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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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エリックの話1

※ローリー視点


また、高い評価点を入れていただきまして、ありがとうございました!

嬉しくて、励みになります。

お礼申し上げます。

 わたしは顔色をカメレオンのように赤や青や白に目まぐるしく変えて、怒りと羞恥に体を震わせていた。

 

 アルと喧嘩をして離宮を飛び出した後、追いかけて来たディーンのポロっとこぼした言葉がきっかけで、重大な事実が判明したのだ。

 

 ディーンは、寄宿舎にいたわたしを呼び出し、どういうことなのかと問い詰めてきた。

 アルベルト様は抜け殻のようになって何も話さないし、お前は知らぬ間に戻ってしまっているし、驚いてとにかく状況を知りたくて戻って来たのだと言った。

 わたしは、概要を説明し、アルがわたしを信用して学校に来ないと約束するまで、仲直りつもりはないときっぱり宣言した。

 するとディーンがボソッと、マーキングが切れかかってるというのに困ったヤツだと舌打ちしたのだ。

 それをわたしが見逃さず、どういうことなのかしらと聞き咎めた次第である。

 ディーンは誤魔化そうとしたが、例の体中に虫を這わせる魔法で問い詰めるとあっさりと白状した。

 

 竜族におけるマーキングとは、自分の所有物であるということを周りに知らしめるために行う行為である。

 ふむふむ。 

 マーキングされていない雌は、横取りされたとしても、雄は所有権を主張出来ない。

 なるほど。

 そう言えばアルが初めて襲いかかってきた時、ツバを付けておいたとかなんとか言ってたなと思い出した。

 そしてそのマーキングは大体一週間で効果が切れてしまうとのこと。

 一週間! わたしは悟った。

 最低でも一週間ごとに繰り返さないといけないマーキング行為って・・・・・・

 まさか、週末ごとの魔力の注入がそんな意味を持つなんて、全く知らなかったわよ!

 

 他人の魔力を体内に持っている事が、お手付き(・・・・)を意味していたなんて、恥ずかし過ぎる!

 普通に道を歩いてる事が、そういう相手がいます、いたして(・・・・)いますってみんなに宣伝して回ってるのと同じだなんて、もう信じられない!

 それで街を闊歩していたなんて、わたし、もう二度と外に出られない!と恥ずかしさに悶えていたら、ディーンが人間は魔力の中の竜気を感知出来ないからと慰めてくれた。

 それを聞いてちょっと落ち着くことが出来た。 

 落ち着いてくると、わたしに断りもなくこのような辱めを受けさせたアルへと、怒りがふつふつと沸き上がってくる。

 

 わたしの怒りが沸点に達しようとしているのを見てとり、ディーンが竜族では殺し合いになるから、むしろそうすべき行為なんだ、全く恥ずかしいことじゃないんだと必死に言い訳をする。

 でも、わたしはディーンがなんと言おうと、監視するだけでは飽き足らず、こんな恥ずかしい思いをさせたアルに怒りがさらに増すばかりであった。






「ちょっといいかな」 

 週末、離宮の自室にいると、エリックさんが訪ねてきた。

 一人なんて珍しい。

 フェリシアさんと一緒じゃない時もあるのね。


「はい、どうぞ」

 どうせみんなと同じ、アルと仲直りしろっていう話なんだろうなと見当をつけ、了承の返事をした。

 

 ディーンを筆頭に、宰相様やフェリシアさんにまで、しつこいくらい言われ続けている。

 アルのやきもちやわたしの身の安全を心配しての行動は、竜族としては当たり前の行動でなんらおかしな事ではない。

 雄の習性なのだから仕方がない。

 それほど番いは大切なものなのだ。

 人間には窮屈に感じるかも知れないが、許してやって欲しい。

 などなど。

 くどくど。


 わたしがテーブルの上の魔法構築の本とノートを片付け、お茶の準備をしようと席を立ったら、必要ないと言われ座るよう促される。


「で、エリックさんもアルと仲直りしろって話ですか?」

 うんざりしていたわたしは、ぞんざいな口調でエリックさんに食ってかかった。


「いや? リアがいずれ竜王様の元に行くのは分かっているからね。心配してないよ?」

 エリックさんの、わたしの意志を無視したような言いようにカチンときた。 

「どういう意味ですか? わたしには拒否する権利はないって事ですか?」

 わたしはムッとして、険呑な口調で問いただした。 


「いや、そうじゃない。君は自ら望んで竜王様のところに行くって事さ。番いとはそういうものだからね」


 !!


「驚いたかい? 竜王様だって、他のみんなだって知っている。竜族にとっては常識だよ? 番いの絆は強くてね、双方向に働く。おそらくリアはまだ幼くて感知出来てないんだろうけど、番いと出会えば、己の感情や意志にかかわらず、その相手を求めずにはいられない。それほどに苛烈なものなんだよ。リアは既に竜王様に出会ってしまった。どんな結末を迎えようとも、その運命は変わらない。竜王様は隠したいようだけど、番いであるリアは知っておいた方が、俺はいいと考えているんだ。それで、ちょっと昔話でも聞いてもらおうと思ってね、来たんだよ」


「昔話、ですか?」

 エリックさんの話は、分かったような分からないような思わせぶりな謎かけで、わたしをいらつかせる。

「竜王国が危機に陥ったことは知っているだろう?」


「はい。若い女性だけがかかる病が大流行して、大勢亡くなったと聞きました。そのため竜族の若い男性は人間に番いを求め、国から出るようになったと」


「その通りだ。俺とフェル、それからリアの先祖にあたるアリシラ、他6人は、病が大流行したその時、竜王国を脱出した最後の竜族だった」

 エリックさんは自嘲するように言い、一呼吸おいてから、気を取り直すように口を開いた。


「ところでリアは、俺とフェルは番いじゃなくて、パートナーだということは知っているのかな?」


「え? 番いとパートナーは違うの? フェリシア母さまは確かに時々パートナーという言葉を使うけど、番いもパートナーも人間でいう夫婦みたいなものでしょう? 同じだと思ってたけど・・・」


「愛情で結ばれた夫婦という意味では同じだ。だが決定的に違う事がある。それはね、子供だ。番いには子供ができるけど、パートナーとは子を成すことはないんだ。どんなに愛し合っていようともね」

 私達には子供ができないのと、言っていた時のフェリシアさんの悲しそうな顔が思い浮かぶ。

 フェリシアさんはとても母性の強い女性だと思う。

 実の母親よりも母親らしく、わたしとジョシュを守り、愛してくれている。


「全ての竜族が番いと出会えるわけではないんだよ? 番いを探し求め一生独りで過ごす者、番いを諦めてパートナーと一生を過ごす者、そして番いが見つかるまでと割り切って、共に過ごす恋人達もいる。竜族にとって、番いとは生き方を左右するほど重要且つ強烈で、そして、残酷なものなんだよ」


 エリックさんは瞳の奥に深い悲しみを湛えたまま、わたしを見据えて言った。






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