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冒険の終わりと始まり

 ヴリトラはアジ・ダハーカと争いながら空に消え、駆けつけて来てくれた仲間たちも、深追いをせずに後退した。よくあんな遠くにまで来てくれたものだと――いや、来させてくれたと、ハイランドの墓標に花を手向けた。墓標には、伝説のハイエルフと記されている。

 あの戦いが終わり、各々が再び開いた歪みの先に消えた後、ニオは冷たくなって発見された。残されていた僅かな寿命で、あれだけのスキルを使ったのだ。きっと、覚悟していただろう。

「全員は呼べなかったし、死んだことも伏せておくよ。だから安らかに眠ってくれ」

 礼二とステラとウルビス。その三人に見送られて、ニオの五千年にもわたる生涯は幕を閉じた。

「それで、これからどうする?」

 魔王は死に、魔物を操る者はいなくなった。冒険者稼業も廃れるかと心配したが、ウルビスが仕入れた情報では、濃霧が晴れたことで、果てしない大地が新たに広がったらしい。これから冒険者たちは、その名の通り未開の地を冒険し、いつかは国を造り、街を造り、人が住む。

 それに、魔王軍の幹部で、見つかっていない者もいる。結局は剣や斧で戦う時代は続くが、どの道を選ぶのかは、個人の自由だ。

「俺は、狼耳族の禁忌を破って他種族とパーティーを組んだからな。里には帰れない。だから、シエルと新たな地へ冒険に出るつもりだ」

「私は、一旦里に帰ります。族長になるかは分かりませんが、一つの節目として、休暇でも取ろうかと」

 それで、礼二はどうすると二人は聞いた。ウルビスについて行って新たな地の開拓に携わるのもよし、ステラと里へ行き、のんびりと過ごすのも悪くない。だが、礼二はハイランドに残ることにした。

「まだこの世界について知らないことだらけだからな。適当にパーティーを組みながら、魔物の残党退治でもするよ」

 そうなると、このパーティーは解散になる。三人は顔を合わせると、微笑んだ。

「また、いつか、どこかで」

 かくして、礼二は成すべきことを成した。これから先に広がるのは、運命などに定められていない、未知の未来だ。

「ギルドへ行くか」

 墓地を後にして、ギルドへと向かう。新しいパーティーメンバーを探して。


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