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色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ  作者: 谷島修一
人民革命
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プリブレジヌイの戦い5

 プリブレジヌイの城の作戦室で、再び司令官達で会議が行われていた。

「刺客を送り、ナタンソーンを暗殺するのはどうでしょうか?」

 親衛隊副隊長であるベルナツキーが提案した。

「先方は部隊の統率もとれておらず、服装や装備もまちまちです。こちらから何人か送り込んでもばれることはないでしょう。うまくナタンソーンを探し出、仕留めることができれば」。

「なるほど、面白い案だ」。

 ルツコイはその案に賛成した。しかし、誰を送り込むかだ。


 ユルゲン・クリーガーは腕が立ち、このような任務には適任だと思われたが、“英雄”として有名になりすぎて顔が割れているということで、別の者を任命することにした。そこで、重装騎士団の中から選抜して五人を送り込むことにした。彼らも精鋭・重装騎士団のメンバーなので腕は立つ。この任務にはうってつけだ。

 夜襲を掛け、その隙に五人を敵陣に紛れ込ませる。そしてナタンソーンを探し出し、仕留める。ナタンソーンが居なくなれば、反乱軍は統率が取れず壊走するだろう。


 その日の夜、早速、暗殺部隊を送り込むべく、陽動作戦で重装騎士団百名と魔術師数名で敵陣に攻撃を掛ける。


 先に暗殺部隊の五人が草原の中に進み、敵陣近くで潜む。しばらくして、城門を開けて重装騎士団が突撃する。

 帝国軍から寝返った元第四旅団の陣が手前にあり、その陣にはいくつか松明が焚かれていたので、まずはそれをめがけて突進する。

 夜襲の予想をしていなかったのか、敵陣は混乱状態となった。

 重装騎士団はそのまま元第四旅団の陣を突破し、本陣にめがけて突撃を掛けた。

 辺りにいる反乱兵を次々に切り倒し、魔術師はテントめがけて火を放った。

 しばらく戦ったあと、重装騎士団は退却を開始。馬を駆り元第四旅団の陣を避けるように大きく迂回してプリブレジヌイへ向かった。

 暗闇の中、追撃を受けることなく、無事、重装騎士団は街壁の門から入り、作戦は終了した。


 一方の暗殺部隊の五人はうまく敵陣に潜り込むことに成功した。

 敵陣の端の方に潜入したので、これからナタンソーン探し出さないといけない。

 夜襲が終わって小一時間後、焚火や松明の薄明りの中、兵士たちは落ち着きを取り戻し、ほとんどの者がその場に座ったり横になったりして休んでいた。

 警戒は薄く、暗殺部隊の五人が陣の中を歩いていても、怪しむ者は居なかった。

 しばらく歩くと、テントが数個立っているのが見えた。

 テントを使っているということは司令官など指揮を執っている者がいると予想した。

 さらに近づくと、見張りがいるテントがあった。おそらく、そこには指揮官がいるのだろう。


 刺客の一人は、見張りに声を掛けた。

「ナタンソーンに至急に伝えたいことがあります」。

「わかりました」。

 見張りはすぐにテントの方へ向き直った。刺客は見張りの後ろから剣を突き刺した。見張りは静かにその場に崩れ落ちた。

 そして、五人の刺客はテントの中になだれ込んだ。


 中には二人、横になっている人物が見えた。

 一人は髪の長い若い女性だった。その女性は剣を抜いた五人を見ると起き上がり、慌てて傍らに置いていたサーベルを抜いて斬り掛かって来た。

 五人はその素早い動きに驚きつつも剣で応戦する。しかし、先頭にいた刺客がサーベルで腹を突き刺され倒れた。ほかの刺客が斬り掛かるも女性はサーベルで受け流す。

 次に女性は少し後ろに下がり距離を取ると、木箱の上に置いてあったナイフを目にも止まらぬ速さで取り、刺客の一人にめがけて投げつけた、そのナイフが喉元に突き刺さり次の刺客も倒れた。

 別の刺客が素早く駆け寄り剣を振り下ろした。寸前で女性は後ろにスッと下がり剣を躱した。次の瞬間、女性のサーベルが振り下ろされ刺客は袈裟懸けに斬られた。

 残りの二人は、まさかの手強い相手に慌ててテントを逃げ出した。

 背後から「刺客だ!捕えろ!」と叫ぶ女性の声が聞こえたが、他の兵士たちはすぐに動く様子もなく、二人は何とか陣地を脱出し、プリブレジヌイまでたどり着いた。その頃には、もうすでに早朝となっていた。


 ルツコイ、ユルゲン、ペシェハノフ、フルニエが集まって、刺客からの報告を聞いた。

 三人が女の護衛に一瞬で倒されたという。

 ルツコイ達は、それを聞いて驚いて言葉も出なかった。

 刺客の五人は重装騎士団所属で、帝国でも腕の立つ精鋭だ。それが五人で歯が立たないとは、その女は、一体何者だ?

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