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妖華の竜王  作者: MTU
第一章 始まり
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第三話 魔術

 少し日が昇り始めた頃コウは、イチイの家にある広い庭にいる。


「それじゃ。今日から修業を始めるぞ」

「はい師匠」

「わ、かった」


 昨日コウは、イチイの弟兼弟子になることになった。あのあと千がいっこうに帰らず、一悶着あったがコウは今イチイの家にいる。今日は朝から修業をするためシンとイチイと共に広い庭へと出たのだ。


「シンお前は自分で修業してろ」

「はい」


 イチイがシンに言うとシンは木の間を縫って奥の森へと駆けて行った。


「シ、ンは、やらな、いの?」

「ん?シンはな、魔術の本を読むだけで出来ちまうからあんまり教える必要がないんだ」


 シンは元から持っている魔力が異常に高く、何となくやるだけで大体の魔術ができてしまう天才なのだ。


「コウ、最初はこの世のことを教えるぞ」


 この世は4つの世界がある。一つはコウが入院していた病院がある世界、“現界“という。”現界“は人間が暮らしており、文明が最も繁栄している。

 二つ目の世界はコウたちが今いる”裏世界“。”裏世界“は竜や妖、鬼といった3種類の異形が住んでいる。自然が多く、文明はあまり発展していない。

 三つ目は”神界“ここには、神が住んでいる。誰も入ったことが無いと伝えられておりその世界はどのようになっているのか分からない。

 四つ目は”邪界“その世界には邪者が住んでいる。邪者は実態を持たないため他の異形や人間を乗っ取り自分のものにし実態を得る。

 基本的には四つの世界には隔たりがあり移動するのは難しい。だが、たまに移動するためのポータルと呼ばれる光る球がありそれに触れると移動できる。ポータルは一定以上魔力を流さないと使えなくなってしまうため主要箇所には、ポータルを囲むように部屋を作りその部屋に魔力を充満させなければ使い物にならなくなってしまう。


「この世のことについてはこんなもんだ。理解できたか?」

「わか、た」

「なら次は俺たちが戦っている敵についてだな」


 4つの世界の行き来は、普通はたまにするだけであり異形や人は基本的には交流が少なかった。だが1000年ほど前、突然、邪者が他の異形や人を根絶やしにしようと邪界から他の世界へ攻め込んでいったのだ。そこから邪者と対立した。

神は攻め込まれたがもろともせず返り討ちにしたが他の異形たちや人間は邪者と戦いに苦戦した。そこで人間たちは異形たちと協力しようとした。神以外の異形は人間と協力した。神は邪者との争いは基本的に傍観している。


「よし、次からは戦う方法について教えるぞ。人間は元から持っている魔力は基本的に低く弱い、そこで2つほど戦う方法を編み出した。まず異形たちと契約を交わして戦うことだ。異形を呼び出して戦わせたり上位の異形だと武器にして戦うこともできる。まぁ年齢的にまだ契約はできないからもう一つの方法だ。こっからがお前がいまからやることだな。ちょっと見てろ」


 コウは、イチイから不思議な気配が漂ってくるのを感じる。この不思議な気配が魔力だ。イチイは手を前に出すとそこに魔力が集中した。そしてそこに、魔術陣が浮かんできた。そこから風が吹き荒れたその風の衝撃で目の前にあった木が折れた。


