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色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ  作者: 谷島修一
人民革命
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プリブレジヌイの戦い4

 大陸歴1660年11月27日・ブラミア帝国・プリブレジヌイ


 今朝は朝から、天候は悪く、小雨が降っていた肌寒い日であった。


 ルツコイの元に夜間偵察に立っていた兵士から、一枚の紙がもたらされた。

 紙に書かれた内容は、こちらの帝国軍兵士に反乱を促す内容だった。矢に括り付けられ、十数本射られたらしい。おそらく、深夜に反乱軍が数人で街壁のそばまで近づいて放ったのだろう。

 他の兵士の目につく前に、すべて回収したが、油断がならない。


 そんな中、正午過ぎ、テレ・ダ・ズール公国軍五千名が国境を越え、プリブレジヌイの郊外の小高い丘に到着した。そこで陣を張っている。

 公国軍の司令官、トム・フルニエの部隊が街まで来たというので、街壁の門を開けた。


 フルニエと同行してきた士官三名は敬礼した。

 ルツコイ、ユルゲン、ペシェハノフの三人は敬礼を返し、彼らを歓迎した。

「ご依頼を受け、公国軍、五千名で参上いたしました」。

「貴国の協力、大変感謝しております」。

 ルツコイ達はフルニエを会議室まで案内した。

「反乱軍二万三千。しかし、そのうちの二万は急ごしらえで、ほとんど戦闘ができません。その内、三千はもともと帝国軍でしたが、裏切って反乱軍についております。現状、これらだけが、まともに戦える状況です。その三千の部隊が二万の部隊を遮るに前に陣を張っております。一方のわが軍は六千と重装騎士団三百です」。

「なるほど」。

「まず、わが軍六千と公国軍五千で、まず前にいる反乱軍三千を撃破しましょう」。

「いいでしょう」。

 フルニエは早速自分の陣に戻り、ルツコイからの出撃の合図を待った。


 しばらくして、帝国と公国の連合軍は攻撃を開始する。

 街の外に待機していた公国軍が右から、城から出撃した帝国軍が左から、もともと帝国軍第四旅団であった三千の兵を挟み撃ちにする。


 雨で視界も悪く、雨音にかき消されて、馬の蹄の音が聞こえなかったのか、連合軍がかなり接近したとことろで、ようやく反乱軍はこちらに気が付いたようだ。

 まず、帝国と公国の連合軍の重装騎士団と騎兵が突撃する。反乱軍の兵士たちも剣を抜き、戦闘が始まった。


 さすがに元帝国軍の兵士だった部隊だ、これまでの様に簡単にはいかなかった。

 激しい抵抗があり、しばらくの戦闘の結果、連合軍にも犠牲者が出始めた。しかし、数で言えば連合軍の方が三倍以上、徐々に反乱軍が押されていった。


 反乱軍の内、半分ほどが倒されたところで、退却を始めた。

 連合軍はそのまま追撃を始める。後方に控えていた反乱軍まで到達しようとしたところ、天候が急変した。

 巨大な雹が降り始めたのだ。人の頭ほどの雹が連合軍に降り注ぐ。


 盾を持つ兵は、それを上に向けて雹から身を守る。盾を持たない兵は雹の直撃を受けその場に倒れていく。

「戦いにならん。一旦退却を!」

 ルツコイはそう叫び、全軍に城に戻るように号令を掛けた。公国軍もそれに続いた。


 城に戻った各司令官は会議室に集まって、今日の戦いについて話をしていた。

「今日、反乱軍の千五百は打ち取っただろう」。

「本陣まで、もう一歩のところでした」。

「しかし、あの雹は不自然だ。あのような雹が降るような季節でもないだろう」。

「あれは、大気魔術なのでは?」

 ユルゲンが言う。

「そうかもしれません」。フルニエが頷いて答えた。「私も雹を降らせる魔術を見たことがあります」。

 彼は二年前の “ソローキン反乱” の時、ソローキンが率いる帝国軍が公国の首都ソントルヴィレに迫った時、ヴィット王国の魔術師達が魔術で雹を降らせて、帝国軍の攻撃を退けたのだ。

 ルツコイは不満げに言う。

「帝国にはあのような魔術を使えるものは居ないはずだ」。

「もしかて、ヴィット王国の者が反乱軍に味方しているのか?」

「もし、あれが魔術だとすると、戦略を練り直さないといけない。攻め方を間違えると、こちらが全滅する」。


 しかし、そこにいる者に、魔術に対して何か対策を打ち出せるものは居なかった。当面、様子見で出撃は控えるということになった。

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