求愛作戦3
かるーく読みながしていただけると幸いです。
飽きないうちに物語を進めていきたいと思っております。
ディーンにあれでは褒めるどころか、逆に悪口だと説教された。
ごちゃごちゃと、全く意味が分からない。
でも、とりあえず頷いておいた。
説教は聞いているフリをする。セオリーだな。
しかし、困った。
求愛作戦その一はどうやら失敗のようである。
次に移るべきか。
求愛作戦その二。
優しくして、好意を示す。
女性というものは、好意を向けられて初めて異性として意識し始めるらしい。
ふと気が付くと、いつの間にかディーンは居なくなっていて、一人で悶々と考えていたらしい。
慌てて馬車に戻ると、ローリーが声をかけて来る。
超能力? 特別な力を使うと疲れる? 何の事か我は分からなくて戸惑っていると、何やら二人で小声で内緒話を始めた。
仲良くじゃれあっているように見える。
もう一度言う!
我はのけ者で、二人で仲良くじゃれあっているように見える!
思わず声が漏れた。
「お前たちは仲良しでいいな」
二人はそれから言い訳がましく、我にいろいろ話しかけて来た。
それがまた、仲良く二人で結託し、助け合っているようにも見えて、腹立たしく、そして悲しい。
しかし、我はローリーの愛を得るために、もういじいじしたりしないのだ。
シャキッとして、大人の振る舞いをしなくてはならん。
そして、次なる求愛作戦その二を実行するのだ。
御者が馬に水を飲ませたいから、と言って小川の畔で休憩をとることにした。
ローリーが馬車を降りようとするところを制して、我は先に降り、ローリーに手を貸して馬車から降ろしてやった。
優しくして、好意を示すのだ。
女性をエスコートするのは紳士の務めでもあるしな。
だから、ローリーが小川に近付いて落っこちないように気を付けたり、石に躓いて転ばないように手を貸してやったりした。
ローリーは馬が好きなようで、水を飲んだり、草を食んだりしているところをじっと眺めている。
そして我は、そんなローリーをじっと眺めている。
ああ、いけないいけない。
あんまりじろじろ見てはいけないと、ディーンに注意されたのだった。
ついローリーを眺めていると、時間を忘れてしまう。
そこで視線をそらせて周りを見ると、ふと可愛らしい小さな桃色の花が目に入った。
小さくてローリーのように愛らしい花だと思って眺めていて、パッと閃いた。
そうだ、花束にしてプレゼントしよう。
確か人間は求婚する時に、花束と指輪を贈るのではなかったか。
求婚とは究極の好意を示す行為だ。
早速、咲いている花を摘んだ。
うむ、思ったよりも少ないな。
これじゃあ、花束とならないような気がする。
しかし、他に花は咲いておらず、困ったところに目に付いたのが、形の変わった葉っぱだった。
なかなか愛らしい形の葉っぱだから、きっとローリーは気に入ってくれるだろうと花束の一員に加えてやった。
花束らしくなったので、ローリーに渡すことにする。
緊張しながら、ローリーに近付いて行く。
えーと、なんて言って渡せばいいのだ?
まさか、けっこんして下さいとは言えないしな。
えーと、えーと、
「ローリー、これ、好きだからやる!」
言って、花束をローリーに押しつけた。
自分の顔がどんどん赤くなっていくのが分かる。
とても恥ずかしくなった。
だからつい、両手で顔を隠し、走って馬車に戻って来てしまった。
馬車の中にはディーンが居て、急いで戻った我に驚いて声をかけて来る。
でも、告白まがいの事をしてしまったと、うろたえてしまって、とても話せない。
ああ、ローリーはどう思っただろうか?
ローリーが戻って来た。
手には何も持っていない。
アレ?
「アル、ちゃんとあげて来たよ。喜んで食べてたよ!」
ローリーはにっこり笑って、我に報告する。
「「え?」」
ディーンと我の声が重なった。
「馬はクローバーが大好きだからね!」
どうやら我が想いを込めて渡した花束は、馬の餌と勘違いされたようである。
落ち込んでもいられないので、求愛作戦その三に移行する。
求愛作戦その三。
男らしさアピール作戦。
悪者がやって来たら、姫を守る騎士のごとく、前に出て戦うべし!
命の危機から自分を盾にして守ってくれる強い男には、感動して惚れるに違いない。
ちょうどその時、馬車の中に悪者の蜂が飛び込んで来た。
狭い馬車の中を嫌な羽音をさせながら、飛び回る。
虫の嫌いなディーンはぎゃあぎゃあとわめいて逃げ回る。
よし、ここは姫を守る騎士のごとく、我が蜂を成敗してくれる!と思ったが、どうやって成敗すれば良いのだ?
手で叩いたら、手のひらを刺されそうである。
どうしようと迷っていたら、蜂が我の顔めがけて飛んで来てしまった。
思わず、ぎゃああーと目を瞑ったら、目の前でボッツという音がした。
ゆっくり目を開けると、炭になった蜂が落ちている。
ローリーが火魔法を使って退治してくれたようだった。
「大丈夫か?」
にっこり余裕の笑みを我らに向けて、気遣う言葉をかけてくれた。
悪者を前にして、怯むことなく立ち向かい、強い男アピールしたのは、ローリーだった。