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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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アルベルト

※ディーン視点

 アルベルト=シュヴァイツ、竜王国の竜王であり、そしてイシュラム国ではシュヴァイツ侯爵閣下として知られている。

 

 人型は背に届くほどの黒髪と黒い瞳を持ち、上背のある凛々しく美しい壮年の男だ。

 そして竜の姿は通常の竜族よりも二まわりほど大きく、黒く輝く鱗と黄金に光る眼を持つ、俺達竜族が憧れてやまない黒竜である。

 

 竜族は皆、金色の眼を持つが、黒竜の黄金の眼は特別だ。

 この黄金色の輝きは、魔力の強さの顕現で、実際黒竜の魔力の強さは他に追随を許さない。

 そして、竜族は強い者に従う習性を持つ。

 

 

 

 竜王国という呼び名は竜王様がいる国という意味で、竜族に人間のような国家は必要ない。

 3000年前の大移動の前までは、大陸中に広く住んでいて国などという縛りも無く自由に移動していた。

 

 しかし、単体でなら竜族は人間よりも圧倒的に強いが、集団で行動する人間に対して個で生きる竜族では、竜族に分が悪い。

 鼠算式に増えていく人間に追われて、もともと竜族が多く住んでいた大陸の東南にある秘境の渓谷に、竜族だけの国をつくった。

 結界を強いて人間に見つからないように隠れて住み始めたのが3000年前のことである。

 人間の前から姿を消して3000年、短命な人間は今では我ら竜族の存在を忘れ、過去の絶滅種族あるいはおとぎの国の住人として認識しているに過ぎない。

 

 しかし、そうやって鎖国を続けてきた弊害で、今から300年程前に若い雌だけがかかる病が大流行した。

 その死病は、これから子を産むはずの多くの雌と子を産んだばかりの若い母親、そして番いを亡くし絶望した父親を奪った。

 

 ただでさえ、子が生れにくくなって、また生まれたとしても病弱だったり、夭折してしまうことが増えて、竜族の存続を危惧していたところであった。


 当時アルベルト様は、300歳。

 先代の竜王様より代替わりをしたばかりだった。

 まだ、番いは見つかっておらず独身で、それはこの竜王国にとっては幸いな事であった。

 そうでなければ、今、竜王国は存在していないだろう。


 俺はまだ生まれてなかったからよく知らないけれど、宰相様の話ではそれはそれは凄絶な状況だったらしい。

 特に番いのいる若い雌が亡くなった時、遅かれ早かれ時期に違いはあれど、番いの雄は最終的に同じ結末を迎える。

 即ち、絶望し狂って、魔力を暴走させて自爆する。

 当人は悲しみに呑まれてしまって、訳も分からず、親や子が周囲にいようがいまいが関係なく暴走してしまう。

 そのため多くの者達が巻き添えを食って亡くなった。

 

 そして、それを食い止めるためにアルベルト様は自らその者達の処分に赴いたのだ。


 

 また、そうする一方、未だ感染を免れている雌達のために結界のシェルターを作り面倒をみた。


 そして若い雌の番いを持つ雄の国外脱出の希望、それは即ち国を見捨てると同義の言葉ではあったが、それを快く受け入れ、国庫から支度金まで出してやったのだ。



 最終的にその死病が終息したのは、シェルターに匿った若い雌達に番いのいない竜族の若者を付け、竜王国から出した後、即ち若い雌が竜王国から一人残らず消えた頃だった。


 竜王様は国庫が空になると、王宮や自分の私財を持たせられるだけ持たせ、その者達を送り出したから、竜王国に残されたものは、年寄りと子竜と空っぽの王宮だけだった。





 そんな竜王国をアルベルト様は復興させた。

 

 アルベルト様に感謝しない竜族など一人もいない。


 そして、宰相様や俺達竜王様に育ててもらった子竜にとっては、竜王様は憧れの黒竜であり、敬愛すべき竜王であり、そして慕ってやまない恩人で、大好きな大好きな父親なのだ。







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