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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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誕生会

「ごめんなさい。話してくれたら、許すって言ったくせに、怒って離宮から飛び出しちゃって」


 ローリーは学校から離宮に戻ると、すぐに我の執務室を訪れ、謝った。

 明日はローリーの誕生会、つまり求婚する日、我はやきもきしてこの一週間を過ごしたが、どうにか許してくれたようでほっとする。

 学校にいるディーンからローリーの様子は聞いていたものの、直接会って話すまではやはり安心が出来なかった。とにかく、本当に良かった。

 これも皆が間に入って、尽力してくれたおかげだと思う。

 ローリーはこの一週間、三日目くらいには怒りも静まって、落ち着きを取り戻したらしいが、我が学校に行くと逃げてしまって、話しかけようにも距離をおかれてしまっていた。


「いや、よいのだ、よいのだ。そなたがこうして我の元に戻って来てくれたのだから、もうよい」


 入口近くに止まったままのローリーに近付き、恐る恐る抱き寄せ、ローリーが拒まなかった事に心底安堵する。

 そして、手を引き長椅子にまで誘導すると、二人で並んで腰かけた。


「呆れてる? 番いがこんなに嫉妬深い女で、嫌になったでしょ? 恋人でもなかった大昔の事で、アルを責める資格なんてわたしには無いのに」

 ローリーは自嘲するように言って、涙をぽろりとこぼした。


「自分の勝手な思い込みで魔力を暴走させたり、過去の事に怒って飛び出したり、反省したの。わたし、子供だった。何も知らない馬鹿な子供だった。あの(ヒト)の言った通りよ。こんな番いじゃあ、アルが可哀想よね。でもね、わたし、アルが好きなの、心の底から愛してるの」


 ぽろぽろと涙をこぼして、愛の言葉をくれるローリーに愛おしさが募る。

 堪え切れず、ローリーをぎゅうぎゅう抱きしめて、頬ずりして、同じように愛の言葉を贈った。


「我もだ、我も心の底から、そなたを愛しておる。あの女が何を言ったか知らんが、我は可哀想なんかではないぞ? 我はローリーが番いで本当に嬉しいのだ。そなたが大好きなのだ。魔力を暴走させてもよい、怒ってもよい、我は気にせぬ。そなたがこうして我と共にあってくれるならな」

「うん。ごめんね、ありがとう」


 ローリーは我から体を離し、涙を拭いた。

 そして、我の両の手をしっかり握ると、真剣な眼差しで決意表明をする。


「わたし、もう、アルとは離れられない。だから、アルのためにも、わたし自身のためにも、早く大人になるわ! 待ってて!」

 

 



 誕生会当日、ローリーは朝から支度に大わらわで、母親を含めた女性達と共に自室に引きこもって出て来なかった。

 社交界デビューしていないローリーの誕生会は、身内と学校の友人のみ招待された小さなものだが、我にとってはとても重要な意味を持つ。

 誕生会をこのまま婚約式に、可能ならば結婚式にしたいと考えているからだ。

 舅殿の許可は取ってある。

 ローリーさえ、うんと言ってくれたら、今夜には・・・


「アルベルト様、ニヤニヤして、顔がイヤラシイです。何を考えていたのかは大体想像がつきますけど、気が早過ぎますよ。まずは、婚約を成立させないと」


 食堂には生花やリボンで装飾が施されており、テーブルには立食パーティー用の食事が用意されている。

 他の招待客と共にローリーが来るのを待っていると、宰相にボコボコに殴られた跡を残したディーンが隣にやって来てぼそっと言った。


「でも、昨日は、涙を流して、我とは離れられない、心の底から愛していると言ってくれたぞ? それに今度は間違われないように、薔薇の花束と令嬢達に人気だというティファラー製のエンゲージリングも用意したのだ。完璧だろう? 二人のための愛の巣は作っておいて正解だった。準備も万端だ。一週間は留守にするぞ。竜王国に移る時期については、ローリーと話し合って決めるつもりだ。ああ、きっとすぐに子竜が生まれるな。初めての子だから、しっかりした乳母が必要だな。フェリシアも世話をしてくれるだろうが、子を産んだ経験があって、同じ人間である宰相の番いがいいかな?」


「・・・・・・」


 ディーンは我が問い掛けたにもかかわらず、答えないでどこかに行ってしまった。

 薄情な奴め。それとも子竜の世話をディーンもしたかったのかな? 

 拗ねたのか? しょうのない奴だ。

 だが、ディーンの言う事も、もっともだ。

 子竜の世話について考えるのは、いささか気が早い。

 とりあえずは、今夜する事について、じっくり綿密に計画を立てよう。



 

 我の選んだエレガントで愛らしいドレスはとてもローリーに似合っていた。

 髪を結い上げ、化粧を施したローリーは大人っぽくて、ドキドキした。

 我はいつもいつも、こんなふうにローリーに恋をしてしまう。

 でもローリーはすでに心を通わせた我の恋人なのだ。

 そう思うと嬉しくてついニマニマしてしまう。


 

「すごく綺麗だ。成人おめでとう! まずは誕生日の贈り物だ」

 手を取り、口づけた後、ローリーの首にキラキラと七色に輝く宝石のついたペンダントをかけてやった。

「我の魔力で作った魔石を加工してもらったのだ。我の心を込めた。受け取って欲しい」

 試行錯誤を繰り返して作った結果、ローリーの魔力をイメージして作ったこれが一番美しかった。

 

「ありがとう。すごく嬉しい。大切にするね。あ、アル、その胸の薔薇はもしかして?」

「ああ、ローリーが初めて我を好きだと言って、くれた薔薇だ」

 我がコップに挿して持ち歩くのをローリーが見かねて、薔薇に時を凍らせる魔法をかけてくれた。

「我の一番の宝物だ」

「アル・・・」


 よし! ムードも最高潮!

 脇に置いてあった薔薇の花束を手に取り、片膝をついた。


「グローリア嬢、我は初めて会った時から、そなたが好きだった。共に過ごして、もっと好きになった。愛している。生涯大切にすると誓う。どうか我の妻になって欲しい」


 花束を差し出すとローリーは受け取って、わたしもあなたを愛しています、あなたの妻にして下さいと言ってくれた。

 我はローリーを抱きしめ、早速、指に用意したエンゲージリングを嵌める。

 よし! これで婚約成立だ!


「ありがとう、ローリー。求婚を受けてくれて、我は嬉しい。それでだな、どうだろう、このまま結婚」

「アル、それから皆にも聞いてもらいたいの」


「わたし、グローリア=ハイネケンはたった今、アルベルト=シュヴァイツ様の求婚を受け入れ、結婚する事を承諾しました。しかし、わたしはまだ学生で、成人したとはいえ、まだ世間の事を何も知らない半人前の子供です。だから、結婚は学校を卒業した時にしたいと思います」


 卒業? 卒業っていつ?!


「ローリー!? なんで? なんで? そなただって早く結婚したいって、言っていたではないか!」

「うん、ごめんね。あの時は本当にそう思ってた。わたし子供だったの。何も分かってなかったのよ」

「学校に行きたいのなら、結婚してからでも、学校に通えばよいのだぞ?」

「アル、そうじゃないの。わたし、今はまだ、あなたの妻になる自信がないの。だから、もう少し大人になるまで待って?」



 愛の巣で・・・あんなことや、こんなこと・・・


 そんな~っ!







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