第八話 巨人の肩の上にのる小人①
昨日風邪で寝込んで、更新できたく申し訳ありません。
今日も頭がぐちゃぐちゃで、一話しか書けなかったため、再びお詫び申し上げます。
明日から二話のペースに戻れると思うので、今後どもよろしくお願いいたします。
私はケイルの発言を聞いた後、ケインさんたちが働く前日のよるのこと。諭されたというべきだろうか。私は眠れなくて自分に何度も問いただそうとしていた。
村人たちの好意に甘えて、成り行きで受験し、裁判官の座を手に収めたまではいいが、人間との考え方と溝で横断されているように思い知らされ、母の教えが突然に思い浮んできた。
「他人を助ける前に自分の目的をはっきりしなさい。考え方はそれぞれですが、他人に恩を売るためか、ただの自己満足か、こういった考え方には大きな違いがあります。優しさは毒にも薬にもなる。目的が不明なままでむやみに手を出してしまえば、あなたはきっと後悔するでしょう。」
よく思えば、私が深く考えていないし、ケイルたちが目の前のことに精一杯だったのもなんかわかってきた気がする。彼の言った通りで、衣食住が満足するのは村人の望みだ。私がそれに困ることがなかったから、考えが偏りかねない。
というわけで、魔法ではなく、彼らにできる技術を開発しようと思いに至って、それを商業登録することで、彼らに生きていく術を身につけさせようと私が考えたのだ。
「以上が私の考えだ。みんなの意見を聞かせてほしい。」
「シーナさん。多分それはうまくいかないと思う。」ケインさんが言いづらそうな表情で前に出た。
「俺たちと同じ境遇なやつはおそらく、森の南だけじゃない。むしろこの村のほうが異常だ。本来言いたくなかったが、この牧場を見てわかった。ここの産出がヤバすぎる!麦に野菜、果物、魚、あとその稲から肉まで……参ったなあ。」
「でもそれこそ問題なんだ。いまの時勢からすりゃ、国中の物価が高騰してるし、俺たちの村みたいに飢饉のあるところも増えていくだろう。俺が言いたいのは、いくらシーナさんの技術が素晴らしかろうと、俺らがここを出ていったら、雇ってくれるやつはねえってことだ。その前に、ここのことを知らされたら逆に危ないぜ。」
ここまで深刻だとは知らなかった。物価が高くなっているってミアちゃんを通じて知ったけど、難民対策とかを講じる以前の問題だ。
環境に許容量があって、それを超えてしまうと生態系が壊れるかのように、この村の土地も限られており、難民の受け入れと同時に色んな問題に発展しそうで怖い。南の森付近が私の魔法によって少し開拓したとはいえ、魔物の遭遇率を考えて、住まわせるようなところじゃないし、守ってあげる力をこの村にないのが現実だ。
「本題に入ろう?私たちができるのは飢饉をどうこうすることじゃないでしょう?ケインさんたちがここを出ないとしても、働かざるもの食うべからず。いつまでも私の牧場にいさせることはできないから、自立できる方法も考えておいてくださいね。ここの畑は十分にあるし、農業以外のことにできたことが増えても損はないから。」
私の話を聞いて、返してきたのが相変わらず爽快な笑顔だった。
「俺らもなめられては困るぜ。いい歳した男だ。シーナさんに甘えるやつがこの中にいたら、そいつの器を鋳つぶしてやる。」
とケインさんが言いきった。
「で、シーナさん。情けねえけど、よろしく頼む。とりあえずやりたいことならこいつらも多少言えるだろう。それでいいかい?」
うんと頷いて突然、私がある重要なことに気づいてしまった。
「そういえば、ケインさんたちって文字の書き読みできる?」
という一言で全員が固まった。
「全滅?一人ぐらいは…」
いなかった。最後に恐る恐ると手を挙げた背の小さい男がいたけど、彼はケインさんたちの村の会計に担当していたらしく、村長の息子のケインさんと同じく少ししかできない。それは全員固まったわけだ。
全員に文字の読み書きを教えるのは効率悪すぎる。彼ら二人を含めて学びたい人に教えつつ、彼らに空いた時間を使って復習させるのがよいかな。なんなら————
「じゃ、ケインさんがこれを使って。みんなのやりたい仕事の統計をお願いね。できたら倉庫のテーブルに置いて、先に仕事に戻っていいよ。」
ケインさんが私から羽ペンと手帳を受け取って、順番に質問しに行った。それを見て、私が村へと向かった。
村のみんなにも文字の読み書きを教えよう。長年お世話になってきた少しのお返しに、私が村の一員として、たまにもみんなの役に立ちたいから。
早速薬屋にケイル君を捕まえて、村のみんなに相談したいことがあるって、集めるのを手伝ってもらい、私も一軒一軒訪ねつつ、この件に備えてまだ足りていないものがないかと考え始めた。ぱっと思いついたのが、紙の問題だ。
私の場合は動物の皮でできた紙を使って勉強していた。コストが高すぎて使えない。といっても、砂で練習させるのは一見いい案に見えたが、実用性がない。
そうだ!
情報収集のついでに、首都の図書館で本を漁ってみればいいんじゃん。