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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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ティム

※ローリー視点

「アルだって年をとるんだから、もっと若くて強い人が竜王様になればいいのではないの?」 


「残念だけど、年をとっても黒竜に敵う竜はいない。そして現在、生存する黒竜は竜王様を除けば、竜王様のお父上、つまり先代の竜王様と叔父君の二人きり。たとえリアとの子が生まれても、黒竜のハーフだから生粋の黒竜には勝てないよ」


「そんな! もし、わたしが死んでアルが狂ったら、誰も止められる人はいないって言うの?」


「そうだ。大なり小なり、あの記憶を持つ者は心に傷を抱えている。そしてそれは、竜王様とて同じだ。だからこそ、竜王様の苦悩は深いんだよ」


 そして、アルの魔力は底なしかと思えるほど膨大で、精霊や魔族に匹敵するほどらしい。

 だから、その魔力を暴走させれば犠牲は計り知れない、とエリックさんは言った。


 魔族と聞いて、わたしは『竜の国』と同様、この大陸でよく知られているもう一つのおとぎ話『魔法使い物語』を思い出した。

 魔族も人間にとっては、竜族と同じおとぎ話の住人、もしくは都市伝説の類の存在。

 竜族だっているんだもんね、やっぱりちゃんと存在するらしい。

 ただ、魔族は稀少な存在で、エリックさんは見た事はないと言っていた。

 人間に完璧に擬態しているから、まぎれていたら見分けがつかないだろうとも言っていた。


 魔族がおとぎ話の住人でないなら、魔法使い物語も史実なのだろうか。

 ふと、そんな事を考えた。

 物語では、魔族、魔女は、魔力が高く不老不死で邪悪な者、人間を唆す者として描かれている。

 




「ねえ、最近、座敷わらし来ないね」


 次の授業への移動中、廊下でティムに話しかけられて、知らず知らずのうちに回想に耽っていたことに気付いた。

 アルは喧嘩の後、学校には来ていないようである。

 わたしが来ないでって言ったから、我慢しているのかも。

 ちょっと可哀想な気がするけど、いくら心配だからって始終見張られるのもねえ。


「もしかして、喧嘩でもした?」 


 ティムはあの大怪我を負った数日後、驚異的な回復力を見せ、けろりと元気な姿で現れた。

 魔力の高い者は生命力も高く、病気にもなりにくいし、怪我も早く治る。

 また、治癒魔法や回復魔法を用いれば、もっと早く治る。

 しかし、数日は異常だ。


 人間ならば!!


 でも、誰もおかしいと思ってないみたいで、あの大騒ぎも無かったかのように、普段の日常生活に戻っている。


「どうしてそう思うの?」


「だって、アレ、リアの知り合いでしょ? 僕が魔力を暴走させた時、庇ってたし。ねえ、つまらないから早くまた学校に来るように言ってよ。ね?」


 ティムはあどけない顔で無邪気にニッコリ笑って言った。


 ・・・・・・


 えーっと、機嫌を損ねてはやっぱりマズイ、のよね?

 災いを撒き散らすとか。


 わたしもニッコリ(・・・・)笑って答えた。


「うん、分かった。言っとくから」


 わたしはアルに警戒するよう言われ、ここのところティムを観察していて、ある一つの結論に至った。

 ティムはこの学校に憑いている座敷わらしではなかろうかと。


 座敷わらしは精霊的な存在で子供の姿をしているとか、悪戯が好きで、人間をからかって遊ぶとか言われている。

 あと、見ると幸運が舞い込むとか、守り神になって家を栄えさせるとか、縁起の良いモノと考えられている半面、機嫌を損ねたり嫌われたりすると、災いを撒き散らすというなんとも面倒くさい、恐ろしい存在である。

 まあ、精霊なんて気まぐれで加護を与えたり、災害を起こしたり、そういうものらしいから、座敷わらしだけが特別というわけではないけど、人間の近くに居る分厄介よね。


 まず、わたしに付いてる黒い呪い、つまりアルの嫌がらせだけど、アルは、ティムが子供だからって見逃していたわけではない。

 アルはティムに魔法を仕掛けても、何故か上手くいかなかったと言っていた。

 そしてこんな事は初めてで、だからこそ、相手の得体が知れなくて怖いのだと。


 それにあのティムが魔力を暴走させた時も、冷静に考えてみるとおかしい。

 わたしは実技演習の折、どさくさにまぎれて嫌がらせをしてくる輩がいるから常に周りを警戒して結界を張っている。

 結界に触れないわけないのに、わたしは後ろにいるティムに気付けなかった。

 アルの言うように、わたしにわざと魔法をぶつけるために、こっそり移動したとしか考えられない。

 おまけにアルに大怪我させられたのに、笑ってたのよね。

 あの時はわたしも動転していたから見間違いだと思ったけど、ティムが座敷わらしだとすれば、それも頷ける。

 人間には大怪我でも、精霊のようなモノにとっては大した事ではなかったのだろうから。

 おそらく、わたしに攻撃を仕掛けたのは、アルが来ていることが分かっていて、その反応を愉しむためにからかったのだ。


 観察していると、この座敷わらしは、とにかく悪戯が大好きな事が分かる。

 人間が喜んだり、怒ったり、泣いたり、笑ったりするのを見て楽しんでいる。

 見た目が小さな子供だから、みんなには疑われたり、警戒もされずに可愛がられているけど、大抵もめ事の張本人だったりする。

 仲たがいをさせるような事を無邪気に囁いたり、大切にしている物を紛失させたり、困ったことばかりするかと思えば、恋のキューピットになったりもする。

 

 なんというか、みんなを振り回して遊んでるって感じかしら。

 

 


「ありがとう! リアのおかげで毎日が愉快だよ。リアの事は本当に気に入っているんだ。ああ、そうだ。今度の校内競技大会は楽しみにしてるから。きっと優勝戦は僕と一騎打ちになるよ! リアがどんなに優秀だろうと、僕負けないから!」

 ティムは言うだけ言って、走り去って行った。


 ・・・・・・



 一方的にライバル宣言された。


 

 ・・・・・・



「なんでこうややこしいモノばかり、纏わり付いてくるかなあ・・・」



 




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