プロローグ
はじめまして、執筆するのもはじめてなもので、拙いところが多少ございますので、お許しください。
投稿ペースも一日2話程度を想定しています。個人的に書きたいものしか書かないため、苦手な方や読んでみたら面白くない方はご遠慮なく右上をクリックしてどうぞ。
意見やコメントを積極的に読むつもりなので、批評など全てが評価として慎重に参考といたします。
R15は念のためで、基本ほのぼのな感じですので、ご安心ください。
よろしくお願いいたします。
「夜の帳に潜り込んで優雅に生きていきなさい」
これが母様の最後の言葉であり、ステュアート家の家訓でもある。その言葉と同じくらい鮮明に脳に刻まれた記憶はシエナにとって残酷ながらも、不思議なことに、恨みなどがそう強くはなかった。
おかしいよね。なぜなら————
その日、シエナの国も家族も勇者を名乗る人間によって失ってしまったからだ。
そして、学んできた知識がときに私を恐怖にさせてしまう。
結論として、私も母様も知っていた。勇者という表に出された存在がいずれこの国を滅ぶだろうと。
力が足りていないはずもなく、この事実を根本から覆す力を、シエナの母様、この国の女王たるサーチャー・フォン・ステュアートが持っていた。
だが、母様の顔をみて、シエナが(「わたしと一緒に生きていってください」と)強請るのをやめた。やめざるをえなかったのだ。
父親が逝った日から、私を相変わらずに可愛がってくださった母様が顔を歪ませたほどに苦しまれていたくせに、私に隠そうとしても無駄くらい…普段の母様なら気づくはずだった。何せ仕事を終えて帰ってきたときもずっと疲れ切った様子で、仕方がない。
私に母様を救う力などない。
だから、「お休みなさいませ」と同時に、抑えきれそうにない感情を押し殺して、母様の最期を見送った。
だって、母様に教わったもの。
王家に生まれた以上、身分を弁えなさいと。感情は素晴らしいものを否定しないが、理性をもって優雅に振舞いなさいと。
正直にいうと、国民がこの結末を望んでいようと関係ない。私だって、ずっと、「私のことを見ていてほしい」と言いたかった。
嫉妬というべきでしょうか?母様の愛を賜ったものの、それが全て父様のものだったなんて、まるで抜け殻に残った愛の残滓のように感じたこともあった。
どうやって感情を抑えよう?こういった感情が抑えきれなかったからこそ、母様を長年の苦痛から解放してあげたかった。
「…最後わがままを言ってごめんなさい」
と、母様がそう願ったから。
◇◆◇◆◇
シエナ・クリスフォン・ステュアート、今はシーナ・クリスフォードという、どこにでもいる普通の冒険者である————
なんてことは嘘である。
冒険者ではなく、森の近くに牧場をかかえる村娘であった。あと、シーナ・クリスフォートも当然偽名である。民が家族名を有するのは一般的であるから、不都合などない。
あれを経て、国が乗っ取られて、元王女も行方不明となったため、捜査が継続しているようだが、ここにいる村娘ことシーナ、つまり、私にとってどうでもよいことだ。
中央集権体制から議会内閣制にかわったのが原因か、税金が少し下げられ、農畜行や商業を中心に支援がなされている。
それには納得できなくもない。ここ最近、近くの町でも物価が上昇する兆しを見せており、大都市が物価高騰中なんて噂も何度も耳に入った。物価上昇について、まだ王女だった頃、その見当はついていた。自給自足の牧場主に影響が及ばない限り、いいか。
一介の村娘にどうしろというのだ?
でも、一介の村娘が牧場主になったのも大概か?
「シーナさん!台車を借りてくれ!」
突然の大声で思いに耽った私が現実に呼び戻され、急いでそとの様子を見に行ったら、横腹に大けがで血まみれになっている狩人のリーダーの姿が目に入った。応急処置が適切になされたみたいで、気絶したままだ。早急な治療が要るに違いない。
「もう、あんたたち、さっさとポリスさんを運んでいってあげて。台車なんて後で言ってくれればいいのに、妙なところに律儀!」
「ありがと!」若い狩人の二人がそうなると知っていたばかりの笑みをこぼして賞賛すべき速さで診療所の方向へと飛んで行った。
私が溜息を吐いて屋内に戻った。二人が私を呼んだとき、既にポリスさんを台車に乗せていて、搬送の準備を済ませたところだった。緊急性がわかるのは良い心がけではあるが、普段律儀どころか、大雑把なやつらだった。
ただ、成長した二人の姿を見るたびに、寂しさを覚える。
子どもの頃「お姉ちゃん」と呼んでくれた二人が、いつの間に「シーナさん」に定着していた。幸い、人外れな私を受け入れた村のことだから、このくらいは些細なことで、気にしなくていいよね?
裏を返せば、よく見た目的に年を取らない私を受け入れたものだ。
最後に、
申し遅れました。元シエナ・クリスフォン・ステュアート王女は真祖でございます。また、王国が滅んで、10年を経ちました。