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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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ローリーの謎2

 ディーンがローリーを小脇に抱えて戻ってきた。

 ローリーは離せーとかバカヤローとか叫んで暴れている。

 なんか悔しい。


「二人とも仲良しだな」


 我は悲しくて辛くて、いじけてしまった。

 大人げなかったと反省した。


 何て言っても、我はローリーが憧れちゃうくらい大人の魅力たっぷりの渋いカッコいい男だからな。

 大人の余裕というものを、軽っ軽らしい若造のディーンに示さねばなるまい。

 

 だから、ちょっと年長者としての余裕を見せながら提案した。

「交代で火の番をしよう。我が最初にするから、二人とも寝てよいぞ」


「あ、それなんだけどね、大丈夫なんだ。オレが特別な結界を今からこの周りに張るから」

そう言って、杖を取り出し周囲を歩きながら結界を張り始める。


「魔物はこの大岩の魔石が弾いてくれるけど、泥棒は排除出来ない。だけど、オレの結界は泥棒こそをやっつけるんだ。結界は頑丈にしておくから、剣でぶったたこうが何をしようが誰も入れない。でっもそれだけじゃないんだ。泥棒が結界に触れると、触れたところから目に見えない虫が移動して、その泥棒の体中を這い回るんだ! ふふん、オレ達にはそうならないようにしておくから! トイレとか行っても大丈夫だから、安心して出入りしていいよ!」

 

 ローリーは得意げに、満面の笑みで言った。


「げっ、お前って案外エグいのな」

 ディーンがボソっと呟いた。


「ディーンにも効くようにしておくかな。信用ならないし」

 ムッとしてローリーが返す。


「え、やめて。す、すまん。それだけは許して。俺、虫は苦手なんだよ」

「え、そうなの? いいこと聞いちゃったな。これからディーンがオレを虐めてきたら、虫で対抗すればいいんだ」

「人聞き悪いな、俺がいつお前を虐めたっつーんだよ」


「・・・・・・」


「はあ? ついさっきオレの耳引っ張ったじゃないか!」


「・・・・・・」


「それはお前が悪いんだろーが・・・・・・」

ディーンが我の視線に気が付いて黙った。





「仲良しだな」


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 二人ともまた我がいじけるかとビクビクしていたが、我は結果的にはいじけなかった。

 いじけそうになったところで、ディーンが我の寝る場所を真ん中に決めた。


 ローリーが自分用のの毛布を取り出し、聞く。

「毛布いる? それともそのマントが毛布代わりだから必要ない?」


 竜族は暑さにも寒さにも、人間に比べると強い。

 今は季節がいいから、それほど必要ではなかったが、ポケットの銀貨を使う絶好の機会だと考えて「いる」と答えた。

 ディーンは呆れたように我を見たが、何も言わなかった。

 そうして我はワクワクして、初めての銀貨投入を経験したのであった。



 夜中、声を殺してうめくような、泣き声のような音が聞こえて、泥棒がローリーの例の虫の結界にでもひっかかったのか?と思って気配を窺ったが、それは思い違いだった。

 声はすぐ近くから発せられていた。


 隣を見るとローリーが体を丸めて、眠ったまま苦しげに呻いて泣いている。

 うなされているのが可哀想で起こすか迷ったけれど、きっとローリーは自分達には知られたくないことだろうと思い、夢を見ない深い眠りへと誘う魔法をかけてやった。


「何か深い事情がありそうですね」

 ディーンも起きていたようだ。

 

 ローリーの様子は、今日護衛達のところから戻って来た頃からおかしかった。

 考え込んだり、神妙な顔をして急に黙りこんだり。

 自分達がその様子を訝しげに窺っているのを感じると、ハッとしたようにディーンをからかい始める。

 まるで先程までの自分を誤魔化すように、我らに気付かれないように。


 我はなんとかしてやりたいと思った。

 こんなふうにひとりで泣くローリーが哀れでならない。

 ローリーを苦しめる全ての事を取り除いてやりたいと思う。

 我はそっとローリーの体を引き寄せ、毛布ごと抱きしめた。

 指の腹で涙を拭い、頭を撫でながら、ずっと考えていた。

 我の胸で泣かせてやれたら、どんなにいいだろうと。






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