矢印の至る先
この物語は、北アイルランドのThe Creativity Hubが製造・販売しているRory's Story Cubesという玩具を利用して書かれています。
このストーリーキューブはポケットサイズの作話サイコロで、おとなもこどももおねーさんも、ひとりでも友達と一緒だって、想像力だけで楽しめる素敵な玩具です。
この玩具を使えば、誰だってステキな作家になれますし、生まれてきた物語はどれもみんな間違いなしにステキな物語です。
さあ、サイコロを振って、あなたの頭に詰め込んだガラクタや素敵な色々を遊ばせてみましょう!
(パッケージ英文超意訳)
遊び方は簡単。
九つある六面サイコロの、その五十四面それぞれには数字の代わりにシンプルな絵が描いてあります。
サイコロを振って出た面の絵を見て、プレイヤーは物語を紡ぐだけ。
五十四面はそれぞれ、
・磁石 ・羊 ・錠前 ・火 ・足跡 ・四角にL(済)
・矢 ・電球 ・時計 ・ふきだし ・眠っている人 ・家(済)
・矢印 ・携帯電話 ・雷 ・天秤 ・宇宙人? ・ステッキ
・困った顔 ・クエスチョンマーク ・噴水(済) ・鍵 ・流れ星 ・テント
・魔法の杖 ・算盤 ・月 ・蜂 ・本 ・橋
・カード ・虹 ・塔 ・ピラミッド ・目 ・木
・仮面 ・パラシュート ・魚 ・鍵穴 ・花 ・八方矢印
・悪魔のような影 ・スカラベ ・亀 ・サイコロ ・掌 ・虫眼鏡
・懐中電灯 ・地球 ・笑顔 ・リンゴ ・ビル ・飛行機
となっていますが、どれも想像の余地があり、自由に連想ができるのです。
さて、本編で御座います。
九つの賽子、五十四の絵柄。
本日の絵柄は――、[矢印]
ある朝のこと、友人の家に向かうと、そこには友人の代わりに矢印が突っ立っていた。
インターフォンを鳴らし続けても返答がないので、鍵のかかっていなかった玄関扉を開けて中に入ると、普段友人と、小さな妹と、その両親とが和気藹々と朝食を摂っているだろう食卓に、四本の矢印が地面を向いて立っていた。
つやつやと不思議に赤い矢印は、本来住人が座っていただろう席上で、ゆっくりと回転しながら、地面を指し続けている。
テーブルに並んだ朝食は、まだほんのりと湯気を立てていた。その湯気をかき回すように、矢印がゆっくりと回っている。
下に、地面の下に、何があるというのだろうか。僕はぼんやりと矢印の指す先を眺めた。
僕はどうやら頭がおかしくなったらしい。
そうでないならば、世界のほうがおかしくなったのかだ。
どちらにせよ、大差はない。
誰が聞くわけでもないのに、律儀にお邪魔しましたと声をかけて、友人宅を後にして、学校へ向かう。
通学路は何事もなかったかのように、朝のささやかな賑わいに包まれていた。
一様の制服に身を包んだ学生が、同じ方向を目指して徐々に合流し、増えながら、進んでいく。
職場へと急ぐ自動車が、学生たちののんびりとした足取りを尻目に、忙しげに連なって走っていく。
朝から箒を片手に、おばさんがたが中身のない会話で盛り上がっている。箒は動きやしないが、口ばかりはよく動く。
僕もそんな当たり前の通学路を、当たり前に学校へ向かって歩いていく。
友人一家がみんないなくなって、代わりに矢印が突っ立っているような朝に、世間は当たり前の日常を続けていて、僕もその日常の中を歩いていく。
頭がおかしくなりそうだった。
あるいは、もうすでに。
たどり着いた教室では、ホームルームの時間までに生徒が全員揃った。友人を除いて。
教室の真ん中で、ぽつんとひとつだけ空いた席を、しかし誰も気にしようとはしなかった。それはのんびりやってきて出欠を取った担任教師もだった。名前すら呼びやしなかったのだ。
ひょうきんで、あれほど人気者だった友人は、しかしいまやその存在などなかったかのように扱われていた。
それとも本当に、最初からそんな人物はこのクラスにはいなかったのだろうか。
何事もなかったかのように話しかけてくるクラスメイトの、何事もなかったかのような笑顔に、僕は努めて何事もなかったかのように取り繕った。
あるいはこれは、大掛かりなどっきりなのだろうか。
僕を、ただ一人を驚かすためだけの。
それならばもう十分に驚いたから、いい加減にやめて欲しい。
だがそんな僕の苦悩と裏腹に、一日は何事もなかったかのように過ぎて行った。
頭がおかしくなりそうだった。
まだ、なっていないのだろうか。
翌朝。改めて友人の家に向かうと、そこにはやはり矢印が突っ立っていた。
相変わらずならないインターフォンを律儀に鳴らしてから、鍵のかかっていない玄関扉を開けて中に入ると、四本の矢印が地面を向いて変わらずに立っていた。
つやつやと不思議に赤い矢印は、本来住人が座っていただろう席上で、ゆっくりと回転しながら、地面を指し続けている。
テーブルに並んだ朝食は、すっかり乾いていた。僕はせめてもと思いそれらを捨て、皿を洗っておいた。
彼らは矢印の指す先へといってしまったのだろうか。地下へ?
