だと言わんばかりに不気味な笑みをうかべるのであった