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妖華の竜王  作者: MTU
第一章 始まり
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第八話 連装術式

 聖竜の森へ木の実をとりに行ってから一週間がたった。シンとコウは今まで以上に強くなるために庭で打ち合っている。しかし今までと違い木刀ではなく魔術で作った武器だ。シンは炎の剣を振るい、コウは淡く黄色に輝く刀を握っていた。


「これでどうだ!」


 シンは炎剣を振るいコウを切ろうとするがコウは刀をぶつけ防ぐ。


「おい、お前らいったんやめろ」


 イチイが家から出てきて二人の勝負をやめさせる。


「どうしたんですか師匠」

「千さんたちがうちに来るから。お前らは少しおとなしくしてろ」

『はい』


 二人は剣と刀を消しイチイと共にポータルまで続く道に向かう。奥から千と舞それに禅がやってきた。舞は何か堤を持っていた。


「コウ、会いに来たぞ」


 千は、すぐさまコウの下に向かった。


「千さん、あんたは俺らと話だ」

「久しぶりに会ったんじゃ。ちょっとくらい、いいじゃろ」

「だめだ」


 千はイチイによってコウから離され連れていかれる。

「禅さん?なんで禅さんがいるんですか」

「俺がいたら悪いのか?」

「いえ、そういうわけじゃないです」


 シンが禅に聞くが禅の怖い顔が近づき迫力があり、シンはすごんでしまう。そんな様子をコウは苦笑いしながら見ていた。コウがそんな風にしていると舞が近づいてきた。

 

「シンはもう大丈夫なの」

「今まで以上に頑張ってるから大丈夫だと思うよ」

「なら、よかった~」


 舞はそれを聞き安心したらしく息を吐く。


「放すんじゃ」

「俺は禅と千さんと話をするからお前らは待ってろ」


 禅とイチイは文句を言う千を連れて家の中に入っていた。コウたちは庭に向かった。三人は庭の真ん中あたりに座ると


「じゃ~ん。お弁当を持ってきました」


 舞は、堤を広げると中には三段の重箱が入っていた。それを一つ一つ蓋をあけていくと


『おぉ~』


 中にはおにぎりや唐揚げ、卵焼きなどの食べ物が入っていた。一つだけ他のものと違い確実に高そうな食べものが入っていた。高そうな物は千が入れたものだ。

 

「私が作ったの。おいしそうでしょ。」

「じゅるり…食べてもいい?」

「どうぞ」


 舞から許可をもらうとコウとシンはすごい勢いで食べていく。それもそうだろうここ最近まともな料理を食べていない。一週間前もらってきた食べ物もただ単に火で焼いて食べるだけなので、あまりおいしくはなかった。なので、久しぶりのちゃんと調理された食べ物だ。おいしくないはずはない。

 

「おいしいでしょ。」


 舞が聞くが二人は食べるのに夢中で返事がないが舞は美味しそうに食べる二人を見て満足そうにしていた。二人が弁当をすべて食べ終わると

 

「二人は、最近何してるの」

「うっぷ、最近は新しい魔術を試したりしてる」

「どんな魔術?」


 舞が訪ねるとコウは立ち上がり魔力を右手に集める。

 

 ―妖刀零式―

 

 コウの手から淡く輝く刀が現れた。舞はその刀から不思議な魔力を感じた。


「これは、妖刀零式っていう新しい俺の魔術だ」

「妖刀?なんでそんな名前にしたの」


 舞が疑問に思うのも当然だろう妖刀なんて言う名前は最初に考え付くだけでおかしい。

妖刀は普通、祟りなどがあるかもしれなかったりするもので不吉なものが多い。


「なんとなく、かな」


 コウは何となくこの魔術は妖刀と名付けなければならないと思った。元からそう名付けられていたかのように。


「不思議な魔力がする刀だね」

「なんか知らないけどこういう魔力になっちゃうんだよ」


 この魔術を発動させると魔力の質がかなり変わってしまう。普通は常に魔力を流していないと魔術は形を保つことができない。シンの炎剣はシンの膨大な魔力があるからできる力技だが、コウの魔術は魔力を流し続けなくても形を維持できるように魔力の質が変わっている。

魔力の質の変化など普通はできない。なぜなら基本的に魔力の質は人には人の異形には異形の質がある。

 シンは最初見たときとても驚いていたが、コウならありえなくはないと思い呆れていた。


「今から何する?」

「師匠が待ってろって、言ってたから、何もせず待っといたほうがいいと思う。」

「イチイさんたち何を話してるのかな?」

「分かんないな」


 三人は何を話しているのかを考え始めた。






 イチイたちは家の中に入るとそれぞれ椅子に座る。千は少し不満そうにしている。

 

「千さん、なんでそんなに不満そうにしてるんだよ」

「お主が、コウと話そうとしてるところを連れてくるからじゃろ」

「落ち着いてください。イチイが珍しく真面目に話をしようとしてるんですから」

「おい、珍しくはよけいだろ」


 禅が千をなだめながらイチイに毒を吐く。イチイは文句を言うがすぐに真剣な顔になる。それに気づいた千と禅も真剣になる。


「話ってなんじゃ?」

「聖竜の森で邪者が出た。」

『なっ⁉』


 千と禅は驚くがすぐに深刻な表情をする。

「いつ出たんだ」

「一週間まえだ」

「なぜすぐに報告しなかったんじゃ」


 千はイチイに鋭い視線を向ける。その態度はコウと接している時のような優しい態度ではない。まるで歴戦の猛者のような迫力がある。

 