僕はどうやら頭がおかしくなったらしい。
そうでないならば、世界のほうがおかしくなったのかだ。
どちらかか、どちらもかだ。
誰が聞くわけでもないのに、律儀にお邪魔しましたと声をかけて、友人宅を後にして、学校へ向かう。
通学路は何事もなかったかのように、朝のささやかな賑わいに包まれていた。
ただ、そこにいくつかの矢印が紛れ込んでいるのを除けば。
一様の制服に身を包んだ学生が、同じ方向を目指して徐々に合流し、増えながら、進んでいく。
職場へと急ぐ自動車が、学生たちののんびりとした足取りを尻目に、忙しげに連なって走っていく。
朝から箒を片手に、おばさんがたが中身のない会話で盛り上がっている。箒は動きやしないが、口ばかりはよく動く。
そんな当たり前の通学路に、ぽつり、ぽつりといくつかの矢印が突っ立っている、つやつやと不思議に赤いあの矢印が、ゆっくりと回転していた。
友人一家がみんないなくなって、代わりに矢印が突っ立っていて、通学路にもそいつらがのさばっているような朝に、世間は当たり前の日常を続けていて、僕もその日常の中を歩いていく。
頭がおかしくなりそうだった。
なった後なのかもしれないが。
たどり着いた教室では、ホームルームの時間までに生徒がほとんど揃った。友人と何人かを除いて。
教室の真ん中にぽつんと空いた席と、そして新たに増えたいくつかの空席を、しかし誰も気にしようとはしなかった。それはのんびりやってきて出欠を取った担任教師もだった。名前すら呼びやしなかったのだ。
ひょうきんで、あれほど人気者だった友人は、しかしいまやその存在などなかったかのように扱われていた。
寡黙で、でも体だけはバスケ部みたいに大きかった彼も普段以上にその存在は軽んじられていた。
陽気で何時もお喋りばかりだった彼女がいないのに、クラスの女子は相変わらずかしましい。
それとも本当に、最初からそんな人物はこのクラスにはいなかったのだろうか。
何事もなかったかのように話しかけてくるクラスメイトの、何事もなかったかのような笑顔に、僕は努めて何事もなかったかのように取り繕った。
僕が知らないだけで、僕の知らないところで、彼らは極有り触れた理由からこのクラスを去っていって、みんなもうそれに馴染んでしまっているのだろうか。
勿論そんな僕の苦悩など、誰も気にすることなく何事もなかったかのように一日が過ぎた。
頭がおかしくなりそうだった。
なっていないはずもないだろうが。
一週間もしないうちに、友人宅に寄るのは止めた。
薄情なことに、ほんの一週間顔を見ないだけで、僕は友人の声を忘れかけていたし、彼の小さなお人形みたいな妹の顔も忘れていたし、親切にしてくれたその両親の優しさすらおぼろげになっていた。
その代わりにあの矢印がいまもくるくると回っているかと思うと、とてもではないがあの扉を開ける気にはならなかった。
仲のよい友人の声がすっかり消えてなくなって、やがて顔立ちすら曖昧になって、代わりにくるくると回る不思議に赤い矢印が記憶の中に居座るのを、僕は耐えられそうになかった。
今でさえ僕はもう、友人を思い出すとき、あの矢印も一緒に思い浮かべてしまうのだ。
どこまでもどこまでも下を指し続ける奇妙な矢印を。
僕はどうやら頭がおかしくなったらしい。
そうでないならば、世界のほうがおかしくなったのかだ。
出来れば僕だけが狂っているような事態はごめんだ。
誰が見ているでもないのに、そそくさと息を潜めて友人宅を通り過ぎ、学校へ向かう。
通学路は何事もなかったかのように、朝のささやかな賑わいに包まれていたが、ここ数日の間に矢印は随分増えていた。そしてその代わりに、人々の姿は減っていた。
一様の制服に身を包んだ学生が、同じ方向を目指して徐々に合流し、増えながら、進んでいく。けれど昨日までそこにあった姿が、今日はそこにない。
