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色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ  作者: 谷島修一
序章
1/66

パルラメンスカヤ人民共和国

 大陸歴1710年4月15日・パルラメンスカヤ人民共和国・首都アリーグラード


 春。

 走る自転車で受ける風は、まだまだ冷たい。


 今年で建国五十周年を迎えるパルラメンスカヤ人民共和国の首都アリーグラード。ここは大陸のほぼ中央の内陸部に位置しているため短い夏と長い寒いが特徴だ。


 カレッジで歴史を学んでいる学生のイリーナ・ガラバルスコワは自転車で、茶色い長い髪をなびかせて目的地へと急いでいた。約束の時間には少々遅刻だ。

 やや人出の多い通りで注意深く人を避け、地図を確認しながら自転車を走らせた。


 少し顔を上げると街の通りの建物のあちこちで白い旗が飾られているのが見える。その旗には赤い50の数字が刺繍されている。最近では見慣れた光景だ。

 そして、この秋、城へと続く一番大きな通りで派手な建国五十周年記念パレードが予定されている。


 イリーナがいる、ここパルラメンスカヤ人民共和国は、五十年前まではブラミア帝国と呼ばれていた。

 ブラミア帝国は約二百五十年続いた広大で土地を持つ農業国家であった。その肥沃で広大な国土を背景に、二百年ほど前からは軍部が力を強め、強大な軍事国家となっていた。しかし、五十年前の大陸歴1660年11月10日、ここ首都のアリーグラードの北部にあった貧困地域の住民が中心となり革命を起こした。

 最初に首都北部の貧困地域の住民が大規模なデモを起こした。それが烽火となり首都北部の貧困地域の出身者の多かった軍の兵士の多くがそのデモに同調。帝国各地の駐屯地でも軍による反乱が発生することになった。

 その後、武装したデモ隊と反乱軍は合流し “人民革命軍”と名乗り、皇帝に忠誠を誓い続ける帝国軍の残存兵が、北部の街プリブレジヌイの郊外で激しく衝突、多数の死傷者を出した。

 

 最終的には帝国の皇帝イリアが国外に逃亡し革命は成就。帝政は崩壊し、革命家ナタンソーンが指導して人民を中心とした政府が樹立された。その後、紆余曲折はあったが、今では民主的な選挙で代議員が選ばれ、議会による国家運営がされている。

 今では、五十年前の武装蜂起の11月10日から数カ月後の帝政の崩壊までを “人民革命”と呼んでいる。


 イリーナは自転車を走らせ、街の中央部にある城に近い、昔、貴族たちが多く住んでいたという地域までどんどん進む。

 革命の後、貴族階級は廃止され、彼らの財産は没収されたので、今、この付近の屋敷に住んでいるのは革命後に財を成した商人などだという。


 イリーナは、もう一度地図を確認して進む。

 目的地は少々小高いところにあるので、緩やかではあったが長い坂で自転車では少々つらい。イリーナは途中から自転車を降りて手で押して進む。

 自転車に乗っていると冷たい風のせいで気にならなかったが、急いできたせいもあって、自転車を降りて歩くと暑くなってきた。少し小柄な彼女には自転車がやや大きかった。さらに自宅からは、ちょっと距離もあったのでそれなりの運動量になった。


 イリーナは、息を切らせながら、ようやく目的の屋敷に到着した。

 初めて見るそれは白い美しい屋敷だった。付近にある他の屋敷に比べると少し小さめだが、庭の木々もきれいに剪定されていて、季節の花が咲いているのが見えた。この屋敷には召使いが一人いると聞いた。その人物が手入れをしているのだろうか。

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