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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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暗雲2

※後半部分 ローリー視点

 ローリーがなぜか怒って、我を放って一人で寝てしまった。

 どうして怒ってしまったのだろう?

 我はまた何か失敗をしてしまったのだろうか。

 ローリーに尋ねても、別に、と言うだけで、理由は教えてくれなかった。


 まさか、バレたのではあるまいな。

 先ほど、ディーンの不在を問われて困ってしまった。

 我がローリーを番いだと宣言してから、ディーンは宰相と頻繁に連絡を取り合っているようである。

 

 そのあたりから、我がシュヴァルツ侯爵である事がバレたとか? 

 ま、まさか、竜王だということまで!?

 

 ああ、どうして我はバレる前に白状しなかったのだ。

 言おうとは思ったのだ。

 全部話して、ごめんなさいしたら、ローリーは受け入れてくれたのではないだろうか?

 でも、言った途端にこれまで優しく笑いかけてくれていたローリーの態度が変わったら?

 怖い。

 好きだと言ったら、ローリーも好きだと返してくれたのだ。

 我はこの夢のように幸せな時間が終わるのが怖かった。

 少しでも先延ばしにしたかったのだ。

 

 ああ、きっと我が嘘をついていた、騙していたと怒っているに違いない。

 時間を巻き戻してくれる竜王がいればいいのに。

 自分にも、ローリーにも、我は役立たずだ。

 

 ローリーからピリピリと我を気にしている気配が漂ってくる。

 このままではローリーが寝られないだろうと思って、我はディーンのベッドに入った。

 そもそもディーンがへまをやらかしたに違いないのだ。

 ベッドがなくて、長椅子で寝る羽目になったとしても、自業自得だ。


 しばらく鬱々と悩んでいたら、隣のベッドの中からくすっと小さな笑い声が聞こえた。

 え? あれ? 

 また、くすくすと声を殺して笑っている。

 話しかけてみるべきか、どうしようと、しばらく耳を澄ませて様子を窺っていると、スースーとローリーの寝息が聞こえ始めた。

 

 さっきの笑い声は何だったのかな。

 いつものように、我のことを仕様がないなあと笑って許してくれるつもりかな。

 ローリーはいつも我がへまをする度に、今まではそう言って許してくれたのだ。

 なんだか今度もそんな気がして来た。

 

 少し気分が上向きなったところで、ディーンが戻って来た。

 我はローリーが起きないように魔法をかけてから文句を言った。

「お前がこそこそ動いているせいで、ローリーにバレたではないか!」

「何の事ですか?」

 ディーンはきょとんとして問い返してくる。


「だから、我らの正体だ」

 我は断固として抗議する。

 お前のせいで、ベッドを分けられる事になったんだぞ。


「は? いつそんな事になったんです?」

 ディーンも驚いたようだ。


「ついさっきだ。ローリーが怒って我を放って一人で寝てしまった。我には空いている方のベッドで寝ろと言って、うっ」

 悲しくて涙が出てくる。


「きっと正体がバレたのだ。だから、騙していたと怒ったに違いない」

 我は言い切った。

「じゃあ、はっきり言われたわけではないんですね?!」

 ディーンは明らかにほっとした表情をして聞き返してくる。


「でも、怒って、」

「もう一度聞きます。はっきりシュヴァルツ侯爵や竜王様の名が出たわけではないのですね?」

「それは、ない。でも、ローリーは怒ってたんだぞ? 他に理由などないだろう?」


「驚かせないで下さいよ。言っておきますけど、オレはローリーにバレるような馬鹿な真似はした覚えはありません。バレてませんよ。きっとアルベルト様が何かしてローリーを怒らせたに違いありません」


「なんだと?」

 ムッとして言い返してみたものの、違うとも言い切れない。

 今までにも、知らないうちに怒らせてしまった事がある。・・・何度もある。

 う~んと頭を捻って心当たりを必死に探っていると、ディーンが真剣な顔つきで言った。


「そんな事より、アルベルト様。お耳に入れたい、もっと重要な話があります」





 

「あれ? アルがディーンに代わってる」

 翌朝早朝、隣のベッドにはアルじゃなくて、ディーンが寝てた。


「ん? ああ、アルベルト様はちょっと出かけた。朝飯には間に合うように帰って来るだろう」

 ディーンがベッドの中からまだ眠そうに答える。


 アルまで? こんな事、今までなかったのに。

 オレが怒ったから? だから出て行っちゃったのか?

 謝ろうと思っていたのに。

 

「あ、そうだ。お前、昨日怒ったんだってな。なんで怒ったんだよ?」

 ディーンが訊いて欲しくないことを尋ねてきた。

「別に怒ってないよ! ディーンこそ、昨日はどこに行ってたんだよ?」

 だから、逆にこっちが訊きたい事を問い返した。


「はあ? どこでもいいだろ?! お前こそ怒ってないなら、なんで一緒に寝なかったんだよ?」


「一緒に寝たくなかったんだよ。そういう時だってあるだろ? オレの事はどうでもいいんだよ、それより、ディーンは夜に何の用があって出かけたりするんだよ?」


「なんだっていいだろ、お前には関係ない」

 

「教えてくれたっていいじゃないか」

 そもそもディーンが内緒で出かけたりするからいけないんじゃないか。

 でも、ディーンは繰り返し訊いても白状しない。


「お前、しつこいぞ、男の事情だよ」

「は? 男の事情って?」

 

 ディーンがニヤニヤして言った。

「男の事情、お前だって十四にもなればそろそろ分かるだろう? あ、体は七つのままか。すまんすまん、子供には分からん大人の事情だよ」

 


 あ、オレは理解した。

 顔が赤くなっていくのが分かる。

 ディーンはオレの顔を見て、ますますニヤついている。

 

 そこで、また気が付いた。

 もしかして、アルも?

 

 なんか、嫌だ。

 むかむかする。

 さっきまでアルが出て行った事を不安に思っていたのに、そんなものはどこかに消え失せて、怒りが再燃してきた。

 謝ろうと思っていたのに、不思議なことに口も訊きたくないし、顔も見たくなくなった。

 


 


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