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色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ  作者: 谷島修一
人民革命
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プリブレジヌイの戦い7

 大陸歴1660年12月3日・ブラミア帝国・プリブレジヌイ郊外


 戦闘が行われず、お互いが対峙した状態が続いて一週間ほどたっただろうか。

 雪が降る日も数日、プリブレジヌイは帝国でも最も北に位置する都市で、昼夜共に寒さが厳しい季節となっていた。


 ルツコイは望遠鏡で反乱軍の様子を望遠鏡で覗いていた。

 手前に陣を張る元第四旅団は相変わらずだが、本陣にいる兵士の数が減っているように見えた。見たところ以前の三分の一から四分の一。こちらを攻めることをあきらめたのだろうか。


 ルツコイは確認のため、改めて偵察を出した。

 偵察から戻って来た報告を聞くと、やはり反乱軍の数はかなり減っているという。退却を始めているのであれば、追撃はこちらに圧倒的に有利だ。ここは一気に攻撃を掛けるチャンスか。

 雹を降らせた魔術師と思われる者の攻撃も気にかかるが、ルツコイはここは自分の手勢を率いて様子を見ようと思い、公国軍は残し、帝国軍のみの六千で攻撃を仕掛けることにした。

 前方の元第四旅団千五百を攻め立て、重装騎士団はその陣を突破、さらに後方の陣も突破し、もし退却中の部隊が居れば追撃できればと考えた。


 そう決定すると、ルツコイは全軍に命令を出した。

 部隊は門の前に整列し出撃の準備に備える。

 ルツコイは馬上から大声で兵士たちに作戦を伝える。

「今、反乱軍の本隊が退却中だ。手前の陣はそのままだが千人程度と数は少ない。まずこれを攻撃する。重装騎士団はその陣を一気に突破し、後方の本隊の追撃をする。これは反乱軍を叩き潰すチャンスだ」。

 ルツコイは門に向き直った。

「開門!」

 そういうと、街壁の門が開き、重装騎士団が一気に出陣した。総司令官ルツコイと副司令官ユルゲンは並んで先頭を進む。

 その後を帝国軍兵士が続く。


 帝国軍まず、手前の元第四旅団の兵士千五百と衝突した。

 兵力は約四倍。帝国軍は勢いに任せ一気に攻撃を仕掛けた。ユルゲンとルツコイ達は敵を次々と切り倒していく。そして、残りの敵は他の一般兵に任せ、重装騎士団は陣の中央を突破した。


 ユルゲンとルツコイは重装騎士団と共に馬の速度を上げ後方の本陣に迫る。

 後方の陣の兵は、数は多いが逃げ惑うだけでほとんど戦いにならなかった。

 そのまま本陣も突破、さらに後方へ向かい丘を越える。ルツコイは退却中の反乱軍に追いつき、攻撃できればと考えた。

 そして、ルツコイとユルゲン達は、丘を越えようとしたところで反乱軍が目に入った。

 それはルツコイ達が予想していたものとは違っていた。退却中だと思われた反乱軍が、整然と布陣して待ち受けていたのだ。

 見たところ一万以上。

 次の瞬間、反乱軍が鬨の声を上げて突撃を開始した。


「しまった!罠だ!」ルツコイが叫んだ。「退却しろ!」

 ルツコイ、クリーガーと重装騎士団は馬を返して退却を始めた。本陣まで戻ると、先ほど重装騎士団が駆け抜けるとき、ほとんど抵抗しなかった兵士達が向かってきたのだ。

 これも作戦のうちか、ルツコイは狼狽した。

 抵抗し道を塞ぐ兵士たちの数が圧倒的に多かった。重装騎士団と言えども圧倒される。

「このままでは、後ろから迫っている反乱軍と挟み撃ちになってしまいます!」。

 ユルゲンが叫ぶ。

「わかっている!なんとか突っ切れ!」


 手前の元第四旅団は壊滅したようだ。帝国軍の一般兵士たちも本陣に向かってきた。それが重装騎士団の援護に入り反乱軍の囲みが少々崩れた。

 ルツコイ、クリーガーは帝国軍兵士達に敵には目もくれず退却するように叫びながら駆け抜けた。他の士官たちもその命令を叫びつつ退却を始めた。


 重装騎士団は何とかプリブレジヌイの街壁まで到達し門の中に入った。帝国軍の歩兵の一部が逃げきれずに反乱軍に討たれた。しかし、反乱軍には騎兵が、ほとんどいないことが幸いした。追いつかれてしまったら、下手をすると大損害が出るところだった。

 結局、帝国軍は重装騎士団は百五十、一般兵士が六、七百名が打ち取られたが、敵の元第四師団はほぼ壊滅させることができた。まだまだ戦えるとルツコイは感じていた。


 ただ、反乱軍にも何者かはわからないが、軍を統率し指揮を取れる者が就いたのだろう。

 これは簡単にはいかなくなったようだ。

 今回の戦いでは、ルツコイらしからぬ油断で、被害を出してしまった。ルツコイはさらに慎重に戦いを進めると決めた。

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