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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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アルベルトの告白

 ローリーが結婚してくれると言った。

 誕生日まであと一ヶ月。

 それに心優しいローリーは我の気持ちを汲んで、唾液だけでなくて血も飲んでくれるようになった。


 我は己が恐ろしい。

 ローリーを失えば、何をしてしまうか自分でも正直分からない。


 雌の番いを失った雄が、何故己の子や親、周りを巻き込むような真似をして死んで行ったのか、我はずっと番いを失った哀しみに狂ってしまったのだと思っていた。

 だが、そうではなかった。

 我はローリーを得て初めてそうではないと気付いたのだ。

 あの者達は、番いを奪ったこの世の全てを憎み、復讐に狂ったのだ。


 ローリーが知恵熱というものを出した時、我の心の不安から生まれたのは、哀しみではなく紛れも無い憎悪だった。

 我からローリーを奪うというなら、我もまたこの世の全てを奪い尽くしてやろうと思った。

 そしてその時、ディーンやエルランド、他の竜族の事など考えもしなかった。

 我の頭の中は、どうやってこの世界を破壊するかということだけだった。

 


 

 親指の腹をナイフで切り付けると、血が滲み出した。

 それをローリーが愛らしい舌を出して、ぺろぺろ。

 両手で抱えてちゅーちゅー。

 ぺろぺろ。

 ちゅーちゅー。


 ・・・・・・


 思わずローリーの口に親指をねじ込んで、掻き混ぜた。

「ひょっと、ありゅ、やめれよ」


「す、すまん、つい」


 いかんいかん。

 つい、そそられてしまって、我慢出来なかった。

 ローリーは我の気持ちを慮って、血を飲んでくれているのだ。

 そういういやらしい目で見てはならん。

 よし、心を落ち着けて、もう一度ローリーの目の前に指を差し出す。

 しかし、そうは思っても、ローリーのこの姿は、やはり、その、なんというか目の毒だな。

 あ、そうだ、見れぬよう目を瞑れば良いのではないか。

 

 瞑ってみた。

 実際にいやらしい目は閉じられたが、指に感じる柔らかい唇の感触やちらちら触れる舌の感触が、やっぱりいやらしい妄想の目を開いてしまった。


「あ、あぐ、んぐ」

 また、突っ込んでしまった親指をローリーが引き抜き、怒られる。


「もう、遊ばないで!」

 

「す、すまん。遊んでるつもりはないのだが、つい」

 ちょっと深呼吸して落ち着こう。


「もういい。じゃあ、今度は魔力を分けてくれる?」

 親指の傷に治癒魔法をさっとかけ、傷口を塞ぐと、今度は目を瞑って顔を突き出す。

 もちろん、我に否はない。

 喜んで分けてやった。

 ついでに先ほどの情熱も、思う存分解消させてもらった。



「王子との約束で、新しい魔法製品の開発だったり、卒論の魔法の練習だったり、魔力の消費が激しいの。アルが居てくれて、ほんとに助かるわ。あ、大丈夫よ、知恵熱は出さないように、頭を使う作業と魔法練習をうまく組み合わせてやってるから、心配しなくていいからね。それにアルの血は疲れ知らずでいくらでも頑張れちゃう」

「ローリーの役に立てるのは嬉しいが、無理はしないでくれ。もう少しくらいなら、我慢出来ると思う」

 ローリーは優しい眼差しで、我慢しなくていいと言って、我を抱きしめてくれた。


「あ、そう言えば、兄上からローリーに礼を言っておいてくれと頼まれていた。具合がものすごく良いとの事だ。おかげで夜が待ち遠しくて仕方がないとか言っておったぞ。兄上に安眠枕でも作ってやったのか? ん? ろ、ローリー? 顔が怖いぞ?」


「・・・あのエロ王子め!」


 なんか不穏な言葉が聞こえたが、聞こえなかったフリをしておこう。


「あ、そうだ。王子で思い出した。あのね、ティムがわたしについて来たいって言ってるの。竜王国に一緒に連れて行ってもいいかしら。悪さはしないって約束させるし、わたしがちゃんと責任を持って見張ってるから。それにあの子は、目の届くところに置いておいた方がいろいろと安心な気がする。えっと、ほら、わたし親分だから、子分の面倒は見なきゃいけないと思うのよ」

 ローリーにしては珍しく、焦った調子で我に言い募る。

 どうしても連れて行きたい理由があるようだ。

 我の方も、あれはあれで使えるかも知れないと考えていた。

 竜王国にとって脅威がないとは言い切れないが、それは我とて同じだ。

 我は了承した。

 


「それから、コレなんだけど・・・」

 ローリーは指で空間を切り裂いたかと思うと、中から茶色の瓶の入った容器を取り出した。

「酷い悪臭がするの。それで密閉容器に入れてたんだけど、それでも臭うような気がして、異空間に収納してたの。でも、今、余分な魔力を使いたくないから、申し訳ないけど、これは返すわ。せっかく貰ったのにごめんね」

 密閉容器を机の上に置く。

「魔力ありがとう。じゃあ、行くね」

 ローリーが部屋を出て行った。


 置いていった密閉容器の蓋を開けてみた。

 おえっ。

 すぐ蓋を閉めたが、臭いがまだそのあたり一帯に漂っている。

 うん、多分腐ったのだな。

 元はこれほど酷くなかった。

 まあ、生物(ナマモノ)だからな、腐るのは仕方がない。

 いや、生物(イキモノ)か?


 ふむ、ローリーには新鮮なモノを毎日提供してやることにしよう。

 

 





すみません。

予定より二話増えました。


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