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力の代償(爆発)

 太陽が昇る中ヒイロを背中に担いで家に帰り、寝床に寝かせる。ギルドが開く時間まで少し待ち、ギルドへと昨日のクエストの報告に向かう。回復中に寝ていたせいか、もしくは神核のお陰か、体にまだ元気はある。


「おはようございます。」


「おはようございます、ロックさん。昨日はどうされたのですか?ゴブリン退治の時は、毎回その日の内にいらっしゃるので、何かあったのかと。」


「ああ、はい。少し手間取りまして・・・。今日は、クエストの報告に来ました。これ、ゴブリンの欠片です。」


「ご無事でなりよりです。確かに五つ受け取りました。では、少々お待ち下さい。」


 そう言うと、マインさんは笑顔を浮かべ事務員専用の部屋に向かう。相変わらず、愛想がよくて癒やされるぜ・・・。そういえば、日頃のお礼も言っとかないとな。もう死ぬ気はないが、いつ会えなくなるかもしれない。


 そんなことを考えていると、後ろから粗暴に声がかけられる。


「何だてめえ、まだ死んでなかったのか。」


 振り向くと、そこには筋骨隆々で柄の悪い男が立っていた。名前をダインという。以前から俺を目の敵にして、大声で罵倒していたやつだ。聞くところによると、前科持ちで以前騎士団にぶちのめされたらしい。そのときに俺の顔も覚えて、俺が騎士団所属だったということをこのギルドに広めたのだろう。


「ああ、危うく死にかけたがな。」


「ケッ、俺がその場に居合わせたらとどめを刺してやったのによ。『鋼』のロックさん?おおっと、もう禄に『鋼』も使えない()()()()だったか。」


「こんな朝から人を煽ってないでクエストを受けたらどうだ。そのなまくらよりもクエスト達成数が少ないんじゃないか?」


「うるせえぞDランが!俺はCランク、しかもてめえみてえな加護なしじゃねぇ。剣の神の加護を持ってるんだぜ、なめた口聞いてると潰すぞ。」


「はい、そこまでですダインさん。ギルド内での私闘は御法度ですよ~。はい、ロックさん、報酬です。」


 ダインが俺に喧嘩を吹っかける直前でさんがマインさんが割って入る。あのまま行くと殴りかかってきそうだったから助かった。貰った力で早速喧嘩はヒイロに悪すぎるしな。


「そんななまくらに構うより、俺と仕事終わりにどうだマイン。」


「このクエストを受けてくれたら考えますよ。」


 そう言って差し出したのはBランク用のクエスト。えーと内容は・・・、廃坑道に巣くう魔物の調査。死亡者行方不明者多数、注意されたし。

 ダインに死ねと言わんばかりのクエストに思わず吹き出す。


「チッ、いずれ受けてやるぜ。その時は覚悟してろよ。」


 そう言うと、ダインは自分のパーティーに戻りクエストを選びに行った。


「ちなみに、このクエストを達成した場合はどうなるんですか?」


 俺がそう聞くと、マインさんは無言でクエストを差し出した。内容は、Aランク用、未踏破ダンジョンの攻略。その難易度からここ何十年も踏破されず、受けるやつは自殺志願者扱いのクエストだ。


(この人を敵に回すのはやめよう・・・)


 ギルドの受付嬢さんは冒険者より強いのではないか?という疑問が頭に浮かんでくるが、聞くと怖そうなのでしまっておくことにしよう。




 報酬を受け取ったので今日の所は家へ帰る。これからについていろいろ話さないといけないしな。ヒイロがえ起きる間で家でのんびりするとしよう。


「帰ったぞー・・・っと」


「おおロック!お帰り!」


 家の扉を開けると、既にヒイロは起きていた。寝る前まではとても苦しそうだったが、起きた後は元気そうでなによりだ。


「もう起きたのか。」


「まあ、寝れば多少はマシになるからな。さっきは、神核を失ったばかりで安定していなかったのだ。本来なら、睡眠など取らなくてもいいのだが、意識を張るのにも神秘を地味に消費するからな。」


「俺は睡眠の必要はあるのか?」


「ベースはあくまで人間だから必要なはずだ。」


「はず?」


「英雄を作るのは初めてでな、勝手が分からん。ただ、ロックはまだ神核の運用ができてないのは分かる。まだまだ無駄が多かったぞ。そこら辺はいずれ直るだろう。・・・ところで、腹減ったぞロック。」


 ・・・神様も飯を食うのか。まあ、騎士団時代の給料で蓄えはある。一応国に属しているから給料は良かったからな。



 ヒイロに料理を食わせながら質問をしていく。俺はあまり腹が減ってないので、後で昼と一緒に食おう。あ、こいつ野菜を脇によけやがった。


「おい、野菜も食え。そんなんじゃ大きくなれないぞ。・・・そういえば、ヒイロ若返ってなかったか?」


 オーガに追われていたときはもう少し年齢が高かったはずだ。14くらいの見た目で、身長ももう少し高かった。それが、俺が起きた時には8歳くらいまで若返っていた。そんな少女を、夜中に背中に抱えて帰ってくる姿を見られた日には、ロリコン疑惑をかけられても仕方が無い。・・・見られてないよな?


