軍勢
何を使うかで迷ったんですよね。
町を出ると、外では戦争といってもおかしくない
光景が広がっていた。魔物に向かって正面突破
して、肉弾戦をする者。町の塀まで下がり、
詠唱をしている魔術師。
「本当に二千しかいねぇのか?」
全然そうは見えない。林からも続々出てくる上に
遠くの山から魔物の軍勢がしっかりと見える。
グギャギャ。フフフフフフヒヒヒヒヒ。
コウモリのような魔物が空中から
攻めてきたが
「雨刀五月雨」
健治が速攻でその命を刈り取った。
「死にたくはないからな。俺もやるか。
舞、最大放出の守護魔法で守りをあげて
おいてくれ。レナさんは、ケガ人の治療と
範囲回復魔法での援護。健治は俺と少し
暴れるぞ。」
「ベール」
心無しか体が丈夫になった気がした。
「天太刀」
健治も動き始めた。俺もなんかやんねぇと
起こられちまうからな。やるしかない、よな?
「聖なる鐘」
上空に大きな鐘が現れ、
ゴーンゴーン。
なんて音は俺と俺が敵と思っている奴にしか
聞こえない。というより鐘の姿自体
他の者は見えていない。
そんな技だが、鐘の音が聞こえた者に硬直の効果
を与える。つまり、少しの間だけ動きを止める
ものだ。しかーし、聞こえるのは敵だけじゃない。
俺もだ。俺も動けない。最悪だ。
ま、それでもその間に戦って貰えばいいんで。
それにしても、うるさすぎる。
「おい、カズ何止まってるんだよ。なんか敵も
固まっているけど」
ち、違う。分かってくれ。ちゃんと理由が
あるんだよ。どっかの神様のせいだ。
やっと硬直の効果が切れ、続々と動き始めたが
大分倒せたと思う。それでも、敵はどんどん
増えていく。
「念話」
これで健治たちとは連絡が取れる
(舞、一回魔物と冒険者を引き剥がして距離
を取れるか?)
(お、お兄ちゃん!なんで声が聞こえるの?)
なぜ、驚く。ちゃんとこの前説明したよな。
(それはともかくどうなんだ?それが
出来れば.......。)
(そんなことが出来るの?私の方は出来なくも
ないけど。)
(じゃあ、今すぐやってくれ。次は健治だな。)
舞の方は大丈夫だった。健治さえ何とかなれば
この戦況を何とか出来る。
(健治。今、大丈夫か?至急の話だ。)
(カズか、全然大丈夫だけど。何だ?)
そして、健治にも話した。
(やっぱ、頭良いよな。いいぜ。
俺の方も可能だ。)
(じゃあ、あとは言った通りに頼む。
レナさんも頼みます。)
(わかったわよ。少し少ないかも。)
あとは、実行するだけ。
(じゃ、始めてくれ。)
舞の技で冒険者と魔物が離れた。どちらも
何が起こったのか分からずにポカンとしている。
正直、見ていておもしろい。
次にレナが水を作り出し、そこらをびしょ濡れに
する。回復魔法と相性が良いらしく、
俺と別れてから覚えたらしい。
(もう私の魔力、ほとんどないから頼むわね。)
あとは、健治の
「烈火の剣《二の太刀》」
健治の繰り出した燃えている刀が
水の塊に当たった刹那、
そこの地点で地が割れるような爆発が起きた。
煙が晴れると、もうそこには何も残っては
いなかった。しかし、それを見ても
魔物は恐れず山からまだ降りてきている。
しかも、強い奴みんなそこにいたしね。
いや、ラッキー。儲けもん。
それでも、やるしかないのか。
「シクザール」
え、どうやって倒すのかって?思ったんだよね。
俺が積極的に倒す必要なくね。
だって、倒す技あんまもってないし、
健治の方が強いし。さっきだって、水はおれだって
出せたしね。あ、これ内緒。レナさんにバレたら
殺される。だから、俺は妨害かなと
思いましてこの技を使いました。
もうこれ以上戦うのは、勘弁。だから
魔物の供給を止めさせました。
このあとは、簡単だった。多いとは
いっても残りは五百ほど。
うちのエース、健治がいるんで。
「別に全滅させなくても良かったんだぞ。」
後に分かったことだがこの人、ギルド長だった。
前線で戦っていたらしく、ケガを結構していた。
ドワーフという種族らしく、かれこれ四百年
位生きているらしい。
「ギルド長として礼を言う。ありがとう。」
や、やべぇ。合わねえ。この人にありがとうは
合わねえ。この人だったらすまないとか
言いそう。
「何だ?その顔は?えぇ。何なんだよ。」
こわ、こえぇ。悪かったよ。
そんなギルド長からそれなりのお金をもらえ、
レナさんへの借金も返せたし、
人助けもしたし、いい一日だったと思い込もう。




