うん! ヒヨコ、かぁわいいー!
第3話!Find から飛び出しました!
さてさて、ここまではFind をお読みくださっている方はご存知ですが、次からは真面目に考えないと…
「あんり、私を、」
「あたしを、」
「ひかりって、」
「みゆうって、」
「呼んでください!」
「……えっとぉ……」
あれれ? 私たち、何か変なこと言ったかな? あんり、なんだか困っちゃってますです!
「い、嫌だったら、ごめん! いや、ごめんなさいです! いきなり勝手に呼び捨てしたりもして、ごめんなさいです!」
「ち、違うのよ! なんて言うか、その……嬉しくて」
「あんり……可愛い……」
「み、みゆうさん……私は可愛くなんか……」
「あんり……“さん”は、ダメ」
「はっ……! ご、ごめんなさい」
「謝るのも……なんか違う……」
「うっ……難しいわね……」
そっか。あんり、嬉しかったんだ。
「あーんーり!」
「えっ、なに? ひかりさん……あっ……」
「もう、あんりはまた、“さん”ってー」
あんりは両手を口で抑えて、不満そうに、もにょもにょ動かしています。なんだか、アルパカさんっぽいです!
「よーし! じゃあ、あんりと、もーっと仲良くなって、あんりが自然に私達のことを呼び捨てで呼べるように、今から三人で、遊びに行きたいと思いまーす!」
「いっ、今から?」
「だめ?」
「いえ、そういうわけでは……」
「ひかりが突然過ぎて、あんりがびっくりしただけ」
「てへへー、ごめんごめん。私はいつもこんな感じだから」
「いつもは、もっと酷い」
「み、みゆう!」
「で、何して遊ぶの?」
「うーん、ここはやっぱ、あんりに合わせるところだよね。あんり、いつも何して遊んでるの?」
「わ、私?」
「うん、いつも友達と何して遊んでるの?」
あんりは大人っぽいからな、きっとショッピングとかおしゃれなカフェ巡りとかかな。
「えーっと、そ、それより二人はいつも何して遊んでるのかしら?」
「ん? 私たち? そうだなあ、この前は映画見に行って、その前は公園でバドミントンして、そのまた前は水族館に行ったかなー。あっ、でもよく行くのは、動物園!」
「動物園?」
「うん! みゆうと動物園へ行くと面白いんだよ! 動物たちがみゆうの方に集まってくるの!」
「昔から、動物になぜか好かれる」
「いるいる、そういう人。だから、みゆうと行くと動物たちがバッチリ見られるし、触れ合いコーナーなんて最高だよ!」
「じゃあ、動物園に行きましょう!」
「いいの?」
「ええ」
「やったー! そうと決まったら、動物園へレッツゴー!」
……と、いうわけでやって来ました! 動物園!
ライオンさん、キリンさん、カピバラさん、ペンギンさん、おサルさん、ゾウさん、クジャクさん、シロクマさん、トラさん……何でもいらっしゃいます!
「わはぁ! どこいくどこいく?」
「あたしラクダ見たい」
「あっ、私も見たい! 行こう、あんり!」
「えっ、ええ」
私たちはそれから、いっぱい、いーっぱい動物を見て回りました。
「ちょっと休憩」
「そうだね……って、もうお昼とっくに過ぎてる! お腹空いたよぉ」
私のお腹が、ぐぅーっと鳴っちゃいました。
「もう、ひかりさんってば」
その時、あんりのお腹も、ぐぅーっと鳴りました。
「あんりだってー」
「も、もう! 笑わない! あ、あそこに食堂があるわ。あそこでお昼にしましょう」
「さんせーい!」
「おひるー」
食堂で、私は親子丼。みゆうはオムライス。あんりは唐揚げ定食を注文しました。
「おいひぃ……」
あんりが唐揚げを頬張りながら感動しています!
