勝機
お腹いたい
勝機ルの拳がスミルへと届くまで残り一メートルほどのところでクロノの能力をフル動員し、二人の間に煙玉と閃光玉を生み出す。
生み出された玉は間髪を置かずに爆発し、辺りに障害をもたらす。
そして、鈍い音が響いた時に煙の中から人影が
飛び出てくる。
スミルである。勢い良く飛び出てきて、地面を転がっていく。相当、力を込めて振られた拳だったことがそこからもわかる。
「まずは、一発ね。」
少し痛かったのか手をさすりながら、そう言い
煙が晴れるのを待つ。
「うん、面白い使い方だね。それに、良く分からない。君から狙った方がいいのかもしれないね?」
少し、腹でもたったのか若干ふざけてる感じが抜けている。
そして、そのままこちらに向かってくる。
「って、マジかよ。来んじゃねぇ。」
いつのまにか取り出した剣で自分の首が飛びそうになる。
それを阻止してくれたのはラミル、スミルと同じ存在であるアレスだった。
「おいおい、スミルよ。俺のことを忘れてる訳じゃぁないよな?」
「アレス。君だって、僕に勝てるとでもおもってんの?」
今までの軽い感じは一転し、一言でただ、恐怖。そんなものに変わった。同じ神であるアレスやレイさんも顔が強張っている。
もちろん、俺は強張るどころではない。むしろ、漏らして...いるわけがない。
さっき、トイレは済ませておいたんだからな。
その後、無言のまま、蹴りを放たれた、アレスは少し吹っ飛んで土の上に倒れこむ。
「さて、邪魔が入ったね?」
そして、全てを見下す、暗く、冷たい目。
「えぇい。そこを退きなさい。死にたくはないでしょう?」
ラミルが突撃をしてくる。咄嗟に頭を下げ、攻撃範囲から逃れ、ついでにもう一度、煙玉と閃光玉を生み出そうとしたがしないにとどまる。
そして、今度は煙幕玉にしておき、転移で逃げる。
スミルは馬鹿じゃない。だから、さっきの攻撃は通らないと考えるのが妥当。
ちなみにイメージとして、煙玉は白。煙幕玉は黒だ。
またもや、煙のなかから出てくるのはスミル。だが、先程のようにはいってない。
いまさらだが何故、ラミルが煙に対して対応することが出来たかというと、特訓のなかでラミルの攻撃に対して様々な対応する和男のお陰で反射までが早くなったのだ。
「もうそろそろ我慢の限界なんだけどさ?覚悟は出来てるんだろうね?」
殺気が強くなり、辺りに緊張が走る。
暫しの沈黙。沈黙は急にラミルによって破られる。
「ほら、あんたもついてきなさい。」
もちろん、無理矢理つれていかれる。拒否権はない。
ここまでくれば誰もが覚悟は決まる。
ラミルが駆け、俺が駈け、スミルも駆ける。
スミルのは走りながら武器をつくり投げる。
ラミルははじき、俺はかわす。
そして、ラミルがスミルとの距離を縮めて拳を
握り直す。
が、気づいたときにはラミルは反対方向へと吹き飛ばされていた。
「っ!」
危機察知能力、俺の取り柄であろうものが命の危険を察知する。
あわてて、体を捻ると顔の位置にはこぶしが通りすぎ、下からはけりが飛んでくる。
直ぐに瞬間移動を発動させて逃げるがまだ、
危機は終わらない。
逃げた先にはスミル。すでに逃げ場など存在しない。
「完全なる守り」
拳をはじき、足元に地雷を仕込む。そして、自分で踏み、今度こそスミルとの距離を取る。
「君はなんなの?ラミルに通る攻撃が通らず、僕の予想できないことばっかりする。」
見ると、足には傷がついていた。その傷も次の瞬間には治っていて、傷があったか、記憶を疑うほどだ。だが、傷がつくのならば勝機はある。
さて、攻めよう。なんて、思うことも許されない。眼前にはスミルの黒刀が首を狩りに来る。
「それは無理だろ。」
ガキンッ。そんな音で受け止められる。アレスだが直ぐに蹴飛ばされ、戦闘不能になる。
だが、助かった。そして、取り出すのは手榴弾。ピンを外し、投げる。
スミルはそれを弾こうとして、考える。そして、弾かずに避けるだけに留めるがラミルはすぐそこへと行き、手榴弾をスミルの方向へと弾く。起爆の心配もあったがそれは大丈夫でスミルへと飛んでいく。
だが、忘れてもらっては困る。武器はいくらでも作れると。スミルが手榴弾へと意識が向いたほんの一瞬でさらに地雷をスミルの回りに配置。手榴弾もばらまく。
直ぐに気づかれたが準備は完了している。
その刹那、凄まじい爆音と光で辺りは包まれた。