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第十四話

「はじめまして! エマ・シュナイダーです」


「イルザ・ハルトマンです」


快活な印象の少女エマ・シュナイダーと、無表情の少女イルザ・ハルトマン。


放課後、リーゼロッテとアレクシスに連れられて訪れた学園の中庭で、二人の少女と対面していた。


「はじめまして。ヴィクトール・シュミットです」


「……シュミット」


「よろしくね」


「よろしくお願いします」


明らかに僕を警戒している様子のイルザと、友好的なエマといった風にまるで正反対な印象。二人とも暗めの茶髪。平均的な背丈。見た目には普通に感じる。あまりにも普通。


「二人には以前、家で私の面倒を見てもらっていました」


と上級生の二人をさしてリーゼロッテは言った。


それは生活面で、だろうか。あるいは他にも。


友達がいないと言うリーゼロッテが誰を連れてくるのか疑問ではあったが、護衛や使用人といった立場の者なら納得がいく。


昨日今日出会ったような人間に、古の女神の研究をしようなどと持ち掛けるのは危険だ。その点、以前から親交がある者なら心配は減る。ある程度思考の共有も出来ているのだろう。


総数はわからないが、同じ学年だけでなく上級生にもリーゼロッテを守る者がいる、と知れただけでも収穫だ。


「リゼにも友達が出来てお姉ちゃんは嬉しいよ」


「どうですか。私にもちゃんとお友達ができましたよ!」


「感慨深い」


彼女たちからは王女と使用人というよりも、仲の良い姉妹といった雰囲気を感じる。


「━━すみませんヴィクトールさん。それで、ええと、どこから説明したら良いものか」


「とりあえず、研究会のメンバーはこの五人ということで決まりですか?」


「はい。ここにいるのは私が本当に信頼出来ると判断した方だけです。研究会の話も他ではしていません」


彼女の身の回りには多数の人がいる。それでも、本当に信頼出来ると思うのがたったこれだけなのか。その中に僕が入っていると思うと笑える。


「わかりました。研究会の会長はリーゼロッテさんですか?」


「いいえ。会長はイルザ姉様にお願いします」


「リゼが入学してくるまでの一年間でこっそり色々準備しておいた。まかせて」


無表情のイルザと目が合う。まったく感情が読み取れない。


「何を研究するにも場所が必要でしょ? 会員がいなくなって活動休止してる研究会とかも結構あってね。良い場所おさえといたから。他にも必要そうな資料とかも集めたよ」


年上という立場を生かして、二人はリーゼロッテよりも一年先に入学し、下準備をしていたのか。普通すぎる立ち振舞いも目立たず行動するためか。


「いつも何から何までありがとうございます」


「いいんだよ。あたしらはリゼのために生きてるんだから」


リーゼロッテのために生きているとはまた大げさな。


「これで私たちの研究会━━勇者研究会を発足する条件は満たしました。私は知りたいのです。創造神様が教えてくださらない古の女神のことを。創造神様の妹君がどうして邪神と呼ばれるようなことをしたのか。勇者様は何故、どの時代においても存在するのに正確な記録が残されていないのか。そして、当代の勇者様がどこへ消えたのか。どうか皆さん、私に力を貸してください」


「もちろん」


「リゼのためなら何なりと」


「私も勇者様の行方は気になります。微力ながら力添えを」


「僕も協力させてください。リーゼロッテさんの友達として」


僕のそばには、全ての歴史を知る女神様がいる。女神様のことを知りたいのなら本人に直接聞けば良い。それでも、当代の勇者については一切不明なのだ。


僕は何としても邪教を殲滅した勇者を探し出さなければならない。そのために、皆には動いてもらおう。


「皆さんありがとうございます!」


僕が勇者を見つける日、それまでは友達として、君の命をあらゆる敵から守るとしよう。


例えそれが、吸血鬼だとしても。

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