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第三話

王立魔導学園。


15歳になる魔術師見習いの少年少女が集い、3年間共に学ぶ場所。魔道を究めるための入口としての役割を果たし、彼らを正しい道へ導くための施設。


入口とはいえ、そこで扱われる学問は多岐に渡り、王国中、果ては世界中から集まる知識は、他では得られないものも多い。


ただし、誰でも入学できるわけではなく、学園の入学試験を突破し、入学金を納められた者のみ、入学を許可される。


入学試験は、筆記試験と実技試験が行われ、筆記試験の首席が入学式での代表挨拶をする。


そんな入学生代表として、エミリアが壇上に立っていた。


そのようには見えなかったが、元々優れた素質は持っていたということか。


40人を1組として10組、総勢400人の新入生。仮に同じだけの保護者が来ていると仮定して400人。教師や学園関係者が数十人。


入学式が行われているこの大きな建物には1000人近い人がいる計算だが、吸血鬼であるアシュレイの目には、一体どう写っているのだろう。


「━━わたしたちは、この学園で深く魔術を学び、より良い人間社会を実現する魔術師となることをここに誓います!」


そんなお決まりの文句で挨拶は締め括られた。


世界は魔素で出来ている。


魔術師は魔力によって魔素を操り、人々の生活に役立つ術を行使する。


魔道とは概ねそういったことの研究を指す。

まだまだ未知の部分も多いが、いずれは世界の仕組みも全て解き明かされることだろう。


その後、学園長の挨拶が行われ、入学式は終了した。


入学式の後は各々割り振られた教室で今後の予定などの話をされ、保護者と共に入寮手続きをして解散となる。


入学式に保護者同伴とされるのは、入学生の身元保証のためと、全寮制の学園で3年間親元を離れて暮らすことへの配慮だろう。


「いつでも、という訳にはいかないだろうが、帰りたくなったら帰ってこい」


「簡単には帰れないけどね」


レイさんなりに気遣ってくれているのだろうが、僕たちの住んでいた場所は王都からは大分離れている。簡単には帰れない。


「ここはなかなか面白いものが集まっているようだ。楽しくて帰りたくなくなるかもな」


「面白いだけで済めばいいけれど」


現に、吸血鬼、それも女王などという厄介な存在が入り込んでいる。


「まあ、心配はいらないだろうが、元気でな」


「うん。ありがとう」


今生の別れでもないので、別れの挨拶はあっさり終わる。


寮に入ると、そこではすでにグループが出来はじめているようだった。


今のところ話しかける相手もいないので、自分の部屋に真っ直ぐ向かう。


入学生の男女比は半々。

男女で別れた寮で、さらに4人部屋に振り分けられる。

教室の組分けは関係ないようで、僕の入る404号室の名簿には初めて見る名前が書かれていた。


6階建ての寮は全部で6棟。男女学年別に別れる。

その中の1年男子棟4階の中程の部屋が404号室だ。


念のため、ノックをして部屋に入る。


特に変わった物はないがそれなりの広さのある部屋だ。


家具は備え付け。

入って前面は窓。

左手の壁際に二段ベッドが二つ。

部屋の中央に椅子と机が人数分。

右手の壁は一面収納棚。


「やあ。はじめまして。そんなところに立ってないでこっちに来なよ」


中央の椅子に腰掛け、本を読んでいた一人がこちらに気付き、入室をうながす。


一見他に人はいないように見えるが。

入口ドアの裏に一人。もう一人は天井に張り付くようにして。なかなか上手く隠れている。


一人が囮役となり、注意を引き付ける。

油断して入ってきたところを背後と頭上から現れ、驚かす、という作戦か。だが、僕を驚かせたいなら魔力も隠すべきだった。


人を驚かせようとするなら、自分が驚かされても文句は言わないだろう。


無警戒のふりをして部屋の中央に向かう。


いたずらを仕掛けるならきっと今だ。二人が動く前に、魔力を操作する。


「うわっ!」


驚きの声とともに天井から落下してきた男子生徒が床に背中を打ち付ける。


背後から迫って来た男子生徒は、不自然に足をもつれさせ受け身もとれずに転がっていた。


「はじめまして。二人とも大丈夫?」


我ながら白々しいと思う。

僕は、方や赤色、方や青色という派手な髪色の二人に向かって声をかけた。


「ちくしょう! 二人目までは上手くいったんだけどな。俺はギャラン。よろしくな!」


全身に漲る魔力で身体を強化していたのだろう。痛がる素振りも見せず、天井から落ちてきた赤髪の男子が名乗る。


「はじめに天井から人が降ってきた時は驚いたけどね。ボクはユーリ。よろしくね」


続いて部屋の中央で本を読んでいた男子がはにかみながら名乗る。


「自分も驚かす役がやりたかったのに。あ、テオです。よろしく」


そして、床で倒れたままの青髪の男子も名乗る。


「いや、十分びっくりしたよ。僕はヴィクトール。よろしくね」


ここは、なかなか面白い人が集まっているようだ。

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