「これが魔術だ。魔術には何種類かあるが今からは攻撃用魔術を教えるからな。」


 魔術というのは、術式と呼ばれる記号のようなものを魔術陣に刻み発動する。


「よしなら覚えるか。その前に喉がつぶれたままだと喋りづらいだろ、直してやる。」

そういうとイチイはコウの首に手を当て魔力を込めた。

「どうだ。多分もう治っただろ。」

「あ、あ。喋っても喉が痛くない。」

「そうだろ」


 コウは普通にしゃべることができるようになった。イチイが行ったのは治癒魔術だ。コウの喉は、拾われた時からつぶれていて声を出すことができなかったのだ。


「ありがとう。イチイさん」

「俺のことは師匠と呼べ」

「分かった師匠」

「じゃあ、始めるか」


 そこからコウは術式を覚え始めた。術式は一つでも使うことができるが基本の物を何個か覚えたらあとは自分で改良したり、組み合わせたりして使うのだ。

 そう聞いたコウは、自分で少し術式を改良してみた。そうしているうちにコウは、ふと疑問に思ったことがあった。


「師匠、べつに術式を魔力を使って出さずに頭の中で考えて使えばいいんじゃないんですか?」

「あぁ、そっちで使う魔術は基本的に自分にかけるような補助系の魔術だから攻撃系の魔術では不可能だ。できるとしたらそれは魔術じゃない魔法だ」

「まほう?」


 魔法というのは、ただ念じるだけでその事象を起こすことができる力だ。魔法は、人間には使うことができず、上位の異形のみ使うことができる。


「この魔術を使ってみろ」


 お昼ごろになるとイチイがコウに一枚の紙を渡した。その紙には術式が書いてあり、コウはその紙を見ながらゆっくりと魔力を込めて術式を作ってく。そして魔術陣が完成した。


―風の囁き―

 

 術式から風が出始めた。イチイが見せた魔術の風よりもかなり弱い風だった。


「師匠!風が出ました」


 コウにとってこれが初めて使った魔術なので嬉しくてはしゃいでしまう。


「コウその状態にさらに術式を加えて威力を上げてみろ」


 イチイにそう言われたので、コウはさっき改良した威力上昇の術式を加え、さらに魔力を込めた。


―暴風の叫び―


 すると、暴風が激しい音を立てコウを中心に巻き起こり周りに広がっていった。風がやむと、周りに生えていた木や草たちが散乱していた。


「コウ、お前何をしたんだ?」


 イチイが驚いた表情で聞いてくる。


「自分で改良した威力上昇の術式を魔法陣に組み込んでさらに、魔力を込めました。」

「この短時間で自分で術式を作ったのか?」

「はい」


 そう答えると再びイチイは額に手を当て驚いた。今日初めて魔術を使った子供が自分で術式を改良したのだ。コウは間違いなくシンとはまた別な意味で天才だ。コウはイチイの下に行こうとするが、急に眩暈がして倒れて動けなくなってしまった。


「あれ?」

「お前、魔力全部使っただろ。ただの魔力欠乏だ。まぁ数時間で治るだろ。今日の修行はここまでだ。」


 コウは、魔力を使いすぎてしまい魔力欠乏を起こしたのだ。魔力欠乏とは、魔力を使いすぎた時に怠惰感に襲われ動けなくなることだ。ひどい場合には数日寝てしまうこともある。コウは、イチイに背負われ家へと戻っていく。軽いものだったので数分したら動けるようになった。

 そして家に戻ってから3時間後シンが戻ってきた。


「師匠、お昼ごろの轟音がしたんですけど何があったんですか?」


 イチイはコウが家にこれから住むことになるため家の隣に新しい部屋を作っている。今は魔術で風を起こし木を運んでいる。


「あれはコウの魔術だ」

「え!コウがやったの?」

「うん、俺がやった。」


 シンがコウの方を向いて聞く。


「あ!コウ喋れるようになったんだ」

「うん。師匠が治してくれたから」


 コウは今日のことをシンに話した。


「シンは何やってたの?」

「ん?僕、僕は森に行って遊んでた」


 シンは森で遊んでいた。遊ぶとはいっても魔術を使ったり木刀を振ったりしていたのだ。


「おいお前ら話してないでこっちを手伝え」

『は~い』


 コウたちはイチイの下に行き木を運ぶのを手伝った。



 次の日朝早く起きたコウは、先に起きていたイチイに魔術を教えてもらおうとした。イチイと共に庭へと出る。


「なら昨日使った魔術をもう一度使ってみろ。」


 コウは魔力で術式を作ろうとしたが作ることができなかった。


「師匠、魔力が出ません」

「魔力が出ないのか?おかしいな一日たてばさすがに魔力は回復するはずなんだが…まぁいい、なら剣を教える。がその前にシンを起こしてきてくれないか。起きなかったら部屋の隅に水が入ったバケツがあるからそれをぶっかけろ」


