3.崩壊 それから数百年
やっと本編スタートです
ディボウターの規制が設けられ、目立った問題も起こらなくなり社会からの理解を取り戻して数百年がたった頃、人類は二つの思想によって分断されていた。ディボウターの開発に賛同した科学者たちの子孫、及び家族、親戚、助手が『ディボウター肯定派』に入る。
一方で、ディボウター開発に真っ向から否定の意思を示した科学者たちの子孫や家族が『ディボウター否定派』となり、数百年たってもなお互いにぶつかり合っていた。
歴史とは同じことの繰返しなのだから、いずれまた事件が起こっても可笑しくないと否定派が口にすれば、幾重にも規制を設け、さらに審査を重ねているのだから問題ないと肯定派が一蹴するといったやりとりが何度も何度も繰り返され、
次第に社会情勢は傾き始めていき、ディボウターに対する理解が少しずつ下がり始めた
そんなある日…
「ねぇ……あんたってなんでも出来るんだよね」
「はい。あなた様のためならなんでも」
「じゃあさ…………」
「この世界……終わらせることって出来る?」
普通なら一笑の内に軽くいなされる発言だが…
相手はディボウター。 相手のためにとことん尽くそうとする、ある種の『プログラミングされた生体ロボット』のようなものだ。実行すれば喜んでもらえる もっと笑顔になってもらえる 彼らが考えていることはざっとこんなものだろう
そして青年の言葉を受け、なんと軍事システムにハッキングをかけたのだ
その時の段階で今から既に数百年の月日が経っているので、核弾頭なんて言う一度きりの使い捨て兵器は世界からひとつ残らず消えており、レーザー兵器を積み込んだ人工衛星を大気圏上に常駐させ、必要があればそこから照射するといった感じに、軍事システムもかなりの進歩を遂げていた。
それを知ってか知らずか、レーザー兵器のコンピューターにハッキングをしかけ、照準を全世界に向けて一斉照射。
突然の事態に政府は為す術もなく、崩壊のその瞬間をただ見つめるしかなかった
厳密に言えば、政府関係の施設及び重要人物が真っ先にレーザーに焼かれたのだが。
無惨にも溶かされていく高層ビル郡……
溶けたコンクリートをもろに浴びて同じように、断末魔の叫びを上げながら溶かされていく人々…
そしてその中でも笑い続けたディボウター…
世界は数週間燃え続け、地上はほとんど壊滅。
こうして世界は、人の正の感情によって滅んだ……ように見えた
「はぁ……ったく何でまた資源調達なんだよ
ここ数日目立った戦闘無いからイライラしてくるぁ」
「あんたも口が過ぎるし、戦闘無いのを逆に喜んだらどうなの? いちいちあいつらの処理するのめんどくさいんだから」
「あぁ!? やつらをぶっ潰すことが俺らの仕事だろぅが!? なのにちまちま資源調達資源調達ってよぉ!! 回収班に任せりゃいいものをったく!!」
「まぁだからって私たちに代行頼むのもどーかと思うのよねぇ 今日飲み友と朝からはしご酒するつもりだったのにさ~」
「先日の奇襲によって回収班がかなりの痛手を被ったのを忘れたのか? 死人が出なかっただけ幸いだったが… 出撃が不能なら他の部隊に代行を任せるのも納得だろう それくらいわからなー」
「へいへいへいへい。隊長殿は相変わらず冷静でございますねぇ 分かりました分かりました~」
「はいはい 隊長さんっ」
まったく……こんなやつらと俺を組ませたやつを呪ってやりたい… いくら俺が冷静沈着だからってこんなやつらを任せるなぞ…
正直言うとめんどくさいにも程がある…
などと口々に口論が絶えないこの三人が歩いているのは、まさに荒廃した世界と言う言葉がピッタリの場所だ。
かつて文明が栄えていたであろう高層ビルの残骸。錆び付いた道路標識。電球が割れて、かつての輝きを失った信号機。緑はなく、その全てが砂に覆われている。
「そろそろポイントに付くぞ 二人とも準備を……」
掘削機を取り出そうとしたその瞬間、
先頭を歩いていた隊長格の青年が立ち止まった。
「うわぁ……まじで?」
「へへっ いいタイミングで来るじゃねぇか
久々にぶっ潰してやりますかぁ」
数百メートル先であろうか。
一面砂の色に覆われた世界に似つかわしくない、真っ白な何かが立っている。こちらを認識したのか、口のようなものの端が一気につり上がり、まるで笑っているかのような顔になる。
それをまるで見ていたかのように、
三人はごく自然と臨戦態勢に入った