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妖華の竜王  作者: MTU
第一章 始まり
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第五話 幻術使い

 コウがイチイの家で暮らし始め一か月たった。その間コウはイチイから新しい魔術を教わった。幻術と呪いだ。

幻術は、その名の通り幻を見せる術だ。これだけ聞くとたいしたことないように聞こえるが、過去に幻術によって精神崩壊をおこし廃人となってしまった者がいるほど使い方によってはとても強力な魔術だ。

そして呪いは相手のことを呪い動きを制限したり体内にある魔力を無散させたりすることができる。基本的には相手の妨害をするための魔術である。

この二つの魔術は生まれつきの能力が必要であり適性がないものにはどれだけ練習しようとも使うことができない。コウは幻術に適性がありイチイに教わっている。ちなみにイチイは幻術と呪いに適性がある。シンはどちらにも適性がなく幻術の練習をしているたびにコウのことをうらやましそうに見ている。

 コウとシンはこの一か月の間にかなり仲良くなった。今では毎日のように二人で森に入り遊んでいる。その中でコウは、シンが使う魔術を見てどんどん使えるようになってきたが、唯一、防御魔術は見てもあまり使うことができなくそれを見て、シンが勝ち誇ったように笑うのが日課となっていた。

 今日は、家に食べるものがなくなってしまって、朝からイチイが現界に食べ物をもらいに行っている。コウたちは普段、イチイが森の奥に木の実などをとりに行ってそのとってきたものを食べているのだが三人になってから食べ物の消費が激しくなり食料が無くなってしまったのだ。コウとシンは今木刀を持って勝負している。最近はコウもシンに勝てるようになってきて同じくらいの強さになっていた。


「は!…今、何勝何敗だったっけ。」


シンがコウに向かって木刀を振るいながら聞く。


「俺が、っ!…127勝132敗だよ。これでどうだ!」


コウがシンの木刀を受け止め、跳ね返しシンの脇腹目掛け木刀を振るう。


「まだ僕の方が優勢だね。」


コウの木刀を後ろに下がり躱したシンが笑って言った。そして二人が向き合い木刀を構えなおした時、ポータルのある方から人の気配がした。気配がした方を向くとそこにはイチイと千そして線の後ろには黒髪の美少女がいる。身長はコウとシンと同じくらいで年も同じくらいだろう。


「お~い、コウ会いに来たぞ。」


そういったのは千だった。コウたちは木刀を収めイチイたちの方へと向かった。


「久しぶりです。千さん」

「コウ喋れるようになったのか!」


千はとても驚いている。コウはイチイの家に住み始めてから喉を回復させて喋れるようになったので千は初めてコウのちゃんとした声を聴いた。


「久しぶり。舞」

「久しぶりだね。シン」


イチイたちと共に来ていた女の子と話していた。そんな会話がされていると女の子がコウに気が付き近づいてきた。


「あなたがコウ?」

「えっと~」

「あぁごめんね。私は幻条 舞。よろしくね。」


コウが自分のことを知らないから疑問の表情を浮かべていると思っている舞が自己紹介をするがコウは別に舞のことが分からなかったから疑問に思っているわけではない。

「どうしたの?」


舞がいまだに疑問の表情をしているコウのことを不思議に思いどうしたのか聞くと


「どうして、幻術なんて使ってるの?」

「っ!」


コウが疑問に思っていたことを言うとその場にいる全員が驚いた。シンはどういうことかと驚いており、イチイたちはどうして気づいたのかと驚いている。


「…どうしてわかったの?」

「舞さんから発せられてる魔力が乱れてたから。何か魔術を使ってるのかなぁって思ったから。」


コウは舞の魔力が不自然に乱れていることに気づきすぐに魔術を使っていると分かった。


「お婆ちゃんが言う通りすごいね。あと私のことは舞でいいよ。」

「じゃろ」


舞はまさか自分の幻術が見破られると思っておらず、驚きながらもコウのことをほめるがなぜか千が誇らしげにしていた。


「え?舞って幻術使ってたの?」

「そうだよ。今までずっと幻術を使ってた。」


シンはずっと舞が幻術を使っていることに気が付かなかった。


「まっ。ばれちゃったなら仕方がないね。幻術を解いてもいい、お婆ちゃん」


舞が選に尋ねた。どうやら舞が幻術を使っているのは千の指示らしい。


「仕方ないじゃろ。解いてもよいぞ。」


そういうと舞から放たれていた魔力がなくなった。すると今まで黒髪黒目だった特徴が髪は肩まで伸ばしてあり千よりも濃い金色に変わり、目の色はきれいな藍色へと変わった。元からとても可愛らしかったが、さらにその可愛らしさが増した。