「うん、おいしい」
「でしょでしょー」
「何でひかりが得意げなの」
「えへへー」
「正直、動物園の中だと思って、なめてたわ……ここの料理人はとても優秀なのね」
「そうだよ! でも、それだけじゃないよ!」
「ん?」
「今日、三人でいっぱい動物見て、いっぱい歩いて、いっぱい笑ったから、ご飯もいっぱい美味しく感じるんだよ!」
あんりは、目をきらきらとさせ、それから頬が赤くなって、
「あの、その……」
なんだかちょっぴり、もじもじとしています。
「ん?」
「私ね、こういうの初めてなの。その……お友達と、遊んだりするの。でも、こんなに楽しいものなのね。嬉しいものなのね」
あんり……
「よーし! なら、これを食べ終わったら、もーっと楽しくなろう! もっともっと、あんりをもっと楽しく、嬉しくしよう!」
「だったら、触れ合いコーナー」
「おぉ! みゆう、ナイスアイディア!」
私は親子丼を。みゆうはオムライスを。あんりは唐揚げ定食を。
それぞれガッつくように平らげました。
しかし、それが仇になろうとは……
「うっ……」
触れ合いコーナーの動物は、日替わりで違った動物たちと触れ合えます。
触れ合いコーナーのお姉さんがら元気よく宣伝している、本日の動物。それは……
「はーい! 今日の触れ合いコーナーの主役は、この可愛らしいヒヨコさんたちでーす! あ、いらっしゃいませー! ささ、どうぞどうぞー」
さっき、美味しくいただいてしまった親子丼が……ひぃぃぃー!
「ニワトリの卵には二種類あってね、一つは、ヒヨコが中になる有精卵。もう一つは、ヒヨコにはならない無精卵。あたしたちが食べた卵は、ヒヨコとは全く関係がない無精卵だから、大丈夫」
ドン引きしている私とあんりに、みゆうが教えてくれました。
「そ、そうなんだ!」
「みゆうさん、詳しいのね」
「みゆうは、動物に好かれるだけじゃなくて、みゆう自身も動物が好きなんだよー」
コクコクと、みゆうが頷きました。
「そうと分かれば平気ね。可愛いわ」
「うん! ヒヨコ、かぁわいいー!」
私とあんりは、ヒヨコを手ですくい上げて可愛がります。
ピヨピヨしてて、可愛いです!
「けど、ヒヨコは成長したらニワトリになって、親子丼や唐揚げになる……」
パリンッ……私とあんりの笑顔が、氷のように固まって、音を立てて割れてしまいました。
「あたしはオムライスにしておいてよかった……」
「んもうー! みゆうのいじわるー!」
「ほら、でもまだヒヨコだよ。可愛がっても大丈夫だよ」
「み、みゆう……なんか、グロい……」
「へ?」
いつの間にか、みゆうの周りには、ヒヨコの群れが出来上がっていて、ちょっぴりグロいことに!
ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ……
「きゃー!」
「ひ、人が倒れたぞ!?」
な、何事でしょうか!?
「なんだか悪寒が……」
さっきまで元気良く声を張り上げていた、触れ合いコーナーのお姉さんがパタリと倒れてしまいました!
ヒヨコさんたちが、一斉に鳴き出します!
「ああもう、うるさいねぇ。ピヨピヨ、ピヨピヨ。一緒に鳥インフルエンザ菌も撒き散らしてやろうかい?」
上から突然声が聞こえ、見上げてみると、禍々しいオーラを放つ女の人が煙草をふかしていました!
「マザー・インフル!」
あんりがその女の人に向かって叫びました。
「おやおや、結核のお相手じゃないか。残念だねえ、今日はあいつは留守番さ。あんた一人じゃ、つまんない。すっ込んでな」
「ひかりさん、あれがあなたの相手。インフルエンザの病魔、マザー・インフルよ……」
あれが……マザー・インフル!
日常からバトル展開になりそうです!
おっと、大丈夫か!できるか?庵仁娯!!