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9.教官

香ばしい匂いが鼻をくすぐり、心地よい油の跳ねる音が耳を通り抜けて行く。

これが俺の目覚まし時計。 自慢の"妹"の手料理が一日の始まりを告げる目覚まし時計だ。

のっそりと起き上がり、洗面所へ向かう。

「おはようございます。お兄様」

「おぅ、おはよ。昨日はよく眠れたか?」

「はい。ぐっすりと」

ニッコリとした笑顔を向けてくれる"妹"。

この笑顔を見るたび、不条理な雇用制度や手に負えない同僚の対応にも耐えられる。むしろ過剰回復で倒れそう。なんてシスコン思想にかられながら洗面所で顔を洗い、意識を呼び覚ます。

「ふぅ…今日は確か西の支部に日帰りの遠征だったな…ったく、第1部隊ってだけでこんなに毎日ガン積みのスケジュールとかざけんじゃねぇぞコロスゾ」

いつもの感じで毒を吐くが一人きりなのもあるし、"妹"がすぐそばにいることもあってすぐに抑え込む。

「まぁ日帰りなんだ。すぐにでも終わらせて帰ってこれば問題ない」

そう言い聞かせ、食卓に向かうのであった。




「……………」

「はぁ…なんでわざわざ西の支部まで遠征に行かにゃならんのだまったく。向こうには戦力も十分に揃っているのにわざわざ俺たちを招集するなんざ頭いかれてやがるっ‼︎」

「まーまー。やむを得ない事情ってやつでしょ。にしても…宗嗣さっきからなぁにぼーっとしてるの?」

「……………」

「ちょ、宗嗣〜?」

「………………」

「あーダメだこりゃ。自分の世界に入ってる。仕方ないなぁ…寝るっ」


2人の会話をスルーし続け、考えていたのは"妹"のことだった。実は今回の遠征について手違いがあったらしく、帰って来られるまでに数日はかかると連絡が入ったのは家を出る直前だった。俺のことはどうでもいい。相手がなんであろうと必ず生きて帰るから。

だが、"妹"は自らを守る術を持っていない。いくら俺たちの住む都市の護衛を一任しているのがゼルフィーの本部とは言え、戦力にも限界がある。しかも最近は奴らの襲撃も増えている。万一都市への侵入を許したら…それに"妹"にはもう1つ問題が……

『まもなく、セキサイ支部に到着いたします。お降りの際はお忘れ物等ご注意ください』

なんてらしくない心配をしているうちにアナウンスが鼓膜を揺さぶり、ハッと我に帰る。

「そろそろか。 お前たち降りる準備を…」

「ぐがー…」

「んー…じゃんじゃかのめー…ぐへへ〜…」

こいつら…俺が少しほったらかしといただけでよくもまぁ眠れるもんだ。しかしこのままではいけないので仕方なく起こす(実力行使)。

まぁ叫び倒されたのは言わずもがなだが。


「あーったく…人がせっかく気持ちよく寝てたところをグーで起こす奴がいるか…いちち…」

「ほんとに宗嗣ってばひどすぎー‼︎ 平手打ちとか親にもされたことないのにぃ‼︎」

「うるさい。 さっさと起きなかったお前たちの自業自得だ」

まあいつもの言い合いをしながらセキサイ支部が管轄する都市を練り歩く。


セキサイ支部。

昔でいう関西地方のことをさすらしく、俗にいう粉もん文化が今でも根強く残っている都市で、商業も盛ん。かつて商いの街と呼ばれただけのことはある。屋台が軒並み連なり、ソースの焼ける香ばしい匂いが鼻をくすぐり、つい寄ってしまいたくなるが抑えて支部に顔出し。

「あれが本部のエース部隊…さすが漂ってくる気がちゃうわ…」

「ほんまそれ…なんかこう…分厚いってか?」

コテコテのセキサイ弁による小言が耳に入ってくるが、すぐにシャットアウト。いそいそと支部長室に向かう。


「わざわざ遠いところからご苦労さん。わしがここセキサイ支部の支部長を務めさせてもろてる稲葉無禄いなばむろくと申しますぅ」

やはりコテコテのセキサイ弁は…なんというかこう耳に残る。一度聞いたら忘れられない感じが漂う上、少し脅されてる感覚に陥る。まぁこれを言ったら即拳が飛んでくるだろうが。

「いえ、列車の乗り心地は格別でしたのでなんの苦労にもなりませんでしたよ。お初お目にかかります無禄支部長。私が本部第1部隊隊長。七宮宗嗣と申します。」

「副隊長の鞍牙剛摩です」

「三野 薫です」

「いやぁ。しっかりとした挨拶でこりゃたまげましたわ。うちのゼルフィー達にも教え込んでやりたいものですなぁ」

そう言い笑い出す無禄支部長。セキサイ人によくある感じだが、性格の腐ってる人ではない。むしろ好印象。

「にしても、なんか情報伝達に手違いがあったらしいなぁ? こっちのミスやけん許してもらえへんかの?」

「人間誰しもミスくらいしますよ。まぁ何度も同じミスしてたら自分ならグーパンしますかね。」

「がっははは‼︎ あんさんなかなかやりおるなぁ‼︎」

なんて会話をしているうちに無禄支部長が本題を伝えてくる。

「実は今回あんた達を呼んだのは他でもない。うちのゼルフィー達に指導を施して欲しいんや。」

「指導…?つまり教育とかそんな感じですか?」

薫が問いかけると支部長は大きく頷き、俺に向き直った。

「聞いてますで。宗嗣はん戦闘だけじゃのうて指導も一級品やて。うちの輩も強いことは強いんやけど連携のクソもないもんでなぁ…そこであんさんに頼もうっておもたんよ」

それはなんとまぁ横暴な…なんて言葉は頭の中で塞きとめる。まぁ昔教えたことはあるが、あれは教え子が飲み込みが早い上、俺以上に強くなりたいという思いが強かったからこそなのだが…

「たのんます‼︎ こっちで選抜した教官も脅されて再起不能なんや…ガツンと打ち負かせられる宗嗣はんしか頼れるのがおらんのや」

そこまで言われるとむず痒いのでやめてほしい…

そんな思いは届くはずもなく、ひたすら懇願される。まぁ本部の意向もあるのだろうし、受けないという選択肢など無いのだろう。まったく、ほんと最悪な奴らだ。謀反起こしてやろうかと思うがここは抑える。

「分かりました。そのお話、受けさせてもらいます。」

こうして、セキサイ支部のゼルフィー達の教官を任されることになった俺たち。

正直自信ないというかめんどくさくて帰りたいのだが、これも日々の生活のためと腹をくくって、早速トレーニングメニューを考えるため、街に繰り出し串カツを堪能する俺たちであった。

久々の投稿です遅れて申し訳有りませんなんでもしますから(なんでもするとは言ってない)


いきなり支部に遠征に行き、教官任される宗嗣ってほんますごいわぁ憧れるわぁ宗嗣はん(棒


ちなみに宗嗣達が所属する本部がある地方はセキトウ本部となります。

あ、分かってましたかそうですか

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