「でもどうして幻術なんてかけてたの?」


シンが疑問に思ったことを聞き、コウも同じように疑問の眼差しを舞に向けた。


「それは私が説明しよう。」


千と舞は幻条家という現界では、とても魔術が得意な家柄であり、幻術を使うのに秀でている。幻条家では、幻術が得意な者は金色の髪を持ち生まれてくる。中でも金色が濃いほど幻術を使うのにたけていて、その幻術は相手の戦意を完全になくしてしまうほどの強力なものだ。

なので、その強力な力を求めて、舞を誘拐しようとするため普段、舞は自分自身に幻術をかけ自分が強力な幻術使いだとばれないようにしているそうだ。そう説明していると、突然ぐぅ~と音が鳴った。


「ごめん、僕だ」


シンは恥ずかしそうに言った。さっきの音はシンのお腹の音だった。


「あぁ、そうだった。ほら、食べ物だ。」


イチイは持ってきた袋をコウとシンに渡した。二人は、それにとび着くように受け取った。中には大量の食べ物が入っていた。


「そんなに飛びつかんでも食べ物はどこにもいかんぞ。」

「久しぶりのまともなご飯だからね」

「どうせ、木のみばかりだったのじゃろ。」


シンから予想通りのことを聞き千が呆れたように言うと


「草を食べてたんですよ。」

「え⁉」

「ほら」


コウから予想外のことを聞き、千が驚くと、しかしこれだけでは終わらなかった。コウは、草がまだらに生えた方向へと向かい食べたらだめそうな色をした草を持ってきた。そう見た目はあれだが甘い味がする草だ。それをコウは目の前で食べたのだ。千は驚きすぎて時間が止まったように固まっていた。


「どうしたの。お婆ちゃん」


舞が動かなくなった千を心配し千の顔の前で手を振り意識があるか確認していたのだが、


「おい、イチイ仮にもコウを預かるといったのになんてもの食わせてるんじゃ!」


千が急に怒号をあげ舞が突然動き出した千に驚き耳を抑えているが、それを無視しイチイへと迫っていった。


「いや、それはあいつらが勝手に食っているだけでな―」

「黙るんじゃ!よくもコウにこんな扱いができたな!コウ今からでも私の家に来んかそんな草なんぞよりおいしい食べ物があるぞ。」


イチイが弁解しようとするがそんなことお構いなしに、イチイを責め立てちゃっかりコウを自分の家に住ませようとする。


「いやそれは無理だぞ」

「何を言う。今から戸籍を幻条コウとして戸籍登録してしまえば―」

「いや、もう戸籍登録したし、それにコウはここで修業してるんだ。ここからは離れられないだろ」

「なん、じゃと」


イチイに否定され自分の家に住ませるための算段を言おうとするがイチイから予想外な発言を聞きうろたえてしまう。それもそのはずだ。イチイはいつも適当に行動して、周りのことはそんなに興味がない。なのに、コウを自分のところに住ませるために行動をもうしていたのだ。そんな千の様子を耳をふさぎながら見ていた舞はため息をついた。

そんなやり取りを気にせず、コウとシンは袋の中の食べ物を食べていた。




千は、それから悔しそうにしながら帰っていった。


「あれ、舞は帰らないの?」

「今学校はないからね。イチイさんはお婆ちゃんより強いから幻術以外の魔術や近接戦闘の方法を教えてもらおうと思ったの。」

「あぁ、別に構わないぞ。」


コウは聞きなれない単語が気になった。


「学校って何?」

「学校っていうのはね勉強とかする場所のこと」

「へぇ~」


コウは興味なさげに答えた。今のコウは、魔術にしか興味が無いのだ。


「とりあえず、この中から好きな武器を選べ。」


イチイがそういうと地面に木で出来たさまざまな種類の武器を置く。その中には細身の剣、1mほどある槍、かなり重そうな戦槌、マイナーな武器である大鎌などがある。舞はその中から槍を選んで手に持った。


