他国
メリークリスマスですね。
人族の王の間より
「どうなってるんだ?あやつらは何者だ?」
王は集まった家臣に問いかける。しかし、それに
応じる者はなく、みな頭をあげることはなく、
しょげている。
「おい、どうなっているのかと聞いている。」
誰も答えないと思われたが、一人が勇気を出して
立ち上がった。
「恐れながら申し上げます。昨日の昼過ぎのこと、
空に映像が流れ、その映像によると全世界、私たち
人族や獣人族、魔族に喧嘩を吹っ掛けてきた
馬鹿共がいるということでした。」
勇気を出した家臣がいたことで他の家臣も
頭をあげるようになってきた。
「ほう、この時代にも馬鹿はいるのか?最後の戦争
はいつだったか。それで他の国はどう言って
いるのだ?」
「それは、まだ分かりませんが恐らく、
協力戦線は築けないかと。敵の数は未知数ですが
心配をするほどではないと考えられます。」
獣人族より
同時刻、獣人族が治めている国でも会議が
行われていた。
「おい、報告せい。」
王が発した言葉は短くはあったがその威圧感は
何にも劣らないぐらいのものだった。
その言葉に応じたのは、まだ若く世の中を知らない
ような兵隊であった。
「昨日の昼過ぎにあった宣戦布告の件ですが
相手の勢力、戦略は不明で他の国とコンタクトを
とっている状況であります。」
王はしばらく眉をひそめると
「非戦闘員を収納する地下シェルターの拡大を
進めて、避難を即刻開始しろ。戦える者は戦争に
備え、装備を整えろ。金は国がだす。
わしもでる。軍に伝えておけ。」
魔族より
またまた同時刻。魔族もまた会議を行っていた。
「ほっとくべきですよ。他が弱ったところを我らが
叩き、領土を奪い取りましょう。」
「いや、そんなことより手を組んでさっさとつまらん
戦争をおわらせるべきだ。」
「自分勝手な発言は止せ。王はすでに
いらっしゃっているんだぞ。」
ここでは、一人一人が自分の意見を述べあっているが
同時に話す奴もいるため非常に聞きづらい。
「静まれ。」
とても威厳のある声がその場を静かにさせた。
「我々、魔族はもう争いをしないと決めたはずだ。
それを反対する者がいるのは知っている。だが、
この戦争は何が起こるかまだ分からない。
今こそ、他の国とも連携し、この事態の収束に
努めるべきだ。何か反対意見はあるか?この場は
皆が公平に意見を交わしあう場。遠慮はいらん。」
反対意見はでなかった。むしろ、同意するものも
多く首を縦に振っている者もいる。
「それでは、最初の指示だ。他の国とコンタクトを
とり、連携し策を立てろ。その後、我が領土の
守りを固め、相手に攻めこませないようにしろ。」
「御意に。」
魔族は自らの仕事を果たすため、席を立ち
扉の向こうへと出ていった。
その中には、変な笑いを浮かべている奴がいた。
「あんたの好きにさせるかよ。」




