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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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アルベルトその後のその後

※ディーン視点

 ストーカーが恋する乙女に進化した。

 思えば、午後の馬車の中からおかしかったのだ。



 ローリーが船を漕ぎ始めて、日頃生意気な奴の隙だらけの様子に、俺はイタズラ心がくすぐられ、こよりを作って鼻の穴に入れて遊ぼうとしていた。

 そこを竜王様に止められた。

 竜王様はローリーの頭を自分の膝の上へ導き、ニッコリ笑う。

 ローリーを愛でる気満々だな。


 今朝、散々ストーキングについて小言を言ったから、まあ、少しくらいは目をつぶってやろうと、本当に目を閉じた。

 どれだけじろじろ見ても、当人に気付かれなければ問題ない。

 ストーカーを前にして、寝こけているローリーが悪い。

 ということで、本当に目を閉じていたら、馬車が程よく揺れて、俺はマジに眠ってしまったみたいだ。


 目を開けると、驚いた事に竜王様は真剣な顔つきでローリーを凝視していた。

 いつものニマニマデレデレ顔で、きっと飽きもせず眺めていたんだろうなーと思ったのに。

 そして、何を考えているのか視線を泳がせては、顔を赤らめたり、頭を掻き毟ったり、首をぷるぷる振ったり、あーでもないこーでもないとブツブツ呟きながら、思案にくれている。


 俺の視線に気付いて、どうした?と声をかけて来たのだが、いやいや、どうしたはこっちのセリフですよ。

 キテレツなのはいつもの事ですけど、尋常でない様子を見れば、そりゃ驚くでしょうよ。

 

 俺が問うと、ローリーの事なのだが・・・、と言って黙ってしまった。

 まあ、寝てるとは言え、当人の前では言いにく事だったのだろうと、俺もそれ以上聞くのはやめておいた。


 

 そして、今、竜王様は顔を真っ赤にして俯き、おちょぼ口でもそもそと食事をしている。

 その後も、横目でチラチラとローリーを窺っては、頬を染め、もじもじする事をずっと繰り返していた。

 話しかけたいけど、恥ずかしいんだもん! 的な?

 

 これはもしかして、自分がローリーを好きだという事を、とうとう自覚したとか?!

 そうか、そういうことか。

 ストーカーと恋する乙女、ってどっちがマシかな、ローリー的には。


 しかし、なんか複雑だな・・・竜王様の恋のお相手がこんな小汚いくそ生意気なガキとは!!

 番いがあまりにも長い間見つからないもんだから、本能が機能障害を起こしたのかな。

 魔力のみに反応して、性別や成熟度は度外視してしまったとか。

 なんだかなー。残念極まりないというか・・・

 体躯が立派な黒竜には、ぼんきゅっぼんの美女が似合うと思うんだけどなー。

 だがまあ、仕方がない。

 どんな相手であろうと、恋をしてしまったのだから。

 恋は止まらない・・・何者であろうとも・・・

 


 ああ、でも痛すぎる!

 憧れの黒竜が・・・部屋の隅でもじもじとか・・・うじうじとか・・・

 

 竜は肉食だぞ!! ガツガツ肉食系で攻めろよと言いたい!! あー、焦れったい!!

 一昨日は嬉々としてローリーのベッドに潜り込んだくせに!!

 ベッドが三つあったにもかかわらずだ!!

 

 今日はベッドが二つ。

 きっとローリーが三つ頼んでも無駄になると思って二つにしたんだと思う。

 竜王様に言っても多分聞かないのが分かってるから、諦めたんだな、きっと。

 ローリーは、竜王様を子供好きの変人と認識していて、よっぽどの害が無い限りは、文句を言ったり、抵抗したりしなくなっている。

 認めているというよりは、スルーされているだけのような気もするが、とにかく、今は!一緒のベッドに寝る権利は得ているんだから、恥ずかしがっていないで、さっさとローリーの隣に潜り込めよ!


 

 ローリーはすっかり寝入ってしまった。

 時間が経つばかりで、一向に動く気配のない竜王様にもう一つのベッドを譲る事を申し出た。

 俺、一応従者だし? 年寄りを差し置いて若者の俺がベッドに寝るわけにもいかないし?

 そうしたら、竜王様は考え事をするからと言って、俺の申し出を断り、長椅子に腰かけ腕を組みウンウン唸り始める。


 うん、一応、従者としても若者としても責任は果たした。放っておこう。

 

 俺は竜王様を放置して寝たのだが、突然の悲痛な叫び声に飛び起きることになった。

 枕元の剣を引き寄せ、気配を窺っていると、竜王様がローリーに慌てて駆け寄って行くのが見える。

 

 ああ、ローリーかと理解する。

 最近はずっと竜王様が魔法をかけていたから、すっかり忘れていた。

 考え事に夢中で、竜王様も忘れたんだな、きっと。

 でも、寝ぼけたローリーに縋りつかれて、ある意味喜んでいるんじゃね?なんて、その言葉を聞くまで、俺はのん気に構えていた。

 

 今、なんと言った? 竜の王様?

 正体を知ってるっていうのか?!

 竜王様も驚いて、何か知っているか?というように俺の方を見る。

 俺が首を横に振ると、寝ぼけてうわ言のように繰り返すローリーを揺さぶり声をかける。


 ローリーもしっかり目が覚めたようだ。

 なんとかごまかそうと必死に言い訳しているが、ごまかし切れない事はローリー自身分かっているのだろう、顔が青ざめている。



 竜王様に諭されて、ローリーの重い口からポツポツと言葉が紡がれていく。


 

 



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