職場へと急ぐ自動車が、学生たちののんびりとした足取りを尻目に、忙しげに連なって走っていく。その数は随分減ったけれど。
朝から箒を片手に、おばさんが家の前をはばいている。一人では口も開かず、いっそ手持ち無沙汰なくらいだろう。
僕もそんな当たり前の通学路を、当たり前に学校へ向かって歩いていく。
人が減っていき、代わりに矢印が立ち続けるようになっても、世間は当たり前の日常を続けていて、僕もその日常の中を歩いていく。
誰か僕の狂気を保証してほしかった。
正気だと認めたくなかった。
たどり着いた教室では、ホームルームの時間までに生徒が一部揃った。
最初は教室の真ん中にぽつんとひとつだけだった空席は、いまや教室の大半となっていた。しかし誰も気にしようとはしなかった。それはのんびりやってきて出欠を取った担任教師もだった。名前すら呼びやしなかったのだ。点呼の時間がどれだけ短くなっても気にしない。
教室はすっかり静かだったけれど、生徒は相変わらず中身のない会話で盛り上がっていたし、如何でもいいことで時間を潰していた。まるでそうしていなければならないようにだった。
空席のいくつは完全に空っぽで、いくつかはつやつやと不思議に赤い矢印に占拠されていた。いよいよもって僕はこの矢印によってクラスメイトの顔も思い出せなくなってきていた。
何事もなかったかのように話しかけてくるクラスメイトの、何事もなかったかのような笑顔に、僕は努めて何事もなかったかのように取り繕った。取り繕えていたと思う。自信はない。
ここにいたって僕はみんなの正気を疑い始めた。
あるいは、狂気を装っているかを。
一ヶ月もしないうちに、僕は友人の顔を忘れた。
僕の記憶の中の彼の姿は、つやつやと不思議に赤い矢印に占領されていたし、彼の小さなお人形みたいな妹も、実際に覚えているのはその形容詞だけだった。両親となるとその属性しか覚えていなかった。
忌々しいことに、目に付かないようにと行動しようにも、すでに矢印は我が家の中にも入り込んでいた。
まず父の姿が消えて、代わりに居間に広げた新聞紙と、つやつやと不思議に赤い矢印が残された。
次に弟の姿が消えて、代わりに書きかけの電子メールの文面が残された携帯電話と、つやつやと不思議に明かり矢印が残された。
母はいまのところ大丈夫だ。
だが多分、それほどしないうちに台所に作りかけの料理とつやつやと不思議に赤い矢印を残していなくなることは容易に想像できた。
そうなる前に出来れば僕もどうにかなってしまいたい。地下であるにせよ、僕には理解できない場所であるにせよ、矢印の指す先にみんながいるのであれば。
そういう想像をしてなお、僕は学校へ向かう。
何もかもがおかしくなってきているようだった。
なにもかも、なにもかもが。
もはや意識しなければそうだとも気にしなくなった、かつての友人宅を通り過ぎ、学校へ向かう。
通学路は何事もなかったかのようだったが、朝のささやかな賑わいはすっかり絶えていた。ここ一月の間に矢印は増えに増えていた。そしてその代わりに、人々の姿はほとんど見なくなっていた。
制服に身を包んだ学生が、同じ方向を目指してぽつりぽつりと進んでいく。お喋りしなくては死んでしまうといった風情だったのに、今は当たり前のように黙って。
職場へと急ぐ自動車だろうか、時折思い出したかのように、車道を車が走っていった。その座席に矢印が突っ立っているのを想像して、妙なおかしさを覚えた。
今朝からは土埃や木の葉が積もることだろう。箒は塀に立てかけられたまま、おばさんは一向に姿を見せない。
僕もそんな当たり前の通学路を、当たり前に学校へ向かって歩いていく。
人が減っていき、代わりに矢印が立ち続けるようになっても、世間は当たり前の日常を続けていて、僕もその日常の中を歩いていく。
