7.薫と剛摩
「はぁ…ったくあの野郎なめた口聞きやがって」
「まーまー落ち着きなよー。宗嗣だって一応はあんたのこと考えてるんだから。特に無駄遣いが激しいのがあんたなんだからさ」
「うっさいわ。その口俺のエクスカリバーで塞ぐぞこのアマが」
「ほぅ? 私にそんなこと言っちゃって良いんだぁ?あんた自身も知らないマゾヒズムの世界に目覚めさせてあげても良いのよぅ?というかあんたと馬鍬るくらいなら宗嗣と馬鍬ったら方がよっぽど良いわよ三十路手前で未だDTのチェリーボーイ剛摩くーん?」
どこの銘柄かも分からない安い酒が回っているのか、放送禁止ギリギリライン(薫に関してはほとんどアウトだろうがこれは文献なので問題なし)な言葉しか吐き出さない薫と剛摩。
普段であれば罵詈雑言にあふれたこの会話を強制的に(時に実力行使もしてくる)宗嗣も同席しているのだが、今日ばかりはどうしても早めに帰宅しなければならないということで、2人だけで仕事終わりの一杯に興じていたのだが…
「あぁクソがっ‼︎ 俺がこーしてムカムカしてんのもぜーーんぶっあの隊長気取りのガキのせいだ‼︎」
一応他の客もいる酒場にも関わらず大声で怒鳴り立てる剛摩。 するとさっきまで一緒になって叫んでいた薫が急に黙り込む。
「……ちょっと剛摩」
「あぁ⁉︎なんか用かこのあ……」
さっきのように汚い言葉をぶつけようとした剛摩だったが、薫のまとう雰囲気が急に180度変わったこと。そして自分のことを名前で呼んだことに気づき、しまったと言った感じに顔が青ざめていく。
「確かに宗嗣はどこか掴めないとこもあるし、正直どんくさいって思うこともあるけど…それでもわざと相手をイラつかせるような真似なんてしないって分かってるでしょ?むしろ剛摩のことを心配して報酬も配分してるし、討伐完了した後に戦闘スタイル変えたらどうだって言うのも、今後通用しなくなるかもしれないってことを言ってたとは思わない?」
急に酔いが冷めたかのように説き伏せるように剛摩に問いかける薫。まるで母親が子供に言い聞かせるような声音で話しかけている。
風貌で言えば大学一回生の女子が三十路手前のガタイのいい男を説き伏せる異様な光景。無性に微笑ましくなる人いますかいませんかそうですか。
「はぁ…悪かったよ頼むからその話し方やめてくれ…」
ついに剛摩が折れた。薫恐るべし。
「わかればよろしいっ。ささっ、早く食べきって帰ろ帰ろー」
テーブルの上に並べられたつまみやおかずをせっせと腹に収める2人。そろそろ全部食べきるところで剛摩が口を開いた。
「…あいつには毎度毎度世話を焼かされるが……あいつ以上の戦士は他にはいない。今の上層部にもだ。」
「それは私も同感。ま、逆にあれだけの力どーやって手にしたのか分かんないんだけどね。だって、私たちが受けた手術受けてないんでしょ?なのに同じ力が使えるってなんなんだろうね」
「それもいずれ分かるだろう。奴には謎が多すぎるが、解かれない謎などこの世に存在しない」
「ぷぷっ…剛摩。あんたアイデンディティ崩壊してるよ?」
「あいつがいない前なら問題ない。ほら、さっさと食べ切るぞ」
「はいはーいっ」
そして夜は更けていく
7話です。
今後の方針とか考えたいけどやっぱり会話に焦点が向いてしまいます。
そして何気に宗嗣の謎的なもの出てますね。
一体どーなることやら←