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夜の帳に潜り込んで優雅に生きていきなさい  作者: Cestab
第一章 私はごく普通な村娘
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第七話 労働改造してもらう

遅くなりすぎて申し訳ございません。

私もこれで、おやすみなさい。

 「さてと、全員集まったところで、今日から、皆さんに私の牧場で働いてもらう。」


 審判が終わった次の日、私がもっと人間の生活に溶き込もうと決めた。私が労働改造中の男たちに教えられるのが技術、その代わりに、彼らの人間らしさを観察して学んでいく。


 「おい、嬢ちゃんって昨日裁判長やってたな。私の牧場って、ここもあんたのもんか?」


 驚いたのがリーダーだけじゃない様子。隣の茶髪の男も驚いたようで、図太い声で私に問いかけてきた。


 「その通り。むしろこっちの方が私の本業よ。これから、私のことをシーナさんと呼んでください。」


 「いや、偉い人だってのがわかる。わかるけどよ。いくら何でも年下の嬢ちゃんをさん付けに呼ぶのはちょっと……」


 素早く反論が来るとは思ってもいなかった。なじみすぎてないか?それはよくない。


 「いい?あなたたちは今罪を犯した身、監視役を付けないで私のところに来させた理由を今からでも教えてやってもいいわよ?」


 男がゴクリと唾を呑んで従順になった。リーダーに睨まれてビビったなんて見てないから、威張る私を見て怖かったに相違ない。


 「はい!シーナさん!」


 「よろしい!とりあえず、強盗になる前に、あなたたちが何の仕事をやっていたかを聞いてから、今後の役割を決定する。」


 このぐらいしとかないと、私の牧場がめちゃくちゃにされそうな気がしたからだ。


 「シーナさん、審判の時で聞いただろ?俺たち全員農民だ。ここの連中は村にいる男の半分、残りはまともに体を動かせない年寄りか、女に子どもだ。村は干害に遭って、何も作れなくなった。それで俺たちが強盗をやろうと覚悟して村を出たのさ」


 リーダーの男が話したのは確かに審判の際に聞かされたのと同じ。ただ干害って、近年、その言葉を耳にした覚えがないから、気になってつい回りくどい言い方で尋ねた。


 彼らの村は森の向こう側にあるはず。


「干害はいつから?」


 「もう半年以上たったぞ。蓄えてきた食料も減る一方で、残った分は何とか税に足したけど、二週間しか持たん。それ以上出せないから、俺たちは村を離れたくないやつを残して、女子どもを連れて森に入ったのだ。強盗をやっていると同時に、狩りもして何とかここまでやってきた……あと、もう一度感謝する。この村の奴らを説得して、俺らの家族までを受け入れてくれたんだ。この恩、必ず返す!」


 そう言って、ほかの男も一斉に私に向かって深々と頭を下げた。


 人があまり通れない森を強盗のナワバリにするのもどうかと思うが、すっかり強盗で話を通している。記憶が間違いなければ私が初めてのターゲットだったような……まさか私を見て出来心で強盗やっちゃった、なんてことはないよね?やったところで結果は変わりないけど。


 そのおかげで、労働改造で済ませることができた。


 「仕事で罪を償ってくれればよし。ところで、地方長官は何もしなかった?」


 「何が地方長官だ!あれは商人、長官の座も金で買ったに違いない!商品すら作れない俺らの村に、税を要求する以外、来るはずもねえだろ!俺らをここまで追い詰められなかったら、強盗の真似などしなかった!


……だから頼む、俺の娘も嬢ちゃんと近い年なんだ、いや、シーナさんか。シーナさんの前に、あまり汚い言葉を吐きたくないんだ。」


 あちゃー。その娘のためにも、この話もう触れないようにしよう。


 「この件はもうよい。上には報告したから、検察の人がなんとかやってくれるでしょう。では、皆さんに畑仕事のほか、したことないと思っていいよね」


 「はい。」


 「早速だが、ケインさん?名前合ってるよね。水田と麦の畑を見てから、その仕事量に合う人数の判断と選択をお願いできる?今の時期では、水田に除草や定期的な水交換と田干しくらいのと、畑の除草や水やり、あと土をほぐすなど、全般的に頼む。除虫はしなくていいよ、私がやるから。」


 「ああ、合っている。麦の畑なら俺らやってたから任せてくれ。どっかで聞いたことがあったようなその水田って何?水で畑作るのかい?なんて贅沢な!」


 反省する。記憶の隅っこに置いた知識を反芻して思い出した地理の知識で、森の南は山脈の風下斜面で干害によく遭うところだ。水田なんてあるがはずなかった、私のバカ。


 「じゃ、麦の方を終わらせてきて?そんなに面積が大きいわけじゃないから、5人くらいでいけると思う。」


 そこで水田に納得してくれなかったケインさんが私の指示に従って、5人の男を選んで麦畑に向かった。その前に養魚池を見たはずなのに、水田の方が納得できなかった理由は不明なままだ。


 「残りの皆さんには経験がないから、一通りにやってから決めよう。」


 その日、魚の餌やりから、養魚池を活用した肥料作りや水田の水交換まで、全部やり終わったころ、私しか立てる者はいなかった。私が一人で牧場を管理していると聞いて、その次の日から、私をシーナさんと呼ぶ声に、真心が込められるようになった気がする。


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