 そう言われコウはそんなことしていいのかと思いながら家の中へと戻り、シンが寝ている部屋へと向かう。シンはまだ布団の中で寝ていた。


「シン起きろ。」

「ん~」


 コウはシンをゆすり起こそうとするが、シンはいっこうに起きる気配がない。なので、イチイに言われた通り部屋の隅にあったバケツを持ちシンに向かって中の水をシンへと勢いよくかけた。


「うわ⁉冷た!」


 シンは布団から飛び起きた。そしてコウの方を恨めしそうににらむ。


「何するんだ。コウ!」

「ごめん。でも師匠にやれって言われたから」

「ししょお~!」


 するとシンは、すぐに外へ出て行った。それについていきコウも外に出るとシンが木刀を二本持ったイチイに向かって文句を言っていた。だがイチイはそんなことを気にした様子もなかった。


「コウそんなところで突っ立てないで早くこっちに来い。」

「無視しないでください!」


 コウは走ってイチイの下に向かった。


「これを使って俺に攻撃してこい」


 イチイはコウに木刀を一本渡した。


「俺、剣なんて使ったことないですけど」

「まあ、とりあえず振ったりして攻撃してこい」

「分かりました」


 コウは、剣を何となく構えると攻撃をする。


「初めてならこんなもんだね。」


 シンはいつの間にか怒りを収め、コウたちのことを近くで眺めていた。コウの攻撃は傍から見ると小学生のチャンバラごっこにしか見えない。イチイもそのコウの攻撃をいともたやすくかわしていく。数十秒すると段々とコウの剣速が上がっていき鋭くなっていくのにシンとイチイが気付き驚いた。


「すごい。どんどん剣速が上がっていく」


 コウはシンに言われると自分でも剣速が上がっているのに気が付いた。そして木刀がだんだん手になじんでいく。そしてコウは感覚的に後ろに飛び退き、木刀を腰のあたりに構える。


「月華」


 コウがそう呟くと木刀を横に今までにないほどの速度で三日月のような弧を描き振るう。イチイは、直観的に危険だと感じコウが木刀を振るう直前に後ろに飛び退いてかわした。


「すごい!コウ、今のやつどうやったの!」


 シンが興奮しながらコウの下へと向かっていた。イチイはなにか考え込んでいた。


「分からいけど何となくできると思ったらできた」

「それでもすごい」

「いや、まさかな」


 イチイは考えるのをやめてコウたちの方へ向かった。コウが今使った剣技をイチイは何度か見たことがあった。この剣技を使う人物は何人かいるが全て同じ家系の者だ。その剣技は、その家の者にしか伝えられない。なので、知っているはずがないのだ。これ以上考えても埒が明かないので考えるのをやめる。


「今のはよかったぞコウ。」

「ありがとうございます師匠。」


 コウはイチイに褒められ嬉しかった。


「今日は素振り5000回やったら今日はおしまいだ。」


 そう言われ、コウはシンと共に素振りを始めた。素振りをし終わったらコウたちはまた部屋づくりを手伝った。それが終わるころにはもうあたりが暗くなりその日は、布団に入り眠りについた。

 次の日起きるとイチイから話があると呼ばれたコウとシンはイチイのいる部屋へと向かった。


「ちょっと俺はこれからでかけてくる数日したら戻るから食事とかは二人で何とかしとけ。それじゃあな」

『え?』


 コウたちが驚いているのを無視してイチイは部屋から出ていきどこかへ行ってしまった。それからコウたちは二人ですごすことになった。


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