僕の狂気を保証してくれる人は後どれだけ残っているのだろう。
矢印がはびこっていた。
たどり着いた教室では、ホームルームの時間までに生徒が数人揃った。
いまや空席は当たり前のものとして教室を埋め、僕でさえそれを気にしようとはしなかった。担任教師すら来ず、代わりにやってきた副担任も気にも留めなかった。点呼ははなはだしく短かった。
教室はすっかり静かだったけれど、生徒は相変わらず中身のない会話で盛り上がっていたし、如何でもいいことで時間を潰していた。まるでそうしていなければならないようにだった。
クラスメイトは何事もなかったように微笑みかけ、何事もなかったように話しかけてくるのだろう。だがそうではなかった。僕は何事もなかったかのようには取り繕えなかった。
「なあ、この矢印なんだ?」
僕がこの一月というもの、胸に抱き続けながらついぞ口にしなかった疑問を、一人のクラスメイトがさもいま思いついたかのように、はっきりと口にしたのだった。
空席のうえでくるくると回転するつやつやと不思議に赤い矢印を、不思議そうに眺めるクラスメイトの一人。
教室内は奇妙な沈黙に包まれていた。
愕然として何も言えずにいた僕だけでなく、ほかの全員が全員とも、視線をそらし、口をつぐみ、ただただこの場違いな異常が過ぎるのを待っているようだった。
奇妙な空気に気付いているのか、いないのか、彼は矢印へと手を伸ばし、そして、飛んでいった。
矢印は彼を引っ掛けたまま素早く飛び上がり、そして彼を引っ掛けたままどこかへと消えてしまった。天井を突き破ったわけでもなく、窓から飛び出たわけでもなく、忽然と。
あれは矢印ではなかったのだと、僕は唐突に理解した。
あれは、釣り針だったのだ。
どこかへと、僕らを吊り上げるための。
教室内は、また何事もなかったかのような細々とした会話に包まれた。誰もがそうあるように努めていた。姿の見えない釣り針の主に気取られまいとするかのように。
僕はただぼんやりと彼の消えた天井を眺めていた。
ちゃぽんと釣り針がおろされるように、矢印がその場に浮き出て、くるりくるりと回転し始めた。
頭がおかしくなった、と断言したかった。
今朝方、ついに母が消えた。
台所には予想通り、作りかけの料理と不思議につやつやと赤い矢印だけが残っていた。
恐らく母は、何に気付くこともなくふとした拍子に、ぽん、と吊り上げられたのだろう。
清流をのんきに泳ぐ魚が、それと気付かずに餌と思って釣り針を飲み込むように、あまりにもあっけなく。
僕はクラスメイトが目の前で吊り上げられて以来、矢印には極力近づかないようにした。
どうやら釣り人は、人が集まるところでは放っておいても自然と釣れると見てか、一度釣れるとそこに釣り針をたれ続けているものと見えた。
どれだけの人間が釣り上げられてしまったのかは定かではないが、このシステムを学習したのは僕だけではないようだった。
残り少ない人間は、皆一様に矢印を避けて生活し、一見した限りは何事もなかったかのように振舞っていた。
もし矢印に気付いていることを悟られたら、今度はどんな手段に出てくるかわかったものではないからだ。
魚が警戒して食いつかないから、発破漁に切り替えようという乱暴な思考が、この形而上の釣り人に存在しないとは限らない。
そうした警戒が功を奏してか、しばらくの間僕らは減りもせず、釣り上げられもせず、なんとか生きてこれた。
釣り針が何なのか、釣り人の正体が何なのか、そういったことはわからないけれど、あるいは科学者たちが頭をつき合わせて考えているのかもしれないが、僕らには日々を矢印を避けて生きるのが精一杯だった。
もはや僕に、自分の正気や狂気を疑う暇はなかった。
どちらかといえば狂気に寄っているとは思うが。