「俺が見たわけじゃなかったからな。」

「それはどういうことだ。」


 イチイは千たちにコウたちから聞いた話を大体伝えた。


「邪者はお前が倒したのか?」

「いや、全てあいつらがやった」

『は?』 


 二人はイチイの言葉にありえないと思った。コウたちはまだ子供なのだ。それが邪者を倒したというのだ。邪者は魔術師でもそう簡単には倒せないのだ。冗談にしか聞こえない。

 

「何を言っておるんじゃ。真剣な話をしてるのに冗談を言うでない」

「いや、ほんとだぞ」


 千は口を広げて驚く。


「あいつらはどうやって倒したんだ。」

「舞が幻術でサポートしてシンがひきつけて、コウがとどめを刺したらしい。」


 それを聞いた禅は何かを考え始める。

 

「俺はこれから聖竜の森の調査をする。何かわかったら報告する」

「分かった」


 これで話し合いが終わると思ったが


「イチイ、一つ聞いてもいいか。」

「あぁ、なんだ」

「コウとシンは何者なんだ?お前と同じような存在だとは知っているが、あの年で邪者を倒すなんて普通じゃない。」

「………」


 禅の疑問はもっともだ。イチイは、見当がついていたが答えない。


「はぁ、教えられるようになったら言ってくれ。」

「助かる。俺もまだ何者か判断できてないからな。」


 三人は家を出てコウたちの下へと向かった。





「お前ら、何やってんだ。」

「師匠、コウが舞に新しい魔術を見せてたところです。」


 禅は、珍しい物を見るかのようにコウの妖刀を眺める。


「その魔術は…いや、違うか。」


 千はコウの妖刀を見て既視感を覚えた。そんな千を後ろからイチイは睨んだ。今コウの事がばれるのはまずい。


「これどうやってるんだ?」


 禅に仕組みを聞かれたので、コウは説明した。禅は、驚いた。


「魔力の質の変化か…すごいな。」


 禅は少し考えるようなそぶりを見せるが納得をしたそぶりを見せた。禅は禅でコウとシンの正体を考えている。シンの正体は何となく察したがコウの正体はつかめないでいた。そんなことを考えているとふと思いついたことがあった。

 

「そうだ、お前らに稽古をつけてやろうか?」

「え、いいんですか」


 シンが禅の誘いに食いついた。

「なら、私もいろいろと教えてやろう」


 千も稽古をつけてくれるそうだ。イチイは禅がコウとシンの力を確かめようと分かっていたが今の状態を見ても正体に気づくことはない。千はただ単に禅に便乗しただけだ。


「私はいいかな。」

「何を言うお主こそ鍛えなければならぬじゃろ。」

「いや~」


 舞は断り逃げようとするが捕まってしまう。どうしてそこまで嫌がる必要があるのか。


「なんでそんなに嫌がるんだ?」

「お婆ちゃんの稽古は、スパルタなんだよ。」


 舞は肩を下げながら言ってくる。そんな様子から本当に嫌なことが分かる。


「俺が今から、邪者のみを倒す方法を教えるぞ。」


 それを聞いた時シンはあの時のことを思い出してうつむいてしまうがすぐに気を取り直し禅の話を真剣に聞き始める。

 

「邪者だけを倒すにはこの術式を使う。」


 そう言って地面に術式を描いていった。その術式はコウたちが今まで見たこともないような複雑な形をしていた。その術式の名前は“邪魂鎮静”この術式はこれだけでは意味がなく組み合わせたり、武器に付与したりしなければ使い物にならない。


「できなくっても仕方がない。この術式は連盟に所属している魔術師でもできる者は少ないからな」


 シンとコウは、術式を作っていく。シンは炎剣の術式にコウは妖刀の術式に合わせていく。術式の掛け合わせはそれぞれ別の魔術陣で術式を展開するため魔術陣同士を組み合わせなければならない。これができない者が多いため使える人が少ない。舞は大した攻撃魔術を使えないため今回は試さない。


「おい、禅いくら何でも術式の掛け合わせなどできるわけなかろう」 

「いや、そうでもないみたいですよ」


 禅はコウたちの方に指をさす。コウたちは集中しており動かない。しかし魔力がだんだんとあふれ出してきて

 

 ―連装術式 炎剣・邪魂鎮静―

 

 シンの右手から炎が溢れだし剣の形に変わっていく。完全に剣の形になった炎の周りを不思議な魔力をまとっていた。この不思議な魔力の正体こそが邪魂鎮静の効果だ。威力とかが上がっているわけではなくただ単に邪者のみを倒すことができる。なので、この剣で邪者以外は切ることはできない。

 

「シンはできたみたいだな。」

「嘘じゃろ」

「ふぅ」


 千は信じられないと驚く。シンはできたことに安どしている。コウはまだ集中をしている。

そして

 

 ―連装術式 妖刀零式・邪魂鎮静―


 コウも妖刀をだしそれには、不思議な魔力が纏われている。

 

「二人ともできるなんてすごいな」

「コウもできたのか、いやもう驚かん方がいいかもしれん」


 千は二人のすることに驚き疲れたようでもう驚かないと心に誓った。コウたちはできたことに喜んでいたがしばらくすると魔術が消えてしまう。

 

「あれ?」 

「さすがにずっとその状態を維持するのはまだできないようだな。」

「どうしてですか?」

「二つの魔術陣を合わせてるからな。ずっと発動させてるなら二つとも同じくらいの出力で維持しないとならないんだ。今後はそれが維持できるように頑張るんだな。」


 禅にアドバイスをもらい、二人は魔術の維持ができるように頑張るのだった。


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