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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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驚愕の事実2

 まずいまずいまずい。

 このままでは、レノルド国で魔石を換金して山分けにしたら、じゃあね、バイバイになってしまう。

 なんとかせねば。


 湖を後にして、元の道へ向かう。

 ローリーを再び肩に乗せようとしたが、察知されて逃げられた。

 まずいまずいまずい。


 どうする?

 もっと親交を深めて、客から知り合い、もしくは友人いや親友になったらどうだ?

 いいな、それはいい。親友ならしょっちゅう一緒に居たっておかしくない。

 でも、どうやったら親友になれるのだ?


 ・・・・・・


 ま、まずは仲良くなることだ。

 仲良くなるには、プレゼントだな! 

 番いに求婚する時だって気を引くために贈り物をするのだから、効果はあるはずだ。


 ローリーの欲しい物って何だ?

 

 うむ? ・・・・・・カネ?

 

 換金したカネ全部やるから、もうしばらく我に付き合え?


 アレ? なんか、違う気がする。


 でも、ローリーはカネが欲しい。これは真実である。

 いや、駄目だ。そんな卑劣な真似は出来ない。


 

 うむ・・・・・・最終手段として頭の片隅に残しておこう。




 悶々と頭を悩ませ歩きながら、ローリーの後姿を眺めていると、様子がなにやらおかしい。

 心なしかふらついているようにも見える。

 

 あ、眠いのか。今日は泳いだしな、疲れたのかもしれない。


「ローリー、眠いのか? 我におぶされ。ほれ」

 前で屈んで促すが、当然素直におぶさるはずがないので、ディーンにローリーを捕まえさせおぶった。

 背中で暴れたが、まあいつもの事だから、知らんぷりをした。


「道にはここをまっすぐ行けば、合流するんだろう? 我らの事は気にしなくとも良いから、寝て良いぞ」

 

 ローリーは、魔物は近くにいないみたいだから、ゴメン、じゃあ少しだけと言うと、我の背ですぐに寝てしまった。

 やっぱり眠かったんだな。子供だからな、子竜と同じだ。


 そうか、子竜と同じか! 子竜が好んだ事をすれば良いのだ。

 しかし、子竜と言えば肩に乗せる事しか思い浮かばないな。


 そういえば、我から引きはがすのに宰相の奴が菓子で釣っていたな。

 しかし、今は菓子の持ち合わせがない。あるのはディーンからもぎ取ったカネが少々・・・

 駄目だ駄目だ。ソレは頭の片隅に置いておくと決めたのだ。


 つらつら考え事をしながら歩いていたら、あっという間に道に合流し休憩所に到着していた。

 ローリーも起きて、恥ずかしそうに礼を言うと、休む準備や食事の用意を始める。




「何事もなく順調にいけば、明後日夕方にはレノルドに着くよ。その足でオレの知り合いの店に行って、魔石を換金しよう」

 食事をしながら、ローリーが話す。


 明後日。あと二日。時間がない。


「オレ今日は疲れたから、先に休ませてもらうね。結界はちゃんと張っておいたから」

 そう言うと、一人でさっさと片付けて寝支度に入る。


 え? もう、寝てしまうのか? 語らい親交を深めるという計画が・・・

「ローリー、ちょっと待て」

「何?」


「・・・・・・えーと、ほ、ほら、魔獣狩りも中止になったことだし、料金の徴収を再開したらどうだ?」


「??? えー?! いいよ、もう。二人には世話になったし、魔石は山分けしても十分あるから」


「まあ、そう言わずに。早く壷を出せ。我が入れてやるから」

 

 怪訝な顔をしながらも、ローリーは壷を差し出した。


「今日は食事代と敷物と雨避けと毛布代か、銀貨四枚だな。あー、しまった銀貨の持ち合わせがない!!

 悔しいが金貨しかないから、コレを入れるしかないな」

 我は金貨を一枚、壷に投入した。ローリーはきっと大喜びすると信じて。


「・・・・・・」

 

 アレ?


