裏切り
その槍は飛んでくる槍に向かって飛んでいき、
やがて、その二つは衝突した。
その瞬間に同じ技がぶつかったのに関わらず、
静寂が訪れる。
それもそのはず、当たったところからその槍は
消失している。
「触れたものを消失させる能力を
持っているのか?」
「その通りだ、正確にはここではないところに
飛ばす能力だけどな。」
クロノが返答してくれるが心無しか
がっかりしているように聞こえる。
それもそのはずだろう、自分の必殺技のような
ものを返され、その技の能力までばらされて
しまったのだから。
決して、わざとでは無いのだけれども。
「おい、カズオ。正直言って、勝ち筋が
見えなくなってきたんだが?」
いやいや、俺の台詞だし。多分、レナさんは
攻撃の魔法はほとんどないとみていい。
そして、クロノの最大火力は通じない。
俺の魔法は使えない。
詰んだっぽくね?
「来ないの~?来ないならこっちから行っちゃう
けど、いいの~?」
柊はその外見とは似合わない口調で
こちらに問いかける。
「ダメに決まってるだろ。ちょっとまて。」
俺はそう言うとクロノとレナさんに向かって手招き
をしてあつまってもらう。
「少しお前らの力を貸して貰いたいんだが、
俺のことを信じてもらえるか?」
「特別よ。」
「信じるしかないんだろ。」
「よし、どうもな。これで俺も少しは動ける。」
気づいたとは思うが《知恵の共通》
を使ったのである。いまいち、分からないことも
多いがこっから、逆転といきたい。
「もう、いいよな。てことで、中井。
お前も暴れてもいいぞ。」
待ちくたびれたのか、柊が戦闘態勢にはいると
中井もやる気になったようだ。
「よっしゃ、引き締めろよ。」
そして、俺たちの戦いが始まる。
...はずだった。
お互いが駆け出そうとした瞬間だった。
このみじかい間に何回も見た光が
辺りに広がる。
そして、またもや晴れる。そこには、スミルが
いた。この事実はラミルが負けたということも
示している。
「やぁ、まだ終わってなかったの?柊。」
「今からいいとこだったんだよ。タイミングを
少しは考えたらどうだ。」
「まあまあ、そんなこと言わないで。」
そう言いながら、向けていた体をこちらから
柊たちへと向ける。
「ね、そんな顔しないでさ。死んで?」
そんな恐ろしいことを何でもないような
口調、顔で話したと思うとのは腹には大きな
大剣が刺さっていた。
「あぁ?」
ズブッ。その剣が抜かれ、柊の腹からは
血が...出ていない。穴がぽっかり空き、
粒子となってそこから消滅していく。
「何故だ?スミル、ふざけてんのか?
おい、答えろ。」
柊の腹のキズは癒えることはなく、消滅を続ける
がスミルに問いかけるのを止めない。
信用しているものに裏切られた。まさに
そんな顔だ。
「まぁ、いっか。冥土の土産とか言うもので
教えてあげるよ。正直な話、期待外れって
ことが一番だよ。僕はこのつまらない世界を
変えたかったんだよ?それなのに君たちは
どうだい?」
そこで、一息入れ、話し出す。
「君は優秀だった、用心深かった、計算だかく
頭も切れた。でも、この世界で何もかも
変わった。目立つようなことはする、
正体もすぐばれる。面白みどころかい怒りすら込み上げてきたよ。だから、決めたんだよ。今回は
ハズレ。次に期待しようってね。でも、感謝
ほしいね、最後に神技を使って葬ってあげたん
だから。その消え行く意識で君は何を
考えるのだろうね。」
やがて、柊の姿はなくなる。粉々に跡形もなく、
消え去った。
「さて、今度は君たちの番だね。少しは楽し
ませてくれるとうれしいよ。」