グレアとスライムと鍋料理
とりあえず町を目指して俺達は歩いていた…。
「ねえ、グレア」
「………なんだ?あと俺を呼ぶ時は『様』を付けろ!」
「………ていっ!」
「ギャアァァァッ!腕を!腕をねじるなあぁぁぁ!」
俺の腕をぞうきんをしぼるが如く、ねじってくるイーレ。
正直痛すぎる!しかも防御できん!
「『ごめんなさい』は?」
「ごめんなさいぃぃぃぃ!」
「ならばよし!」
……ようやくねじるのをやめた。
………悔しいが半泣きになってしまった……。
今の俺の防御力は小学生並らしい……。
「……で、一体何の用だったのだ?」
「……そうだった!」
………こいつ忘れてたな。
「あっ思い出した!グレアの頭に付いている角って、生えてるの?」
「なっ!!」
慌てて角を手で隠す。
俺の頭にはオヤジと同じように角が生えている。
なぜ今までイーレが気付かなかったのかが不思議だ……。
「こ、これはだな………そう、アクセサリーだ!アクセサリー!」
………我ながら苦しすぎる発言だったが……
「なーんだアクセサリーか!似合ってるよ!」
「……ありがとう」
イーレが予想以上にバカで助かった。
俺とイーレがこんな会話をしていると、不意に前から何者かが飛び出してきた。
「わっ!モンスターだ!」
スライム が 現れた!
「何だ、スライムか」
説明しよう!
スライムとはゲル状のモンスターで、魔王の兵隊であるモンスター達の中でも最弱と言われている。
あまりにも弱いので、いくら倒しても大した戦闘経験にもならず、お金も落とさない。
典型的なザコモンスターである。
スライム の こうげき!
スライムはボール状に丸まって、グレアに飛びかかった!
「ぐわっ!」
スライムの攻撃がグレアの顔面にヒット!
グレアに5ポイントのダメージ!
「き、貴様ぁぁぁ!スライムの分際で調子にのりやがってぇぇぇ!」
スライムごときが俺にダメージを与えるとは、死にたいようだなスライムよ!
「イーレ!こいつは俺一人で倒す!邪魔するなよ!」
「わかったー、頑張ってねー!」
「さあ、覚悟はいいかスライム!ここが貴様の墓場だ!」
魔王の息子グレアVS最弱モンスターのスライム
長き戦いが始まった。
「………ふっ、俺にここまで本気を出させたのは貴様が初めてだ!なかなかやるではないかスライムよ!」
悔しい事に俺は本気で戦っていた。
俺の体は全力で戦ってもスライムと互角なまでに弱体化していたからだ。
…………もう俺のプライドはズタズタである。
グレア の こうげき!
スライム に8ポイントのダメージ!
スライムはピクリとも動かなくなった。
スライム を倒した!
「勝った!ついに勝ったぞ!」
長く苦い戦いが終わった。
「おめでとう!頑張ったね!」
ちなみにイーレは俺の命令を守り、今までずっとチョウチョを追いかけたり花を摘んだりしていた…。
「じゃあ、今日はここで野宿にしようか!」
「……わかった。俺も今日は疲れた…」
スライムとの死闘の後、山の中を歩いていた俺達は、すっかり日も暮れたのでキャンプをする事にした。
「じゃっ、私は料理を作るからグレアは焚き火のための薪を拾ってきてね」
「……わかった」
………あいつ料理なんてできるのか?
「………拾ってきたぞ」
「お帰りー!もう料理できてるよー!」
俺が薪を拾って帰ると、イーレが鍋で具を煮ていた。
「今日は鍋料理だよ!おいしそうでしょー!」
「……ああ」
………信じられない事にすごくいい匂いだ。
マジでうまそうである。
「では………いっただっきまーす!」
「………いただきます」
イーレ特製の鍋料理を食べてみる………
「………うっ、美味い!」
「でしょー!頑張って作ったんだよー」
びっくりするほど美味だった。
今まで食べた事の無い味である。
「…………………」無言で食べ続ける俺。
「あーっ!私の分まで食べないでよー!」
こうして俺とイーレは奪い合いながら鍋料理を平らげた。
「ふー、食った食った!」
「おいしかったねー!」
「あの鍋、具は何だったんだ?」
「えーっとねー、山菜とーキノコとー」
「………グレアが頑張って倒したスライム!」
「…………グハァッ!」
バタリ。
「あれ?グレアったらもう寝るの?よっぽど疲れていたんだね」
自分のような未熟者に感想を書いてくださった方々、本当にありがとうございます!
やる気がバリバリ出てきました!
これからも頑張ります!