「イヤミ? それともオレを小馬鹿にしてんの?」


「え?」


「ディーンじゃあるまいし、アルがそんな人だとは思わなかったよ」

 捨て台詞を残して行ってしまった。

 

 え? え? 今、いったい何がどうなって、ローリーは怒ったのだ?

 

 我は何が何だか分からなくて、助けを求めるようにディーンを見た。

「ディーン、ローリーが何故か怒っているように見えたのだが、我の気のせいか?」


「・・・・・・」


 はー、とディーンは大きなため息をついて、我に残酷な事実を告げる。

「完全に怒ってましたよ」

「なぜだ? ローリーはカネが欲しい。三日前までは喜んで受け取っていたではないか」

「三日前とは状況もローリーとの関係性も変わったんですから、アレはないですよ」


 状況? 関係性? ディーンの言うことがさっぱり分からない。

 だが、我が何かマズイ事をしたということだけは理解した。




 おかしいおかしいおかしい。

 仲良くなるどころか、嫌われてないか、ワシ。

 ローリーが朝から口をきいてくれない。


 片付けのお手伝いを申し出ても、肩に乗せてやろうと言っても、丁重に断られた。

 ローリーの態度がとてもよそよそしくて、この世の終わりじゃないかと思うくらい悲しい。

 

 イジイジしていたら、ローリーがしようがないなーと言って、手を引いてくれた。

「どっちが子供だよ」

 

 許してくれたみたいだ。良かった。

「すまぬ」

 ローリーが我の事を困った人だねと言って苦笑した。





 昼食をとっている時に、遠くに鹿の群れを見つける。良いことを思いついた。

 我もディーンのように鹿を焼いて食わせてやろう。

 魚は喜んで食べていたから、昨夜のような失敗をすることはないだろう。


「ちょっと待っていてくれ」

 我は静かに駆けて行き、さっさと一頭仕留めて戻った。

「今晩は、我が皆に馳走する」

 二人は顔を見合わせて驚いていた。



 辺りに旨そうな匂いを漂わせながら、大きな塊の肉をじっくりと炙る。

「さあ、できたぞ」

 二人にそれぞれ骨付きの塊肉を渡す。

 ディーンは早速肉にかぶりつく。うまいうまいと食っている。よしよし。

 

 ローリーはというと、肉を眺めるばかりで食いつこうとしない。あっ、そうか。

「ローリーすまなかった。気がついてやれなくて。それを貸してみろ」

 

 我はローリーの肉を受けとると、ガブリと食いついてはペッと吐き出し、食いついてはペッと吐き出して、一口大にしてやった肉を器にのせて、ローリーの前に差し出した。


「!!」

「え?」


「? どうした? これで食べやすくなっただろう? うまいぞ?」


 我も食べてみる。うん、うまい。これならローリーだって気に入るはずだ。

 なのに、目の前に置いてやった肉をじっと眺めるだけで、手を出そうとしない。


 そうか、こんなふうにされたのがきっと初めてなんだな。

 魚だって焼いてもらった事が無かったのだから。

 我はローリーに優しく話しかける。

「まだ子供だったディーンを狩りに連れて行ってやった時のことだ。上手く獲物を仕留めたまでは良かったのだがな、なかなか食おうとしないで我を悲しそうに眺めるのだ。どうやら骨が固くて食べられなかったみたいでな、我がカミカミして前に出してやったら、嬉しそうに食っていた。誰でも子供のうちは口が小さいのだから、恥じる事はない」

 

 ローリーは、ハーと大きなため息をつくと、おもむろに肉の乗った器をディーンの前にずらし、ディーンが持っていた新しい塊肉を分捕ると、いつの間にか取り出した小刀で器用に肉を削ぎ、うん、うまいよと食べながら軽い調子で驚くべき事実を告げた。


「騙すつもりも、隠すつもりもなかったけど、こんな姿なのには理由があってさ。説明するのが面倒だからいつもはそのまま誤解させとくんだけど、もうオレ、アルがオレの事を小さな子供扱いするのがいたたまれないよ。だから、白状する。オレ小さな子供じゃないんだ」








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