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○○の君2
2回目投稿しました。見てくださっている人いるのでしょうか?見てくださったら、嬉しいです。
今から語ることは全て過去。もう届かない物語。
「アイオライトー!どこにいるのー?出てきなさーい!」
シスターが私を呼んでいる。それも大きな声で。わかってる。わざわざ探してくれているのは。でも私は出ていかない。もうこんなとこ、戻らないって決めたんだから。目の前をぷーんと音をたてて、蚊が飛んでいく。その軌跡を目で追う。釣られるようにして、ふいっと隠れていた木の根っこから、周りを見渡した。薄い雲が浮かぶぽっかりとした空。ざわざわとおしゃべりする風。枯れかけた枝や青々した葉っぱを揺らす木たち。
(つまらないもの。こんな世界。)
ずっうぅーと同じ景色、匂い、人。忙しくって、誰もが私との約束を覚えていない。他の子には構うのに、私には皆かまわない。
(困ってしまえばいいんだ、皆みんな)
生まれ育った寺院に背を向けた、その時。
「可愛らしいお嬢さん、どこに行くんかい?」
一人の男の人に声をかけられたのは。