12.彼なりの指導方法
ほんと久しぶりの投稿です。
鈍ってないかどうか心配ですがどうぞよろしく
支部長室を後にし、演習場に向かう宗嗣達。
目的は無論、セキサイ支部のゼルフィー達への指導及び監督業務である。連絡ミスによって予定が狂わされたり、何かと不憫な扱い方ばかりされる宗嗣達だったのだが、果たして今度は上手いこと行くのだろうか。
「ねぇねぇ宗嗣。ここのゼルフィー達にどうやって教育とか施すつもりしてるの?」
「昔やったのと同じことしておけば問題ないだろう。それでも効かないのなら、やり方を変えればいいだけのこと。実力行使もそのうちに入るがな」
「命令に背いたら鉄拳制裁されそうで身震いがするよブルブルっ。でもまぁその時は素直に従わない向こうの責任ってことに出来るしいいんじゃない?」
「なんだ、経験済みだからって随分と軽い言い方してくれるじゃないか薫。なんならお前も一から鍛えてやっても良いんだぜ?」
「やーだよーだっ‼︎あんなメチャクチャなトレーニングメニューなんてもう懲り懲りじゃっ‼︎」
「っははは‼︎随分な物言いとまで来たか貴様‼︎
良いだろうこうなったら無理やりにでもー」
「話の途中で悪いが、他の奴らから痛い視線を向けられてることに気づかないか?」
と、剛摩が水を指す。その言葉が耳に入って来た二人が前を向くと、目的の演習場についていたらしく、鍛錬に勤しんでいるゼルフィー達の視線を一身に浴びていた。これはまぁ恥ずかしい。と言うかさっきの発言丸聞こえなら宗嗣が悪人と勘違いされかねない。だって女に対して貴様呼ばわりなどおかしいだろうと思うのが世間一般の考えだが、宗嗣には通用しない。ここまで来たのならもう分かるでしょう頼むから分かってくれそこの読者さん。
「…本日より、このセキサイ支部のゼルフィーの監督を一任されました。
セキトウ本部の七宮宗嗣です。短い間にはなりますが、どうぞよろしく。」
先ほどまでの口の悪さから一変とした、丁寧な口調の連続に殆どのゼルフィーが困惑の色を隠せない。こんな状況も宗嗣には慣れっこなものになっていたのが現実である。
「ほう…あんたがあの七宮宗嗣でっか」
そう言いながら一人のゼルフィーがこちらに向かってくる。剛摩と同じくらいのガタイの良さを持つその男性は、部外者を爪弾きするかのような視線を向けてくる。
「ワシはここセキサイ支部の部隊長を任されとる軌条怜っつーもんや。短い間やろうがどうもよろしゅうたのんます」
微妙に砕けていて、それでもそこはかとなく敬語が漂う口調で話しかけてくる軌条怜。しかしその口調には、歓迎の念は込められてはいない。やはりゼルフィーの特徴である『自己中』の傾向が強い影響しているのか。それを知るのは誰もいない。
「はっ…急に本部から指導者を呼ぶって話になって、そんで来たのがこんな小童かい。無禄支部長は目が腐ってはるんかのぅ。実戦経験豊富やからってそれが指導に直結するとは思えへんのやがなぁ」
先ほどから年下を下に見る目でこちらの逆上を買おうとしている様子の怜。それに対して宗嗣は冷静に返す。
「ふむ…まぁそれも一理ありますね。でも、大した実績もない上部下からの信頼も薄く、果ては部隊長を辞めさせられようとしている人が教えるよりも、功績を残してて実力も伴っている優秀な戦闘員が直々に指導してあげる方が、受ける側としても効率がいいのではないかと思うのですが…その辺りはどうお考えで?」
逆上することなく、冷静を保って自然な流れで相手を蔑み、逆に相手の怒りを誘う。これが宗嗣のやり方の1つ。ちなみに功績がないとかそうゆうのはちゃんと下調べした上での発言だから、相手は事実ばかりを盾にされて反論できないようにすると言う鬼畜っぷり。これではどちらが悪党なのか分からない。
「……やりおるやないかい。」
コメカミをピクつかせながらそう返す怜。言い返せない故の目一杯の返し方なのがヒシヒシと伝わる。
「さて…これから新しく組んだ指導方法をお教えします。資料配りますから一箇所に集まってくださーい」
ページにして数十枚分の指導カリキュラムを目にして、あちこちから困惑の声が上がる中、
「今後皆さんには配布資料に記載されている通りのメニューを実践していただきます。何か不都合な点はありませんか?」
「大有りですわい本部隊隊長はん。なんじゃこのふざけたメニューは」
「何かが不満な点でも?」
「なぜにメニューの中に『アニメ鑑賞』があるんや?こんなのは奴らをぶち殺すのに関係ないやないか」
「ええ。奴らを駆逐するためには必要ないことです。ですが今はそれが目的ではありません。」
「と言うと、何が目的なんや?」
「最大の目的は、『強い自分のイメージを定着させる』こと。この一点に尽きます。」
「強いイメージの定着…?それが何の役に立つんやさかい。」
「…はぁ…ゼルフィーの力の真髄を理解してないくせによく部隊長が務まりますね。逆に褒めてやりたいですよ」
「なんやとぉ⁉︎」
「とりあえず、数日の間アニメにどっぷりハマってください。戦闘形式での訓練はそれが終わってから。そのあと、細かな調整に移ります。
あと最後に。先程も言った、『強い自分をイメージする」のを忘れないでくださいね。なぜそれが必要なのかは、見始めたらわかります。それでは解散っ‼︎」
解散の一言を合図に、そそくさとその場を離れる宗嗣。その後に続く薫と剛摩。
「…まったく…いつ聞いてもおかしな訓練の仕方だ。なぜにアニメ鑑賞で強くなれるのか訳がわからん」
「なぁに言ってんだ。お前が一番ゼルフィーの力の本当の部分を知ってるくせに。」
「たまたま知る機会があっただけだ。…まぁ懇切丁寧に説明されるほど訳が分からない話だが」
「でもまぁ適合のやつ受けてあそこにいる訳だから、続けるうちに勘付くだろ。何しろ一番治安が悪いセキサイ支部でゼルフィーやってるんだからな。…いや、だからこそか。」
最後に結局ディスる宗嗣。宗嗣と剛摩が話を弾ませる中、薫はその様子を後ろからじっと見つめていた。
「何を考えとるんやあの小童は…。アニメ見ることとわしらの訓練に何の関係があるんや」
愚痴ばかり零しながら自室にうず高く積み上げられたアニメの円盤を見つめながら、こう零す怜。
「……なんでどれもこれもバトルもんばかりやねん」
……指導方法メチャクチャです