「それでいいのか。」

「これでいいかな。」

「ならそれで一回コウと戦ってみろ。」

「えっ俺」

「分かりました」


コウは自分のことを指さししてイチイに確認するとうなずかれ仕方なく木刀を持ち舞の前へと向かった。


「魔術も使っていいの。」

「いいぞ」


舞が、イチイに魔術の使用許可をもらうと舞は魔力を高め始めて槍を下段に構えた。コウもそれに合わせ身体強化の魔術を発動させ、木刀を前に構えた。


「じゃぁ、始め」


イチイが合図を出すと舞が飛び出し、槍でついてきた。コウはそれをのけぞりながらかわしそのまま蹴り上げる。しかし攻撃は当たらずそのまま一回転する。

コウは、前を向くと舞が二人になっていた。それにコウが驚いていると、二人の舞が同時に攻撃をしてきた。片方の槍をかわし片方の槍を剣ではじいた。そしていったん距離をとるために後ろに下がった。


「流石だね。私たちの奇襲をかわすなんて」


舞はコウを褒めた。だがコウは違和感を覚えていた。なぜならさっき舞の攻撃をはじいた時攻撃があまりにも軽すぎて、まるで木刀を空振りしたかのような感覚だった。なので、コウは攻撃をはじいた方の舞をよく見た。すると魔力が少し違うことに気が付いた。コウは飛び出した。


「なっ!」


 コウが右側の舞を木刀で切り裂いた。その瞬間魔力が霧散し消えていった。それを見ていた舞が驚いている。そしてそのまま勢いに任せ体をひねり木刀を本物の舞へと振るう。それをかろうじて槍で防いだ。


「私の幻術を破るなんて。でもこれならどう。」


 舞はコウの木刀をはじいて自分の槍に魔力を集中させた。そのまま槍でついてきた。コウはそれをはじこうと木刀を振るうが槍に当たったはずなのに空を切る。


「えっ⁉」


 コウは驚き距離をとろうとするが左肩に痛みが走り一瞬体制を崩してしまう。


「っ!」

「これで終わり。」


そういうと槍の先をコウの首に向けた。


「はい、そこまで、舞の勝ちだな。」


舞は、槍を収めた。


「舞、最後のやつ何が起きたの?」

「あれはね、槍を幻術で長さを長く見せたの。それをそのまま当てて攻撃したんだ。」


先ほどの攻撃は、槍に幻術を発生させそれをコウに見せた。じっくり見ることができたのなら幻術は見破られていたが一瞬の事だったのでコウは槍の長さを見間違えはじくことができずそのまま槍の先が左肩に当たって、痛くなったのだ。


「大体舞の強さは分かった。コウは幻術への対処をちゃんと考えろ。」


悔しそうにしているコウにイチイが指導するとコウはその場で考え始めた。そんなことをしていると遠くから見ていたシンがコウたちの方に近づいた。


「で、師匠これから何するんですか。」

「お前たち3人で森の中に入って木の実をとってこい。」


イチイは森の奥にある木の実をとりにいかせようとするが舞は乗り気ではなかった。


「森って聖竜の森のこと?」

「あぁそうだ。」

「聖竜って?」


舞がイチイに森について確認をし、コウが聖竜について聞いた。


「聖竜っていうのはな昔ここに住んでたかなり強い竜だ。」

「へ~」


コウはなんとなく理解したようで、返事をした。


「お前らの足なら行きと帰りの往復で二日だろう。木の実がなっている木のところで休んでから戻ってこい。あと最低限の武器とかは持ってないといざというときになにもできないからな。じゃがんばれよ。」


そういうとイチイは家の中へと戻っていった。コウたち三人はそれぞれ武器を持ち聖竜の森へと入っていった。


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