こうして何とか平和に暮らせていけるだろうかというのは、少し甘い考えだった。
魚が警戒して釣り針にかからなくなったとしたら、釣り人はどうするだろうか。
どうやら彼らは発破や網を持ってこようなどという大雑把な考えに至るほど、釣り人としてのあり方は捨てていなかったらしい。
だから、もっと釣り人らしいえげつない手段を用いてきた。
やあ、久しぶり、と顔も忘れていた友人が手を上げて呼びかけてきたのを見て、僕はわき目も振らず駆け出した。
もう何十年もあっていなかったような友人の顔を見て僕は今にも泣き出しそうだったけれど、走り出したのはそれが理由じゃあなかった。
僕は彼から離れるように、ただひたすらに距離をとるように走ったのだ。
何せ彼の腹にはしっかりと、例の矢印が突き立っていたのだから。
鮎の友釣りを思わせるこの新しい釣り方は、人類を大いに動揺させたらしい。
クラスメイトはついに三人にまで減ったし、学校全体でも数十人にまで減ってしまった。教師も含めてだ。その家族を含めたところで、百人には至るまい。
僕は鍵のかかった部屋にこもって、窓からそっと外をうかがう生活を続けることにした。
僕には次に何が起こるのか、なんとなく予想がつき始めていた。
魚が警戒し、そしてついにその絶対数までもが減り、ぜんぜん釣れなくなったとしてだ。
もしこの釣り人たちが食べるために人間を釣るのならば、養殖という発想に至ってくれたかもしれない。
だが、多分、恐らくかなりの確実性を持って、彼らは釣り自体を楽しむ釣り人なのだ。
僕はいつか、釣り人たちの放流した外来種によって生態系を破壊されたこと湖のことを思い出していた。
そんなこと、思い出さなくてよかったのに。
窓の外で、ちゃぷんと黒い影が現れたのを確認して、僕はシーツに包まって目を閉じた。
目が覚めたときには頭がおかしくなっていることを祈って。
Once Upon a Time...4 "Arrow from/to distance." closed.
あとがき
お題を与えられたとき、まず迷うのは、それを形で考えるべきか抽象的な意味で考えるかです。
今回の矢印であれば、矢印という形そのものか、それとも矢印という言葉が含むさまざまな意味か。
今回はまず形が先に来ました。
日常生活の中でぽつんと落ちている矢印。そういう不思議な光景でした。
そういう「形」そのものを取り上げたために、矢印の持つ意味自体はそれほど強くは取り上げていません。
たとえば、矢印が常に下を向いているのは釣り針のイメージというのもありますが、干渉が常に「上」の側からの一方的なものである、とかですね。
一方通行といえば、私は基本的に何かを書くときは書いて書いて書いて、読み返しません。
勿論、思い出したり、確認したりするためにちょっと後戻りすることはありますが、推敲したり訂正したりといったことはあんまりしません。
読むと死にそうになるというのもありますが、私は自分大好き人間なので、出来立てほやほやの作品は無条件で「いいんじゃないかな」とか思ってしまうので、何年も経ってから確認しないと何の意味もないからです。
長編なんかだと結構読み返したり、文章を前後させたり、あれこれ付け加えたりとして収拾がつかなくなることが多いですが、今回のように短いものだと本当に訂正も何もしません。したくありません。自分と同じセンスでかつ、恥とか衒いとかそういうもののない目線で校正入れてくれる機械が欲しい。
ワーカムが欲しい今日この頃。何かわからない人は神林長平を読みましょう。
一日十分でも書く癖をつけないと何にも書けないとかそんな話を聞いたのでちまちま書いてますが、あとがきを書いているときが一番筆が乗る自分が気持ち悪い今日この頃。
それではまた、次の機会にでも。




