幕間 地球にて
カズには、家族がいた。当たり前のこと
だったが、家族の一員が
いなくなるということ、それに気付いたのは、カズの
義理の妹だけだった。悲しいことではあるが、
親はあまり興味を持っておらず、その実の妹も
兄の存在など最初からなかったかのように
暮らしている。義理の妹の名前は、
清水 舞と言い、谷原家の居候みたいな
ものだった。彼女の家族は彼女が小さい時に
交通事故にあい、死んでしまった。
唯一の親戚だった谷原家が引き取ることになった
のだがカズを除く谷原家の一員は彼女を
煙たがり、何回も追い出そうとした。
だが、カズは必死に彼女を庇い、幾度もなく
助けてきた。そんな彼のことを忘れる訳がなかった。
「お兄ちゃん、どこに行ったのよ。」
さて、この世の中には、因果率というものがある。
出来事が起きた際にその事柄をなかったかの
ようにすることだ。このカズを忘れると言う現象
もその一つで、異世界に飛ばされたカズを最初から
いなかったことにすることだ。だが、例外もある。
その事柄に対し、強い思いや長い間ずっといることで
因果率に惑わされないということ。つまり、
この場合は、彼女がカズに対し強い思いを
持っているということだ。
ある日の平日のことだった。
カズの幼なじみで唯一の親友の佐藤 健治が
家にやって来た。舞は、カズのことを知っている
かもしれないという微かな希望を持って
健治に話しかけた。
「健治君、カズがどこに行ったかしってる?」
「舞ちゃん、カズのこと覚えているの?」
健治も微かな希望を持って、この家にやって
来たのだ。
「わかんないの。カズのことを誰も覚えて
いないし、カズとの思い出の品もほとんど
なくなってしまって...。」
「実は俺もなんだ。同級生にカズのことを
話しても、カズのカの文字すら覚えていねぇ。
みんな、あれだけ世話になったのに...。」
「私ね、カズがいなくなっちゃって
家族からの嫌がらせはひどくなるし、カズなし
の生活は耐えられないの。」
「災難だったな。俺のクラスでもあいつがいない
せいで騒ぎがひどくなる一方だぜ。舞ちゃん、
うちにこないか?うちも家族が死んでじゃって、
ひとり暮らしだからさ。誰かがいた方が
さびしくないだろ。」
「でも...。」
「あいつが帰ってきた時に困るってか。
あいつはああ見えてしっかりしすぎてる。」
「本当にいいの?」
「あぁ、歓迎するよ。」
こうして、舞は健治の家で居候をすることになった。
「お兄ちゃん、まっててね。絶対見つけるからね。」
「おい、カズどこにいやがんだ。
舞ちゃんを泣かせる気か。」
舞と健治を物語に出すか迷っています。