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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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ローリーの謎1

 ローリーの出してくれた料理はどれも美味しくて、ディーンも我もおかわりをし、酒はさすがに断ったがデザートも食べて、結局追加料金をたんまり支払った。

 ローリー商戦にしてやられたとディーンが悔しそうに呟いている。

 いつも言いくるめられる我としては、ディーンがタコ殴りにあったように憔悴しきっている姿を見るのは面白い。

 

 早目の夕食を食べている時に大商隊が到着した。

 商隊の護衛達は気の合うもの同士数人でグループを作り、それぞれ思い思いに輪になって、あちらこちらで火を囲み食事中だ。

 ローリーは今そこに大鍋を持って、我らが食べた後の残りもののスープを売り付けに行った。

 どうやらこうして見ていると、スープだけでなく他にもタバコやら菓子やらも我らにしたように売り付けているようだ。


「全く、あいつの商魂ハンパないですね」

 ディーンが我に話しかけてきた。


「ローリーが気になりますか?」

「なぜ、そんなことを聞く?」

「先程からずっとローリーを目で追っています」


「そうか? そうかもな」

 ローリーの小さな体が護衛達の間をちょこまかと動き回っている様子を眺めるながら、ディーンに答えた。


「あ、そうだ。金を半分寄こせ。ディーンだけズルいぞ。我もあの壺に銀貨を入れて、ローリーの喜ぶ顔を見たい」


「はあ? あの小憎らしい顔を? ですか?!」


「いいから、ぐちゃぐちゃ言わずにさっさと巾着袋を出せ」

ディーンは巾着袋を出すと、中身をゴソゴソ漁り、我には十枚ほどの銀貨と数枚の銅貨を渡してきた。


「金貨が入ってないぞ」

「アイツの壺に入れるだけなら金貨は必要ないでしょう?」


 我はその言葉にムッとして、ディーンから袋をひったくると、手を突っ込んで無造作に一握り掴んで取り出した。そして残りを返す。

「ケチケチするな。どうせ魔石も持って来てるんだろう? 足りなくなれば、それを金に替えればいい」

 我は銀貨数枚をポケットに入れ、残りを自分用の荷物入れの底に入れた。

 威厳をもって命令したが、カネをせしめて、これでしばらくあの笑顔を我の独り占めにできるぞと思うと勝手に顔がニマニマしてしまう。




 そうやってディーンとやりとりをしていると、魔法使いと思われるローブを着た男がまた、こちらにやって来る。

 大岩のたもとに陣取っている我らをチラリと横目で見て、岩を登り魔石を確認する。


「あ、それうちの魔法使いが満タンに充填しておいたから」

 ディーンが魔法使いに言うと、「おたくの魔法使いが? ふーん、そうか。てっきり大商隊の奴かと思っていたが。まあ、いずれにしても助かるよ」と言う。そして、「じゃあ、また何か困った事があったら声をかけてくれ」と戻って行った。

 

 ディーンと我は顔を見合わせた。

 先程から同じようなやり取りが繰り返されている。

 さっきの魔法使いも初めは値踏みをするような目で見ていたのに、魔石を一杯にしたと言った途端に自分達に対する態度が軟化した。

 大商隊の魔法使いも、良い場所を陣取っていた我らに最初は敵意すら見せていたのに、ローリーが何やら話しかけたら好意的に態度を急変し、去って行った。


 「参ったな」

 ディーンが呟いた。我も同じ気持ちだった。




 しばらくすると、ローリーが右手に空の大鍋、左手には小袋を持ち、戻って来た。

 残り物を売り付けて、てっきり喜び勇んで帰ってくると思っていたのに、その顔は思案にくれて心ここに在らずという状態だった。


「どうした? 売れなかったのか?」

 ディーンが声をかけた。

 

 ディーンの声に気付き、先ほどまでの思案顔を引っ込めて、満面の笑みを浮かべて言う。


「いや、全部売れたよ! 大儲けさ! さすがオレ! オレってスゲー!」

 そう言って、壺を取り出し、小袋の中身を蓋のところにぶちまけた。


 一つ一つ数えながら、投入口の隙間に入れていく。


「おい!! ちょっと待った!! その銅貨は壺に入れずに小袋に、俺達の釣銭用に残しておけ」

ディーンが待ったをかけるやいなや、言いたい事を察したローリーは数えるのを止め、銅貨をさっさと入れてしまった。


「あっ!! くそっ!! お前という奴はぁあああ!!」

「ちょっと遅かったみたいだね! 残念でしたー!」

 えへっと笑って、ディーンが掴みかかろうとするのを避けて逃げる。

 

 二人でなんか追っかけっこを始めてしまった。

 

 きゃーきゃー、ぎゃーぎゃー、なんか楽しそうだ。

 

 コレって、まさか、あの、あはは、うふふってやつじゃないのか?

 

 若い二人の間に入ったら、我は馬に蹴られて死んでしまえというやつか?

 

 我が年寄りだから、もしかして、は、はぶられてる?



 我は勇気を振り絞って、二人に向かって話しかけてみた。


「ワ、ワレモ、ワレモ、仲間に入れてクレ」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・コノヤロー・・・・・・

 ・・・バーカバーカ・・・・・・

 ・・・・・・ナンダトー・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 気付いて貰えなかった。






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