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冒険者へ

話があまりにも動かないので次話投稿しました。

 さて、この世界には冒険者という職業がある。この職業について述べるとするならば、それは()()()()()という一点に尽きる。まあ、犯罪行為はもちろん駄目だが。

 冒険者は、魔物を狩って素材を剥ぎ取ってもいいし、危険地帯へ行って素材を採取してもいい。冒険者ギルドに張られるクエストを受注し、人助けに奔走してもいい。


 そして自由以外に冒険者の特性を挙げるとすると、それは『神様の加護』を貰えるということだ。何でも、かつて死んだ神様はその意思だけが失われ、その核となる『神核』が世界に散らばったらしい。

 で、国や教会、また現存する神様から、『神核の探索、確保』の名目で加護を得られるという訳だ。…それを悪用する奴らもいるみたいだが、そこら辺は騎士団が叩き潰すから問題はない。


 ここで重要なのが、その加護を授けてくださる神様の力だ。冒険者登録の際、より高位で、より大きな権能をもつ神様の加護を引ければその後は安泰。その後の華々しい冒険者生活が保障されるようなものだ。


 そう、5年にわたる騎士団生活で俺に戦いの才能、ひいては体に秘める神秘の量の少なさは証明済み。となれば、()()()()()()()()()しかあるまい!


(すべては、今日、この瞬間にかかっている…!)


いざ、ギルドへ入り受付へ。受付嬢さんの元へ行き、冒険者登録を願い出る。


「こんにちは。冒険者登録をしたいのですが。」


「はい。承りました。」


 諸々の手続きを済ませ、加護を選別する作業へと入る。大人げも無く心が弾む。自身の無力に打ちのめされたばかりでポジティブかと思うかもしれないが、大事なのは今である。


「では、この水晶に手をかざして下さい。教会での信仰歴もないようなので、あなたに相性のいい神様のご加護が現れるはずです。」


(頼むぞ…!属性を司る神様、武器を司る神様でもいい!戦闘系の神様のご加護を…)


 心中でそう願いつつ、差し出された水晶に手を添える。すると、水晶が光り輝く。光るということは何かしらあるということだ。期待を胸に受付嬢さんに質問する。


「どうですか?」


「・・・少々お待ち下さい、時間がかかっている様ですね。今、どれかの神様を表す文字が現れるはずですから。」


 これは待ち時間の様なものなのか。早く明らかにならないものか。


 2分ほど水晶が輝き続け、その光が収まる。今度こそいいだろう。そろそろこの無言の時間も辛くなってきたところだ。


「・・・どうですか?」


「あー、これは・・・」


 水晶玉を見ている受付嬢さんの顔が、これでもかというほど渋い表情になっている。この顔は、何か悪い結果が出て、それをどうオブラートに包むのか悩んでいるのだろう。俺のためにすごい考えてくれてることが、申し訳ないが顔から分かる。


「えーと・・・受けられる加護が、ありませんね・・・。」


「はい?」


「極々稀にいらっしゃるんですけど、とてつもなく不運というか、適する神様がいない人がいるんですよ。」


「・・・」


「ま、まあ、冒険者生活、加護がすべてという訳ではないので・・・。」


「アッ、ハイ。アリガトウゴザイマス。」


「ま、まずはDランクからのスタートとなります。ご、ご武運をお祈りしております!」


 どうやら、俺がいたたまれなくなったらしい。受付嬢さんの励ましの言葉が逆に辛いぜ・・・そうか、俺に適する神様はいないのか・・・


 ギルドから出て、トボトボと家へ向かう。とりあえず、家で身の振り方を考えよう。案外、加護なしでも冒険者やってけるかもしれないし。


(はあ、俺、なんでこんなことやってんだろうな。)





―――夢を、見ている。いや、遠い昔のことを、思い出しているだけかもしれない。


 一人の少年が泣いている。

 暗い森の中を、独りで泣きながら歩いている。

 理由は、幼いながらの反抗心か、はたまた街を出て道に迷ったか。

 何にせよ些細な理由で、少年は夜の森を歩いていた。


 夜で森の中ともなれば、当然危険である。

 夜は人間を襲う絶好の好機。

 腹を空かせた魔物が、わざわざ声で居場所を知らせる餌を見過ごす筈がない。


 ふと、少年は歩みを止め、気付く。

 周囲は既に魔物に囲まれ、自分の命は危機にさらされていると。

 気付いた時にはもう遅い。

 魔物は、止まった獲物を仕留めようと飛びかかる。


 瞬間、少年の目の前に炎が舞い降りる。

 その炎は少年を守るように剣を振るい、魔物を倒していく。


 不思議と、熱くはない。

 夜闇に煌めく炎は、神々しい美しさを感じさせる。


 少年が息をのんでいる内に、魔物は次々と塵と化す。


 炎の勢いが弱まり、下に鎧が微かに見える。その鎧には無数の傷が刻まれていて、肩が大きく上下していた。恐らく、このすぐ直前に戦いを終わらせてきたのだろう。


 こんなに強いのに、この人は人間なんだと少年は思った。自分と同じように呼吸し、鎧をまとってその体を守る必要がある、ただの人間。



 すべての魔物を殲滅すると、その男は少年に背を向け、去ろうとする。


「あ、あの!」


 少年は、意を決して声を発する。

 自分を庇護する圧倒的な力。恐怖を拭い去り、少年を死の危険から救った力。闇の中に煌めくその炎は、、少年に憧れを抱かせるには十分過ぎるものだった。


「どうしたら、あなたみたいになれますか?」


 男は、少年に背を向けたまま応える。


「君は、私の様になってはいけない。」


「―――君は、誰かを守れる人になれ。」







「――ックさん。ロックさん!」


「!?」


 肩を揺さぶられ、起こされる。顔を上げると、あの受付嬢さん・・・マインさんの顔が見える。


「もうここを閉めますので、あとは家で寝て下さい。」


「…すいません。」


 どうやら、酒を呑んでいる内に寝てしまったらしい。

 ぼやけた頭でギルドから出て、帰路につく。


 騎士団をクビになってから2ヶ月。加護なしとはいえまだ微かに錬金闘法は扱えるのが幸いして、なんとか冒険者生活を続けられている。

 もう少しでランクもDランクからCランクになれそうだ。DからCへの昇格は達成した依頼数が条件だから誰でもなれるが。


 それでもここ2ヶ月は自身の才能の無さを嘆き、日々を無為に暮らしている。

 どうりで昔の夢も見る訳だ。ずっと、忘れていた夢だ。

 酒のせいで寝起きも最悪、昔を思い出して気分も最悪である。


 ボーッとした頭で家に向かい、真っ直ぐ床に就く。

 こんな日は、寝てしまうに限る…が、さっきまで寝ていたからか寝付けない。


 あの、遠い昔の夢のような記憶。

 いや、真に夢だったのかもしれない。

 何回も夢に見ていたせいか、それすらも危うい。


 それでも、俺を動かす理由にはなった。

 必死の思いで騎士団へと入団し、誰かを守れるかと思った。あの日、闇から俺を救ったあの男のようになれるかと思った。


 誰よりも努力し、任務も多くこなした。

 この5年の結果は、芳しいものではなかったが。最後の神頼みも神に届かず、残されたのは無力なこの現実のみ。

 ・・・それでも、思い出せたことは、意味あることかもしれない。


「明日は、魔物討伐の依頼でもとるか。」


???「現状お前ただのクズだぞ。」

ロック「待って、あと少しで話動くから待って!」


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