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竜王様のへタレな恋  作者: Ara
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魔獣狩り2

 昨夜もやはりローリーは夢を見て泣いていた。親を想って泣いているのだろうか。

 我は再び深い眠りへと導く魔法をかけた。

 ローリーが哀れでならない。




 翌朝、暫くの間は、ゆっくりと食事をとれないだろうということで、しっかり朝食をとった後出発した。

 ローリーは昨日話した通り、途中で脇道に入って行った。

 しばらく歩くと道と呼べるものはなくなり、林の中に入ると、ローリーが振り返り言った。


「ここからは魔物がうようよいる領域だ。だから、一人ずつ結界を張っておく。ただし、これはふいの攻撃用で、一回こっきりしか使えないからな。一度の攻撃を弾いた後は守りが無くなるから、早急に相手を倒す必要がある」


「分かった」


「承知した」

 我らには必要ないが、今は人間の振りをしなければならない。ローリーすまぬ。


 ローリーは杖を取りだし、一人一人に向け呪文を唱えた。



「行くぞ」

 ローリーは真剣な顔をして、探知魔法を使い辺りを窺っている。

 

 ローリーが止まった。

「来るぞ」


 ディーンが前に出て剣を構える。

 シュルシュルという音が辺りから聞こえたと思ったら、2メートル程の蛇がうようよとこちらに向かって這って来る。

 一匹が大きく口を開けて、飛び掛かって来たと思ったら、次々後に続く。


 ディーンと我も飛び掛かって来るものは全て切り捨てていくが、何しろ数が多過ぎる。

「キリがないな」ディーンがぼやいた。


「オレに任せろ」

 黙って後ろに隠れていたローリーが前に出て来て、杖の先から炎をほとばしらせ、その炎を地面へ付ける。すると辺り一面へと地面を炎が這っていく。それと同時にローリーは左手を上に上げ、ゆっくりとふんわり下ろした。


 火に炙られた蛇は飛び上がり逃げようとするが、何かに阻まれたかのように出る事叶わず、爆ぜては戻されまた爆ぜては戻され、暫くすると大人しくなった。

 我もディーンもあっという間の出来事に声も出なかった。


「蛇の蒸し焼き一丁あがり!」

 へへっとローリーが得意げに言った。


 ヒューと口笛をふき、ディーンがローリーを褒める。

「お前やるじゃないか。一気に全滅させやがった。でもさ、普通、火魔法っていったら火炎で焼き尽くすもんじゃないのか?」


「オレは人間なんだよ? おとぎ話の竜じゃあるまいし。そんな火魔法ぶっ放したら魔力をゴッソリ持っていかれちゃうよ。これから、魔獣狩りをしようってのに、そんなことできるわけないだろ。省エネだよ。省エネ!」


「え?」


「ディーン、来るぞ」

 蒸し焼きの蛇の山がゴソリと盛り上がり、中から巨大な蛇が鎌首をもたげる。

「これは俺がやる」

 ニヤリと笑ってディーンが飛び出して行った。




 

 その後もちらほらと魔物が襲って来たが、難なく切り伏せ、魔石が出れば拾った。

 

 そして、ジャイアントボアの群れが今、目の前にいる。 

「大きな群れだが、こいつらはまっすぐ突き進むしか能がないから簡単だ」

 ローリーは火魔法で群れの周りを囲み、突き進んでくる群れに向かって氷魔法を放った。

 辺りが冷気に満ちていく。

 動きは鈍ったもののこちらに向かってくる群れに、ディーンが突っ込んで、次々と首を落としていく。

 すり抜けたものは我とローリーが片付けた。

 ローリーは器用に氷の刃を風魔法で飛ばし、ジャイアントボアの首を刎ねる。

 ぬしと思われる巨大なジャイアントボアも現れたが、ディーンが難なく切り伏せた。

 首を落としたジャイアントボアの体は次々と霧散し、魔石だけ残っていく。

 大きさは大小様々であったが、三十ばかりの魔石を拾った。


「なんかあっけなかったね。ディーンがあっという間にやっつけちゃったよ」

「まあ、お前の魔法で動きが鈍かったからな。それより、お前だよ! あの虫が這う結界といい、蛇の蒸し焼きといい、氷の刃を飛ばして首を落とすとか! すげえな! 俺、こんな魔法初めて見たよ」


「えっへん! オレのオリジナルだからな。魔法の構築は難しいんだ。すごいだろう?」

 ローリーが誇らしげに言うと、ディーンがすかさずそれに答える。

「えばるな! でもああ、そうだな。ローリーって感じがする。なんていうか、性格の底意地の悪さが魔法に顕れているよ」

 ローリーの鼻をつまみ、からかう。

「あ、くそっ、このやろう、なんだと! もういっぺん言ってみろ! これから、もし、虫がうじゃうじゃやって来ても助けてやらないんだからな! 覚えとけよ!」

「え、いや、それは困る。すまん、許してくれ。つい、口がすべった」

「全然、謝る気ないじゃないか!」


「ローリーすまぬ。許してやってくれ。ディーンは魔法が使えぬのでな、ローリーが羨ましくて、憎まれ口をたたくのだ。我はすごいと思うぞ。我など、このような魔法、考えも及ばなかった。本当に驚いた」

 

 我が仲裁に入って、褒めてやるとなんとか機嫌を直してくれた。

 ディーンはすぐにローリーをからかって遊ぼうとする。しようのない奴だ。

 

 ・・・・・・

 

 二人の仲がとても良さそうに見えるのは、我の気のせい、気のせい。

 でもコレって、もしかして、喧嘩するほど仲がいいってやつなんじゃあ・・・

 二人は仲良し? 我は? 我は誰とも喧嘩しない。

 叱られることはあっても。宰相とか宰相とか・・・。

 ・・・・・・

 我は大人だからな。こんなことで拗ねたりしないぞ。




 寝る場所はちゃんと真ん中に陣取った。

 

 我はローリーが眠ったのを確かめると、うなされてはいなかったがいつもの睡眠魔法をかけた。

 そして身体に手をかざし、我の魔力をローリーに気付かれぬ程度補充する。

 ローリーは今日の戦闘や休むためのこの強固な結界を敷くのに、かなりの魔力を消耗している。

 

 我は眠った振りをしているディーンに呼びかける。


「ディーンよ。ローリーの口車に騙されてはならぬ。ここは、お前達が思っている程甘いところではない。ローリーの魔力の消耗は激しい。我が魔法を使えぬ今、我はローリーを守る事に徹するゆえ、魔物を蹴散らすのはお前の役目じゃ、よいな」



「はっ。承知致しました」





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