プロローグ
ひどくつまらない話です。
魔獣に襲われた村はあっけなく滅びました。それもうなす術がないほどに。
村は全滅。運よく通りかかった冒険者によって魔獣は討伐されたもの、生存者はたった一人。
私――リリネット・バッチを除いて全て死亡が確認されました。
幸運の生存者……と勘違いする人も稀にいるが、多くの人は知っていた。
村を滅ぼすきっかけとなった、死神だったと。
幼かった私は何を思ったのか、好奇心を抑えきれず村はずれにある洞窟へ向かってしまった。
それが魔獣をおびき寄せてしまうきっかけになった、と助けてくださった冒険者に言われたのを覚えている。
なかでも一番に覚えているのは、その人の目でした。
魔獣に向けた眼光。それよりも鋭くて、魔獣に追われていたときよりもひどく怯えました。忘れもしないでしょう。
その後は言うに容易く、苦悩の日々。何をするにもこう思ってしまう。嫌でも考えてしまう。
――あのとき、あんなことをしなければよかった。
私は、幼き頃の私を救ってくれたのもその冒険者。私は彼に一生尽くすことを誓い、共に旅をしました。
――そうではないです。
私は、あの日を繰り返さないよう絶対たる力を身につけるべく冒険者の一歩を踏み出した。
――そうでもないです。
勇敢な冒険譚の裏にある、冒険者を支える冒険者ギルドの受付のお話です。