「本来は、もっと()()()()な体だったんだが、神秘に余裕がないので省エネモードだ。食事で神秘を少しは吸収できるが、やはり足りない。・・・神核を少しでも食べれば、少し体を大きくできるはずだ。」


 グラマー、ねえ。今は完全にちんちくりんといった様子だが。


「変なこと考えてると殺すぞ。神の矜持とは話が別だ。」


「オーケー分かった銃を出すな。もう考えない。あと野菜も食え。」


「そう言えば、ロックはなぜ森にいたのだ?」


 あからさまに話を逸らしに来てるが、ヒイロは冒険者を知らないのか?神様だったら少なくとも500年は生きているはずなんだが…


「冒険者として、クエストを受けてゴブリンを狩ってたんだ。そういうヒイロは?」


「知らん。目覚めたらあの森にいた。…冒険者とは?」


「簡単に言うと、困ってる人が出したクエストを受けて報酬を受け取ったり、ダンジョンを攻略したりする職業だ。冒険者ギルドっていうところで登録すると、割と誰にでもなれる。」


「困っている人を…助ける…?」


 その言葉と共にヒイロは目を輝かせる。天職を見つけたかのように嬉しそうだ。まあ、人を救うと助けるとは似たようなものだし、ある意味理想の職業と言っても過言ではないだろう。


「ああそうだ。だが危険も伴う。戦えるようになるまで大人しく待ってるといい。ついでに、目標である神核を手に入れる機会があるのは相当上位の冒険者にならないとダメなんだ。」


「むむむ…クエストに同行してはダメなのか?」


「まあ、お前に貰った力で多少はどうにかなると思うが、上位…Aランクにいくとなると厳しいかもな。」


 そこまで言うと、ヒイロは食べ終わって食器を置く。最後めっちゃ嫌そうに野菜食ってたが。


「いや、そうではなくて。我から離れたところで与えた力が暴走すると…」


「暴走すると?」


 そこまで聞くとヒイロは目を伏せる。まるで言いにくいことがあるかのように。


(いかん、嫌な予感がする。)


「お、おい、はっきり言ってくれよ。気になるだろ。」


「えーと、爆裂、しちゃうかな…。神核は英雄の種火ではあるが、その分管理が難しいのだ。最初の内は、近くに神様がいて出力を調節しないと、体内からボンッといくらしい。」


「ボンッじゃねぇよ!」


 じゃあ、あのときダインの挑発に乗っていたらもしかして、あの場で爆発していたのか…!周囲の人にとってはトラウマになるってレベルじゃないぞオイ。


「じゃ、じゃあ、あの時断ってたらどうなってたんだ?」


「断らないと思っていたさ。我は神だぞ、見る目は確かだ。・・・まあ、最悪力を封じる気でいた。その成否は分からんが。」


 やはり、相当危ない橋を渡っていたらしい。出会ったばかりの男に命を預けるとは、覚悟の度合いが尋常じゃない。


(確かに、あんだけ強力な力だ。多少のデメリットがあるのは分かっていたが、まさか直接命に関わるレベルとは。まあ、後遺症が出てくるよりマシか。)


「分かった。ひとまず、冒険者パーティーを組もう。そうすれば同じクエストを受けられるし、近くにいても問題はない。都合良く俺は今一人だしな。」


「おお!」


「その代わり、だ。後先を考えずに行動するのはやめてくれ。さっきまでの話によるとお前が死ねば俺も死ぬんだ。・・・俺は、道半ばで死ぬ気は無いからな。回復して多くの人を救うんだろ?」


 まあ、助けに入って死にかけた俺が言えた話じゃないが。この調子でいったら、俺も巻き添えになって死んでしまう。


「分かってるぞ。心配せずとも、もうアレは使えない。神と英雄とは、見えないところで色々と複雑な回路がつながっているのだ。二人以上維持するのは大分厳しい。それに、そうならない為にロックに頼んだのだ。」


「・・・期待に添える様頑張るぜ。」


 そう言うとヒイロは笑って立ち上がる。うまく乗せられた気がするが、ヒイロの言うとおりだ。俺が守ればいい話だ。一瞬、体が吹っ飛ぶ様が目に浮かんだが、いやな想像だ。現実にならないよう努力しよう。


「では、冒険者ギルドとやらに行くぞー!」


 ん?見た目8歳の少女と二人でパーティー?これもしかしなくてもロリコン疑惑かかるんじゃないか?

ロック「何で子供扱いされるとキレるんだ?」

ヒイロ「色々あるのだ、色々な。というか我子供じゃないぞ、女神だぞ。」

ロック(じゃあ野菜くらい食えよ…)


拙文にお付き合いいただきありがとうございます。次話は明日12時投稿予定です。

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