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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
56/77

仲直り3

また、高い評価点を入れていただき、感謝しております。

ありがとうございました! 励まされます!

お礼申し上げます。

 おじいちゃん・・・

 

 どうやらローリーは我の事を年寄りだと思って、今まで介護をしてくれていたようである。


「アル? 急にどうしたの? 大丈夫?」


 あまりのショックに執務をほっぽり出して、寝室に引きこもってしまった我を心配して見に来たようだ。

 気にかけてくれるのはとても嬉しいが、それも介護の一環だと思うと気持ちは複雑である。

 黙っていると、ベッドの中で丸くなる我を上掛けの上からローリーが優しく抱きしめてくれる。


「竜王国の公表なんて、歴史を塗り替える大事変だもんね。上手くいかない事ばかりなんでしょう? わたしが手伝えたらいいんだけど、こんな子供が出しゃばっていい問題じゃないし、どうしたらいいのかしら。不甲斐ない番いでごめんね、アル」


 ・・・・・・


 実のところ、ローリーが心配している竜王国の公表についての根回しは、かなり上手くいっている。

 はっきり言うと、上手くいかないのは、ローリーに関する事ばかりだ。


「どうしたら、元気になる? わたしに出来る事なら、何だってするわ。ねえ、アル、どうすればいい?」

 


 ・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・



「なら、魔力を、ローリーの魔力を分けてくれるか?」

 上掛けから顔をちょびっと出して、ずっと想い焦れていた事を言ってみた。


「あ! そうよね! なんで気がつかなかったのかしら。元気の源と言えば魔力よね。もちろんいいわ。でも、どうやればいいの? いつも貰うばかりで、どうやってあげればいいのか分からないわ」


「我とローリーは番いだから、我を愛しいと、魔力を捧げたいと強く念じてくれれば、自然に魔力は流れると思う」


「分かった。やってみる」


 ローリーはすんなり了承した。

 魔力の交換は竜族にとって最上級の愛情表現である。

 魔力を差し出す事は、自分を差し出す事にかわりないからだ。


「え? いいのか?」


「もちろん。どうして? いつもアルがしてくれている事じゃない。えっと、じゃあ、アル、恥ずかしいから目を瞑って!」


「わ、分かった」

 緊張して思わず声が震える。

 ドキドキと期待を膨らましてローリーを待っていると、ゆっくり顔を近付けてくる気配がして、そうっと柔らかな唇が、押し付けられた。

 じっと待っていられなくて、閉じたまま押しつけられた唇を舌を伸ばしてぺろりと舐めた。


「アル!! じっとしていて!!」


「す、すまん、つい。だが、いくら番いでも、口を閉じたままでは、魔力は流れないぞ?」


「分かってるわよ! これから、そうしようと思ってたの! と、とにかく、じっとしててよ?!」


 赤くなってしどろもどろなローリーが、なんとも、あー、とんでもなくかわゆいぞ!

 我の中に情熱の炎がともったのを感じたが、必死にそれを押さえつけて平静を装った。

 弱ったじじいでないと、ローリーは魔力を分けてくれない気がするからな。


 じっと魔力が流れ込んでくるのを待つ。

 ローリーが口をゆっくり開けていき、小さな舌が我の唇を擽る。

 我はそれに応えるように口を開いて、唇をしっかり重ね合わせていく。

 舌を絡めたくなったが、またローリーに怒られるのは分かっていたし、集中して頑張っているローリーの邪魔をしてはいけない。

 と、一瞬爽やかな風が吹き抜けた。

 体が、頭が、雷に打たれたように痺れる。


 ああ、ローリーの魔力はなんと爽やかなんだろう。

 すがすがしい朝の光のように透明感があって、清廉で、眩しい。

 我を想う温かな気持ちや、芽吹いたばかりの甘い気持ちも感じられた。


 ローリーの頭を手で押さえ貪るように口に吸いつき、もっともっとと求めた。

 ああ、幸せに満たされていく。


 うっとりとローリーの魔力に酔いしれていると、口を離したローリーが我を窺い見る。


「ちゃんと渡せた? 途中までは上手く出来たと思ったんだけど。何故か途中から、逆にアルの方から流れて来て、渡せなくなっちゃった」


 ああ、ついに、ついに、魔力の交換を実現してしまった!

 落ち込んでいた気分は、今や天にも昇る心地である。


「ローリー、ありがとう!! 我もローリーが大好きだ! ローリーが同じ気持ちになってくれるまで、我はいくらだって待つ。いくらだって待てるぞ!」


 ローリーをぎゅうぎゅう抱きしめた。







「竜王様、ご機嫌ですね」

 

 フンフフン、つい鼻歌を口ずさんでしまうほど、浮かれていると自分でも思う。

 だが、ローリーにはあまり浮かれたところを見られぬようにしなければ。


 あれから、ローリーは我が疲れた顔をしていたり、難しい顔をしていたりすると、我をちょいちょいと手招きして物陰に連れて行き、魔力を分けてくれるようになった。

 だから、我は寂しくなると干からびたじじいの振りをする。

 すると、ローリーは我を優しく甘やかしてくれるのだ。

 体こそ重ねておらぬが、我とローリーの心はしっかりと結ばれておる。




 ローリーの休みが終わって、学校がまた始まった。

 いちゃラブ生活が出来なくなったのは寂しいが、学校への出禁は解けたのだから、また覗きに行けば良いのだ。

 真摯に魔法に向き合う凛々しいローリーの姿が見れるしな。

 優しいローリーも好きだが、強くて美しいローリーもなかなかに、すこぶる魅力的なのだ。


 ローリーの話では、あの子供は表彰式の前に消えてしまったらしい。

 邪魔者もおらぬ今、ゆっくり、じっくり、うっとり、ローリーを眺めようと学校に向かった。

 

 ローリーによると、アレは学校に憑いている座敷わらしで、悪さばかりするものだから懲らしめるためにローリーが一計を案じ、子分にしてやろうとしたら逃げて行ったそうだ。

 我が番いながら、あのような得体の知れないモノを子分にしようなど、全く豪胆なと驚くばかりであるが、同じようにローリーに謀られた者としては、身につまされる思いがする。

 我はアレが嫌いだし、ローリーを攻撃した事も許してはおらぬが、少しばかり同情しなくもない。

 ローリーは容赦がないからな。


 ププ。

 とはいうものの、我を小馬鹿にしていたアレがローリーにいいようにあしらわれたかと思うと、またコレはコレでいい気味である。




「何でお前がいるのだ! 我のローリーから離れよ!」


 居ないはずのモノがいた。

 思わず姿を晒して、ローリーの隣にへばり付いていたモノを引き剥がした。







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