魔王城での一大事
プロローグの続きのような感じです。まだ主人公は出てきません……orz
『拝啓 父上こと第35代魔王グラム・レオ・ヴァルヌス様へ
私は昔から父上に憧れていました。
地震や竜巻を起こして人間達を震えあがらせたり、勇者達を死闘の末打ち破ったり、母上にバレずに夕食をつまみ食いしたり………最後のは違うか………
とにかく私ことグレア・ルル・ヴァルヌスは、父上を超えるため、あえて父上の敵である勇者になります。首を洗って待っていて下さい。
追伸 俺が立派な勇者になるまで人間達に負けんなよ!』
「魔王様!大変です!」
広い魔王城の玉座の間に、一人の魔物が駆け込んで来た。よほど急いで来たらしく、ガーゴイルという生きた石像である彼の体には、大量の汗が流れていた。
…………石像なのに……………
「…何だ騒がしい、何事だ」
玉座の間の奥、骸骨と魔石で装飾された邪悪なイスに座っていた何者かが、不機嫌そうに聞いた。
彼の名はグラム・レオ・ヴァルヌス。
この世界エヴァーグラスに住む人々は、彼の事を魔王と呼ぶ。
魔王ことグラムは、漆黒のマント(イオナ〇ンすら跳ね返す!)と漆黒の鎧(ドラゴンが踏んでも壊れない!)で身を包み、その邪悪な瞳からは常に殺気が出ていた。頭には大きな角が生えている。
「グ、グレア様がこの様な置き手紙を残して、城から脱走しました!」
よく見るとガーゴイルは紙切れを持っていた。
魔王の殺気にビビっているのか、ガーゴイルはびくびくしながら魔王に置き手紙を渡した。
しかし、彼は魔王の殺気に怯えていた訳ではなかった。
彼が恐れていたのは…………
「グレアーっ!パパは悲しいぞーっ!帰ってこーい!」
親バカな魔王が………
「パパ寂しくて泣いちゃうぞーっ!」
息子が家出したショックで………
「………鬱だ………死のう…………」『おやめ下さい魔王様ーっ!』
自暴自棄になることだった………
魔王が(ショックのあまりアヒル座りしている)が今まさに自殺しようと魔剣を抜くと、周囲の物陰から一斉に魔物達が飛び出してきた。
魔剣で自分の喉を貫こうとする魔王を必死に組み伏せる。
彼らはガーゴイルが前もって魔王がこうなった時の為に、物陰でスタンバイしとくよう頼んでおいてあったのだ。
「離せーっ!ワシは死ぬんじゃーっ!もう生きるのが嫌になったんじゃーっ!」
『ワシって、魔王様はまだ150歳じゃないですか!まだまだ人生これからですよ!』
当然魔王は人間とは違い、寿命も長い。150歳とは大体人間の30代にあたる歳である。
「息子がいなくなったら、ワシの生きる意味などないんじゃーっ!よってワシは死ぬんじゃーっ!離せーっ!」
『魔王様!グレア様は我々が必ず連れて帰ります!』
『しっかりして下さい!』
『ささっ魔王様はもうお休み下さい!後は我々にお任せを!』
魔物達の必死の説得もあって、魔王ことグラムは
「……わかった……ワシはもう寝る……グスン……』
泣きながら寝室へ向かって行った。
ネガティブ魔王がいなくなって、ふーっと胸をなでおろす魔物達。
「全く、魔王様の親バカも困ったもんだ」魔王を取り押さえていた魔物の一人が愚痴をこぼした。
「ああ、早くグレア様を連れ戻さないとな」
親バカな上ネガティブなグラムの事だ、早く連れ戻さないとまた自殺しようとするだろう。彼の子供はグレア一人なので、昔から魔王の息子への溺愛ぶりは凄まじかった。
「とにかく早くグレア様を見つけるのだ!」
魔物達はそう言うと魔王城から出ていった。




