好きでいていいですか?
私だって恋をする。
いくら不釣り合いって言われても。
どんなに似合わなって言われても。
私だって恋をする。
身長百五十八センチ。体重……六十◯キロ。
いわゆるな体型の私。
佐伯真奈実、十八歳。高校三年生。受験を控えています。夢はガラス工芸作家。
平凡な家庭に育ち、豊かなのは体型だけ。顔も丸顔の平均より下気味。
取り柄はない。
対する片想いの相手、五十嵐十夜君。
スポーツ万能。身長百八十センチ、体重不明。けど痩せても太ってもいない。
容姿は、私はカッコイイって言ってるけど、友達は普通だって……。
けど、私には似合わない。もっと現実を見ろと指摘する人達はいる訳で……。
そんなに悪い事なのかな?片想いするの。
そんなにダメなの?人を好きになるのって。
「真奈実。またフラれた? 今日で何回目よ。イイ加減諦めなって」
「うー。今日で五回目です。でも諦められない……」
五十嵐君に告白する事五回。そのたんびに玉砕している……。
人に言われる前に本人に相手にされていないという、悲しい現実。
「でも真奈実のそのしぶとさ、向かって行く潔さ、諦めないしつこさ。そこは賞賛に値するよ」
「未羽ちゃんヒドイ」
「褒めたのに、ヒドイなんて」
「褒めてない」
「まあ、さ。男は五十嵐一人じゃないって事よ。あんたでもいいって言ってくれる人、絶対いるって」
「未羽ちゃんの鬼!」
「あらら。怒らないの。ほら、ポッキーあるよ?」
「うー。手なづけられてるぅー」
私は未羽ちゃんの前の席に座り、ポッキーを一本頂いた。
五十嵐君に告白する為、昼休みを十分に取れなかった。
と言うか、お弁当など食べていられなかった。
緊張して、それ所ではなかったのだ。
いくら五回目とはいえ、やっぱり緊張するし、震えたりもする。
いつもの?人があまり通らない渡り廊下に五十嵐君を呼び、好きです。付き合って下さい。と言う。
ただ、「好きです」なんかじゃ物足りない。
彼女になりたい。
けど答えは決まって「興味ない」
私が嫌だとか、体型がどうのとか言わない五十嵐君は優しいと思う。
でも、興味持って欲しいな。
ポッキーをもう一本食べながら考える。
やっぱり痩せるべきだろうと……。
「未羽ちゃん、やっぱり痩せてる子の方がいいよね?」
「んー。人それぞれだと思うけど? ほら、何とか専っているじゃん」
「五十嵐君に釣り合う様になりたい……」
「五十嵐の好みは痩せてる子なの?」
「恐らく………」
「じゃぁダイエットだね。でも無理して合わせる必要ないと思うんだけどなぁ。あんたの一途さ、可愛いよ? 要は中身も大事なんじゃないかな?」
「五十嵐君に興味持たれたいもん」
「じゃぁ自分を磨くとか?」
「磨いてキレイになるかな?」
「努力あるのみ。さて、次は美術だよ? あんたの得意科目じゃん」
次の授業の準備をして、私達は教室を出た。
好きな美術も身が入らないかも。
やっぱりしつこいかな?私。五十嵐君も迷惑だよね……。
受験もあるし、クリスマスに告白して諦めようか。
廊下の窓の外に目を向ける。
校庭でサッカーをしている五十嵐君が目に入った。
やっぱりカッコイイ……。
そんな五十嵐君を見て、ふと視線を移すと、私と同じ様に五十嵐君を見ている女子が目に入った。
五十嵐君と同じクラスの吉井さん。ジャージ姿でも可愛いな。
彼女も五十嵐君が好きだと言う。
やっぱり可愛い子の方がいいんですか?
コンプレックスの塊の私は足早に美術室に向かった。